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アウェイの体育館、その更衣室にメンバー4人が揃ったけど、やっぱりどうしてもピースが足りなかった。
ジェシーがいないとダメだ。
俺らはいつもより言葉数も少なく、ほかのチームに比べて明らかにテンションが低い。
「なぁ樹。お願いだからさ、そんな顔すんなよ。お前が沈んでたらSixTONESの士気ダダ下がりなんだって」
北斗にそう言われてしまった。茶化されているというよりも、ほんとに懇願されてるみたいだ。
「…そうだよな。っしゃ、みんなでウォーミングアップ行くぞ!」
気持ちを上げるために大声を出し、4人を集める。コートに出て、それぞれ好きなようにボールを使ってアップを始めた。
だんだんと開始時間も近づいてくる。そして俺らは更衣室に戻るとき、予想外のシルエットを見つけた。
「ジェシー!」
入り口のほうから、入院中なはずのジェシーが普段用の車いすに乗ってやってくるのが見えた。
最初に声を上げたのは慎太郎だった。「なんで? 来ていいの? 体調は?」
「いや、実はね、一日だけ外出許可が出たんだ。調子いいから大丈夫」
「そうなの? 良かった!」
大我も嬉しそうだ。俺はびっくりして動けないでいる。
「で…でも心配なんだよ、俺らは。来てくれて嬉しいけどさ」
高地の言う通りだった。病院からここまでそんなに近くはないはず。もし何かあったら……。
「だからだいじょーぶだって。応援のために来たんだから」
ジェシーはそう笑ってみせる。だけどやっぱり、この笑顔を一目見ただけで身体中にエネルギーが満ちているのが自分でもわかった。
「ほら、もう始まるよ。行かなきゃ」
その声に背中を押され、俺らはコートへと向かう。隅っこでいつものように円になった。もちろんジェシーも加わっている。
タイヤとタイヤを触れ合わせ、肩を組む。6人の間にみなぎる熱気が、さらに炎を帯びていくのを感じる。
「車いす大丈夫だね? 水分摂った? …今日は5人だけど普段通りにな。じゃあ行くぞ」
ここからはこいつの出番だ。
「We are…」
「「「「「「SixTONES!!!!!!」」」」」」
床に引かれたライン——バスケットボールの世界に入る境界で、俺は漕ぐ手を止めた。
先を行くメンバーのお揃いのユニフォームが、ふいに輝いて見えた。何度も見てきたんだけど、どこか新鮮な気持ちになる。
俺らには、目に見えない絆や運命だとかがある。そんなことを、信じざるを得ない今があるんだ。
この6人だからこそ、できる何かがある。
振り返れば、ジェシーがにっこり笑って手を振った。俺も手を振り返して、前を向いたとき4人がこっちを見て手招きをしてくる。
各自の位置につくと、ブザーが鳴り響いた。
俺らは一つ。
このまま一緒に、どこまでも——。
終わり
完結
コメント
1件
話の締め方がとっても最高です!