TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

付き合うまでのお話。

一覧ページ

「付き合うまでのお話。」のメインビジュアル

付き合うまでのお話。

10 - 怒らせて傷付けた。

2023年05月12日

シェアするシェアする
報告する

着替えてスマホを見ていると、まだ暑いのか下着姿でうろうろしているあろま。浴衣は渡したのだが、あちぃから、と言ってそこらへんに投げ捨てられてしまった。ドライヤーで髪だけ乾かして床にあぐらをかいている。

俺はいつ寝てもいいように布団を敷いていた。この感じだと酔って寝落ちしそうだもんな。


「あろま、風邪引くよ」

「暑いんだもん。それに―」

「ん?」

「浴衣うまく着れない…」


おいおい、いい年したアラフォーが浴衣が着れないだと?そんな展開あるかよ…

俺は落ちている浴衣を拾って、早く着るように促す。酔いが覚めるように水も一緒に渡す。ペットボトルを受け取ってごくごく飲み始めた。そんなに暑いのか。


「えおえお〜」

「なんだよ」

「浴衣着せて」


(うわ…まじかよ…)


酔っててさっきの会話を忘れたんだろう。なんの脈絡もなく告白した相手に無防備な姿を晒すなんて。無意識でやっているんだろうが、俺にはそれが耐え難い。


「なぁ早く」

「じゃあほら、こっち来て」

「ん」


俺はその姿を目に入れないよう、必死で目をそらす。いや別にいつも見てるんだけどさ、今は状況が違うじゃん?

俺がまた一人もやもやしてる中、あろまは自分で着ようと頑張っている。でもやっぱり下手くそで、帯の結び方なんかめちゃくちゃだ。


「帯は前で結ぶんじゃないでしょ」

「どっちでもいいじゃん」

「前は女性なの。男性は後ろで結ぶんだよ。」

「…細かい」


浴衣の合わせをしっかり引っ張り、帯を後ろで結んでやる。俺より身長が少し低いあろまの髪はふわふわで、うっすらシャンプーの匂いがした。

華奢なこいつの体格だと、確かにフリーサイズの浴衣では脱げてしまうかもしれない。いっそのこと女性用を着てもいいんじゃないか?チャイナドレスだって入ったんだ。大丈夫だろ。










「なぁ」


帯を締め終わるところで、ぼそっと呼ばれる。少しうつむき加減のその雰囲気は、機嫌があまり良くはなさそうだった。長いこと一緒にいるから雰囲気で感情がわかってしまうんだけど、今回はどうしたんだろうか…


「お前、何で俺のこと好きなの」

「え…っ」


予想外だった。そんなこと聞かれるなんて。さっきのは事故。そう自分に言い聞かせて返答する。


「えっと、あろまさん、それは冗談で…」

「冗談で男に告るのかよ」


あろまのその声色からわかった。怒っている。

そう思った瞬間、視界が眩んで倒れ込む。天井が見えた。下に布団があって助かった…けど、その衝撃をもろに食らった俺は腰に鈍い痛みを感じる。


「いってぇ…」


痛みで目を瞑ったが、ずっしりとした重みを感じてそっと目を開ける。今までにないほど怒った顔をしたあろまが俺の上に乗っていた。


「あろま、どうし―」

「ふざけんな!!!」


突然の大声。驚きで声も出ない。


「俺のことおちょくってんのかよ」

「待ってあろま…そんなつもりじゃ」

「じゃあ何で…冗談だって…」


俺の胸ぐらを掴む手に力が入る。怒りと苦しみの声の中に、嗚咽にも似た声が混ざる。


「お前…まじでふざけんなよ…

そんなこと言われた俺の気持ちは無視かよ」

「待てって。だって俺にあんなこと言われても困るだけだろ」

「……」

「お前酔ってるんだって。俺も酔ってたし、お互いなかったことに―」

「…くそっ」


その時、俺の顔に何かが降ってきた。見ると、あろまの目からポロポロと涙がこぼれている。

人の気持ちを汲み取ることが苦手な俺だけど、この瞬間だけはわかった。

俺がこいつを傷付けたんだ。





To Be Continued…

付き合うまでのお話。

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚