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鴨之助
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わ
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第19話
そんなある日から、二日後。
あれから、刺客が来なかった。
……それと同時に、黒猫も、ハンナも来なくなった。
俺は、教室にやっと復帰する。
……だけど、本当に黒猫とハンナがいなかった。
「あの子なら、行方不明だって。その子の使い魔になってるナイトは、その子を探しにどこか行っちゃった」
そう言ったのは、ニーナだった。
ニーナは、学年一位の学力を持っている。
でも、誰に対しても無愛想に接しるから、『無愛の姫』と呼ばれている。
……色々と、複雑で王家の血は半分しか入って無い。という噂だ。
俺は、その話を信じてない。
「そうか」
俺はニーナに向かって短く言い、自分の席に座った。
一番後の席で、後ろから見られてる感が無く落ち着く。
その日の放課後。
俺は校長室に来ていた。
呼び出された。と表したほうが正しいかもしれないが……
「あの日の刺客は……『電撃の賢者』だった。近くに、王家に仕えていた女騎士団長も捕まってる」
父上が発した第一声。
それがこれだ。
「え……?」
そうリアクションするしか選択肢がなかった。
何拍か空いてから俺は「……俺が寝ている間に、ハンナたちに何があったんですか? 詳しく聞かせてください」と真剣なトーンで言った。
大体は把握できた。
ハンナが風邪をひいた。
そこまでは分かっていたけど……あれから、剣一つ持って森へ飛び出したらしい。
黒猫は、捜索しているけど……あの黒猫でも、全く見つからない。
あの、訳アリ平民と呼ばれているマリアも、放課後から捜索の手伝いをしているとの話も……あれから何も食べてなかったら、絶食三日目だ。
無理をしていたら、まだ熱はあるだろうし……万が一の事も十二分に考えられる。
「……父上。これは、彼女をあそこまで追い込んでしまった、俺の責任でもあります。なので、捜索を――」
俺の言葉を遮るように「駄目だ。最近、魔物が増えてきているのは知っているだろう? それに……希望は薄い」と父上は俯きながら言った。
「っ……! 父上。お願いします。森へ入る許可を下さいっ」
頭を深々と下げた。
「……それは、只の逃げ道に過ぎないだろう。裏で働く賢者も沢山動いていると、斥候から知らせが入った。わざわざ、危険なところへ行かせられん」
父上は、言い切った。
俺があーだこーだ言っても無駄。
「分かりました」
俺は、拳を握りしめながら部屋へ足早に戻った。
✵
「くっそっ……見つからねぇッ」
俺は、心当たりのある場所から潰していってるが……見つからない。
強い魔獣の反応もあるけど……大きくは動いてない。
雲に隠れていた月光が姿を現し、木々の葉から差し込み、春風が頬を撫でた。
「く、ろねこ……っ……」
聞き馴染みのある懐かしい声とパタリと横になっている、赤い髪の少女が見えた。
俺は、駆け寄った。体は冷え切っている。
「っ……! 何で……こんなにボロボロになるまでっ……」
俺は抱き上げた。怪我ばかりしている。
近くには、沢山の魔物の死体がずらりと……学校から何キロも離れた場所だ。
「ありがと、うっ……助け、てくれて」
「馬鹿か。助けないなんて選択肢あるわけないだろ」
俺は少しふざけた。
……きっと、助かると思ったから。
「ふふっ。黒猫って、温かいね」
「え?」
「猫って、人間より体温が高いのよ」
「そうか」
俺は、ベル型の魔道具を鳴らした。
ハンナを見つけたら、この魔道具を鳴らす。この魔道具が鳴らした音は、同じ魔道具を持っている人に聞こえる。
一応、学校の備品だ。
「ちょっと、立てる気がしないからさ……運んで欲しい」
「……分かった」
自分のマントをハンナにかけてから、走り出した。
学校に着いたら速攻、暖炉の前で温められた。運んでいる途中で傷は癒えたらしい。
……俺の能力があったから、何とかな。
「何か食べられるか?」
俺は、暖炉の前でハンナを抱っこしながら問うた。
「うぅん。食欲が無いの」
「水は、持ってくるか?」
「うぅん。大丈夫」
段々、肩が濡れる感覚があった。
「私、色々な人に迷惑かけちゃった……」
ハンナは俺の服をギュッと握りしめた。
迷惑をかけたと言ってるが……かなり、履き違えている。
先ず今頃、街に魔物が溢れかえり、間違いなく混乱に追い込まれる。
そして……残念だが、街は潰れる。学校の生徒も、大半が命を落とすだろう。
「そんな事無いだろ? 非合理的な事には手を出さない。それが沢山あるハンナの一つの顔じゃないのか?」
図星。ハンナはそう書かれた顔を向けて俺と目を合わせた。
「確かに」
ムスッとしている。
……ちゃんと、そこだけは七歳か。
「ちゃんと休めよ」
「はーい」
そこだけはすんなり受け入れてくれた。
……大丈夫そうだな。
その日はハンナの背中を揺すりながら一夜を明けた。
コメント
1件
おお、第19話読み終えたわ…!ハンナ、無事で良かった…本当に良かった。森の中でボロボロになって倒れてるところ、マントかけて抱き上げる主人公の行動にグッときたよ。「助けない選択肢あるわけない」って軽く言うとこ、主人公らしくて好き。最後に暖炉の前で抱っこしながら「非合理的なことには手を出さないのがハンナの一つの顔」って返すシーン、グッジョブすぎる。優しい空気に包まれて終わって、じんわり来た。次も楽しみにしてる!