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時計の針が、もうすぐ0時を指そうとしていた。
ソファに座ったまま、山中柔太朗はスマホの画面を何度も見つめる。
『ごめん、もうちょい遅くなる』
30分前に届いた、勇斗からのメッセージ。
「……もうちょいって、どれくらい…」
そんなメッセージをじっと見つめながら、柔太朗はクッションを抱きしめた。
今日は勇斗の会社の飲み会だった。
最初は「一次会だけだから、すぐ帰るよ」なんて言っていたのに、気づけばこんな時間。
もちろん仕事の付き合いなのはわかってる。
勇斗は優しいし、ちゃんと連絡もくれる。
ーーでも
「……さみしい」
同棲してから、勇斗が隣にいるのが当たり前になっていた。
仕事から帰ってきて、「ただいま」って笑う声。
後ろから抱きしめてくる大きな腕。
「柔太朗かわい」って、毎日みたいに言ってくる甘い声。
それが今日はない。
静かな部屋が、やけに広く感じた。
柔太朗はテーブルに突っ伏したまま、むぅ、と頬を膨らませる。
「はやちゃんのばか……」
そう呟いた瞬間
ガチャ、と玄関の扉が開く音がした。
「柔太朗、ただいま」
聞き慣れた低く優しい声に、柔太朗は顔を上げる。
「……っ、はやちゃん!」
ぱたぱたと駆け寄ると、勇斗は少し驚いたように目を丸くした。
「え、起きてたの?」
「……待ってた」
その一言で、勇斗の表情がふっと緩む。
「ごめん。思ったより長引いた」
ネクタイを緩めながら微笑む勇斗に、柔太朗はぎゅっと抱きついた。
「おわっ」
「……さみしかった」
素直にそう言えば、勇斗は一瞬黙って、それからとろけそうなくらい甘い声を出す。
「なにそれ、かわいすぎ」
大きな手が柔太朗の頭を撫でる。
「ほんとごめん。こんなに寂しがってくれてたの?」
「……だって、帰ってこないんだもん」
「帰ってきたじゃん」
「遅いもん……」
むすっとしながら胸元に顔を埋める柔太朗に、勇斗は完全に顔が緩みきっていた。
「だめだ、柔太朗可愛すぎて酔い醒める」
「お酒の匂いがする……」
「え、うそ、嫌?」
「……嫌じゃない」
小さく答えると、勇斗は嬉しそうに笑った。
「ほんと俺、柔太朗のこと好きすぎるわ」
「……僕も」
「んー?」
「僕も、はやちゃん好き……」
照れながら言えば、勇斗はたまらなそうに柔太朗を抱きしめる。
「もう無理。今日ずっと抱っこして寝る」
「……重いってば」
「柔太朗が寂しかった分、甘やかすから」
「……じゃあ、いっぱいぎゅーして」
「いくらでも」
そう言って勇斗は、壊れ物みたいに優しく柔太朗を抱きしめた。
静かだった部屋が、ようやくいつもの温度に戻っていく。
柔太朗は安心したように、勇斗の胸に頬を寄せて目を閉じた。
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コメント
2件
ああ、もう、これはたまらないですね……。「待ってた」の一言に、柔太朗くんの寂しさと甘えが全部詰まってて、胸がぎゅっとなりました。はやちゃんが帰ってきて雰囲気が一気に柔らかくなる感じ、すごく好きです。お酒の匂いを「嫌じゃない」って言うところが、ほんと甘くてずるい……。ギャップにやられました。次の飲み会も、この2人をまた見たいです🩷