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最近の及川徹 は、少し変だ。
変というか――重い。
放課後。
「岩ちゃん、今日も一緒に帰れる?」
当たり前みたいに聞いてくる。
前なら軽口混じりだったのに、今は本気で確認してくる。
「用事ある」
そう言うと、ほんの一瞬だけ表情が曇る。
「終わるまで待ってていい?」
冗談っぽくない。
本気。
「……好きにしろ」
言うと、本当に待ってる。
本屋の前で。
じっと。
視線が合うたびに、ほっとした顔する。
胸がざわつく。
数日後。
昼休み。
クラスの男子に肩組まれて笑ってたら、視線を感じる。
見ると、廊下の向こうで及川が立ってる。
笑ってない。
放課後。
「さっきの誰?」
軽い声を装ってる。
でも目は真剣。
「クラスのやつ」
「仲良いの?」
「普通」
沈黙。
「俺より?」
その一言で空気が止まる。
「は?」
思わず低くなる。
及川は笑おうとする。
失敗する。
「ごめん」
すぐ謝る。
「変なこと聞いた」
でも、その目は不安でいっぱいだ。
「岩ちゃんさ」
ぽつり。
「俺いなくなったら平気?」
胸が強く打つ。
「何言ってんだ」
「俺はさ、無理なんだよ」
静かな声。
「岩ちゃんいないと、息できない感じする」
それは重い。
嬉しいけど。
危うい。
「お前」
肩を掴む。
「俺がいないと無理、は違う」
及川が揺れる。
「俺はお前が好きでいる」
はっきり言う。
「でもお前の全部にはならねぇ」
沈黙。
「俺がいなくても立てるやつでいろ」
少し強めに言う。
「じゃないと、怖ぇ」
及川の目が大きくなる。
「怖い?」
「依存されるの」
正直に言う。
「俺が壊れたら終わる関係は嫌だ」
及川の喉が動く。
「俺、重いよね」
弱い声。
「ちょっとな」
即答。
でも、視線は逸らさない。
「でも」
間を置く。
「逃げる気はねぇ」
及川の呼吸が止まる。
「重いなら、一緒に軽くすればいい」
拳を握る。
「俺はお前の支えにはなる」
でも。
「全部は背負わねぇ」
はっきり線を引く。
及川の目から、ぽろっと涙が落ちる。
静かに。
「俺さ」
掠れた声。
「選ばれたの、嬉しすぎて」
「うん」
「失いたくなさすぎて」
拳が震えてる。
「岩ちゃんの世界、俺で埋めたくなった」
危ない本音。
でも隠さない。
「でも」
自分で息を吸う。
「それ違うね」
少し笑う。
涙目のまま。
「俺、ちゃんと立つ」
ゆっくり顔を上げる。
「岩ちゃんの隣で」
抱き寄せられる。
今度は強すぎない。
震えはまだあるけど、さっきより落ち着いてる。
「俺、変わるの下手だけど」
小さく言う。
「ちゃんと好きでいる」
胸がじんわり熱くなる。
「それでいい」
背中を叩く。
「依存するな。好きでいろ」
及川が少し笑う。
「難しいなぁ」
「練習しろ」
バレーみたいに言うと、
ちゃんと笑った。