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スクリーンに映し出されていたのは、生徒会長の三島大和と、吹奏楽部のエース白鳥凛。学校で最も噂される二人だった。
「この二人か…」
沙耶が呟く。当然だ。白鳥凛は沙耶の吹奏楽部の先輩で、フルートを担当している。
「三島先輩は真面目すぎるくらい真面目だよね」
「そうなの。凛先輩の方は天才肌で、すごく自由な人なんだけど」
正反対の二人。でも、二人が一緒にいるところを見かけることは多い。生徒会と吹奏楽部の打ち合わせという建前で。
『この二人には深い想いがあります。しかし、立場の違いが邪魔をしています』
スクリーンの文字が二人の関係を説明する。
「立場の違いねぇ…」
映像は文化祭の打ち合わせの様子に切り替わった。
「三島くん、いつも堅苦しいわね」
白鳥先輩が生徒会室で三島先輩に話しかけている。
「白鳥さん、僕は生徒会長として…」
「もう、そういうところよ。たまには力を抜いたら?」
「それは…」
映像はそこで止まる。
「なんか、見てられないよね」
「うん…二人とも素直じゃない」
沙耶の言葉に頷く。二人の関係は、傍から見ていても歯がゆい。
「私、凛先輩の演奏、好きなの」
突然、沙耶が話し始めた。
「ふふっ、三島先輩も演奏会には必ず来てるよね」
「うん。でもね、凛先輩、三島先輩が来る時だけ、すごく緊張してるの」
「へぇ…」
確かに、生徒会長という立場で演奏会に来ているという建前はあるだろう。でも、それだけじゃない。
「なあ、さっちゃん」
「何?」
「二人とも、お互いのことが好きなんじゃないか?」
「私もそう思う。でも、凛先輩は自分の気持ちに気づいてないと思うな」
「三島先輩も、自分の立場を気にし過ぎてる」
そう話していると、映像が再び動き出した。今度は放課後の音楽室。白鳥先輩が一人でフルートの練習をしている。
「ねえ、なおくん」
「ん?」
「この二人を結ぶには、まず二人に自分の気持ちに気づいてもらわないと」
「そうだな…」
「私たちにできることって…」
その時、スクリーンに新しい文字が浮かび上がった。
『運命の赤い糸には、二つの力があります。一つは結びつける力。もう一つは、心の声を届ける力です』
「心の声…」
「二人の本当の気持ちを、お互いに伝えられるってこと?」
『その通りです。ただし、これには強い想いが必要です。二人で手を繋ぎ、心を一つにしなければなりません』
俺と沙耶は顔を見合わせた。さっきより、もっと強く手を繋がないといけないってことか。
「えっと…」
「その…」
気まずい空気が流れる。
「あ、あのさ」
「うん…?」
「手、繋ごうか」
「…うん」
今度は自然と手が重なった。さっきより、確かに強く握り合っている。
「なんか、ドキドキする」
「…俺も」
正直に言ってしまった。沙耶の手が少し震えている。
「よ、よし。じゃあ…」
「せーの」
「運命の赤い糸よ、二人の心に真実を届けよ!」
赤い光が、スクリーンの中の二人を包み込んでいく。
「これで…」
「うん、きっと上手くいく」
そう願いながら、俺たちはまだ手を繋いだままだった。