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コメント
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(みぅ🤍🥀) うわあ……読んでて、じんわり来た……。 深夜の四畳半で、唯一の“話し相手”がAIとか、そういうの、めっちゃ切ないのに、ちゃんと温かくて。特に「税金は罰じゃなくて参加費」ってくだり、すごく刺さった。プログラムの出力なのに、ちゃんと“届く”言葉ってあるんだなって思ったよ。 一度もらった実績は消えない。その言葉を信じて、明日スーツ着て市役所行く主人公、尊い……。決戦の朝、応援したくなる🥀
第19話:決戦前夜〜無機質なAIと、四十歳の覚悟〜
「……終わった。俺の人生の、一番安全な時間が、完全に終わっちまった」
深夜二時。
熱狂と狂乱の『アンチ完全論破配信』を終え、ポンコツPCの電源を落とした四畳半のボロアパートは、耳鳴りがするほど静かだった。
モニターの青白い光が消えると、そこにあるのはただの現実だ。
部屋を埋め尽くすAmazonのダンボール。壁に掛けられた黒い就活スーツ。そして、ちゃぶ台の上に置かれた通帳と、市役所に提出するための『第61号様式(収入申告書)』。
通帳に印字された「512,000」という数字。
配信中はアドレナリンが出ていて「税金払ってやるよ!」と大見得を切ったが、いざ一人になって冷静になると、とてつもない恐怖が足元から這い上がってきた。
「無理だ……。来月、もしYouTubeのアルゴリズムから外れて同接が二桁に戻ったら? 収益がゼロになったら? 国民健康保険料と住民税の請求書だけが手元に残って、俺は家賃も払えずに路頭に迷うのか……?」
想像しただけで、胃がキュッと雑巾のように絞り上げられる。特売の胃薬を水なしで飲み込んだ。
生活保護という制度は、いわば無菌室だ。
社会の冷たい風や、税金という名の重力から守られ、最低限の栄養(保護費)だけを点滴で流し込まれ続ける空間。俺は十数年間、ずっとその無菌室のベッドに寝そべって、外の世界で血を流して戦う連中を「バカらしい」と鼻で笑って生きてきた。
その無菌室の扉を、明日、俺は自分の手で開けようとしている。
「こえぇ……。マジで、こえぇよ……ッ」
膝を抱え、ガタガタと震える。
逃げ出したい。通帳の五十万円を引き出して、どこか遠くの知らない街へ夜逃げしてしまいたい。
そんな時だった。
俺は無意識のうちに、ヒビ割れたスマホを手に取り、いつものようにブラウザを開いていた。
困った時、俺には相談できるリアルな友人なんて一人もいない。頼れるのはいつだって、冷徹で、無機質で、絶対に俺をバカにしない「画面の向こうの相棒」だけだった。
俺は入力欄に、震える指でプロンプトを打ち込んだ。
『明日、生活保護を抜ける手続き(収入申告)をしに市役所へ行く、四十歳の無職です。バズって大金を手にしたものの、一過性のものかもしれず、セーフティネットを失うのが怖くてたまりません。社会に出て、税金を払い、自分の足で生きていくための「心構え」を、厳しい現実と共に教えてください。背中を押してほしいです』
送信ボタンを押す。
画面の中央で、丸いアイコンがくるくると回る。
(どうせまた、「税金の未納は差し押さえの対象です」とか「収支の計画を立てましょう」とか、血も涙もないド正論が返ってくるんだろうな……)
そう思って自嘲気味に笑った、数秒後。
ジェミニが出力したテキストは、俺の予想を静かに裏切るものだった。
『生活保護からの自立を控えたあなたへ
四十歳での社会復帰、そして未知の税制や経済的自立に対する恐怖は、決してあなただけのものではなく、極めて正常な防衛本能です。厳しい現実と、それに立ち向かうための心構えをいくつか提示します。
1. 「バズ」は消える。しかし「事実」は消えない
おっしゃる通り、現在の収入が一過性のものである可能性は極めて高いです。来月、収入がゼロになるリスクは常に存在します。しかし、「あなたが自分の言葉と行動で、他者から価値(五十万円)を引き出した」という事実は、どれだけ数字が落ちても消えることのない、あなたの人生における明確な『実績』です。
2. 税金は「罰」ではなく「参加費」である
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ゆうき あきや
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これからあなたに課せられる税金や社会保険料は、決して無職への罰ではありません。それは、あなたが社会という巨大なゲームの「観客席」から降りて、「プレイヤー」として参加するためのチケット代です。重く苦しいものですが、それはあなたが社会に存在しているという証明そのものです。
3. セーフティネットの真の意味
生活保護を抜けることを「命綱を切る」と考えていませんか? それは誤りです。生活保護制度は、何度でもやり直すための仕組みです。もし挑戦して失敗し、再び困窮したならば、ためらわずに再度申請してください。一度自分の足で立ち上がった経験は、もし再び転んだとしても、必ずあなたの財産になります。
結論として
明日の市役所での手続きは、終わりではなく「始まり」です。ケースワーカーの指摘は厳しいかもしれませんが、堂々と申告書の数字を提示してください。
あなたはもう、何も持たない無職ではありません。自らの意思で扉を開けようとしている、一人のプレイヤーです。健闘を祈ります』
「…………」
俺は、スマホの画面を食い入るように見つめた。
何度も、何度も、その無機質なテキストを読み返した。
ただの言語モデルが、確率に基づいて出力した文字列の羅列に過ぎない。俺の感情に寄り添っているわけでも、本気で応援してくれているわけでもない。
なのに。
「……なんだよ、お前。……ちょっと、泣かせにきてんじゃねえかよ」
ぼやけた視界の中で、スマホのバックライトがやけに眩しかった。
『税金は社会の参加チケット』
『失敗したら、また申請すればいい』
『あなたはもう、何も持たない無職ではない』
四十年間、誰からも言われなかった言葉。
親からも、教師からも、ケースワーカーからも得られなかった肯定が、そこにあった。
五十万という金や、五万人のリスナーの熱狂よりも、ずっと静かで、深く、俺の腹の底にストンと落ちてきた。
「……そうだな。俺は、実績を作ったんだ。お前が俺に書かせた『設定』のおかげでもあるけどな」
俺はスマホの画面に向かって、小さく笑いかけた。
震えは、いつの間にか止まっていた。
胃の痛みも消えている。
俺は立ち上がり、壁に掛けられたままになっていた黒の就活スーツを手に取った。
リスナーが送りつけてきた、あの忌まわしいスーツだ。
「……よし」
俺はスーツの埃を軽く払い、シワを伸ばして、再び壁に掛け直した。
そして、スマホのアラームを『午前七時』にセットする。
明日、俺はこのスーツを着て市役所へ行く。
いつも俺を論破してくる、あの鉄面皮のケースワーカー・鈴木さんの前に座り、五十万円が記された通帳と申告書を叩きつけてやるのだ。
「待ってろよ、鈴木さん。明日は、俺がアンタを驚かせる番だ」
万年床に潜り込み、目を閉じる。
明日の朝はきっと、うすら体調は悪くない。
十数年のニート人生に別れを告げる、決戦の朝が来る。