テラーノベル
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文化祭当日。
うちのクラスは、なぜかメイド喫茶をすることになった。
そしてなぜか。
じゃんけんで負けた俺。
「似合うよ岩泉くん〜!」
うるせぇ。
黒いメイド服。
フリル。
スカート。
死にたい。
「期間限定だからレアだよー!」
クラスのやつらが騒いでる。
穴があったら入りたい。
そこへ。
ドアのベルが鳴る。
入ってきたのは――
及川。
一瞬、目が合う。
次の瞬間。
固まる。
完全に。
「……は?」
低い声。
やばい。
ゆっくり近づいてくる。
周りの女子がざわつく。
「いらっしゃいませご主人様……」
棒読み。
殺す気かクラスメイト。
及川、無言。
三秒。
五秒。
そして。
「待って」
両手で顔覆う。
「無理」
肩震えてる。
「なにがだよ」
小声で睨む。
顔熱い。
及川が顔を上げる。
目がキラキラしてる。
やばい。
「可愛すぎでしょ?!!!!!!」
教室、静止。
時間が止まった気がした。
「……は?」
周り「え?」
クラスメイトが全員こっち見てきた。
「なにその破壊力!?反則!!俺のなのに!!」
「黙れ!!」
ざわめきが爆発する。
「俺のって言った!?」 「え、付き合ってる!?」 「及川くん今なんて!?」
及川、ハッとする。
遅い。
完全に遅い。
「……あ」
間抜けな声。
教室中の視線が刺さる。
「お前のせいだろ!!」
胸ぐら掴む。
メイド服のまま。
地獄。
及川、でも笑ってる。
幸せそうに。
「だって可愛いんだもん」
真顔で言うな。
「文化祭だからってあんな格好させるのずるい」
嫉妬混じり。
周りの女子がキャーキャー騒ぐ。
「岩泉くん顔赤い!」 「公式!?」
もう終わった。
完全に。
及川が小声で言う。
「ごめん」
でも目は全然反省してない。
「でも後悔してない」
心底嬉しそう。
「……あとで覚えとけ」
低く言う。
「ご褒美?」
「違う」
でも。
胸の奥はあったかい。
あんな勢いで。
無意識で。
“俺の”って出るくらい。
好きなの、隠せないやつ。
恥ずかしすぎるけど。
ちょっとだけ嬉しい。
及川が最後に囁く。
「今日の写真、永久保存」
「消せ」
「無理」
文化祭の一番の展示物は、
たぶん俺だった。
最悪。
でも。
嫌じゃない。
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