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夜になり、すっかり辺りは暗くなっていた。
涼ちゃんは玄関でふたりを見送りながら、
「バイバイ〜、また来てね〜」
と、いつも通り、にこやかに手を振った。
元貴と若井も笑顔で手を振り返し、車へと乗り込む。
車のエンジンをかけて少し走り出すと、元貴がぽつりと口を開いた。
「ね、若井……さっきトイレ借りたときにさ、洗面台の上に血ついたカッターと包帯、それと睡眠薬があった。」
若井は一瞬、何を言われたのかわからないような顔で元貴を見つめ、
「え?!あの涼ちゃんが?いつもニコニコしてるのに……?」
と信じられない様子で声を上げた。
元貴はゆっくりと頷きながら、
「うん。でも、あれ多分……結構最近使ったやつだと思う。」
ふたりの間に重たい沈黙が落ちる。
やがて若井が、意を決したように小さく呟く。
「……明日、直接聞いてみるか」
元貴もうなずき、ふたりを乗せた車は静かに夜の街を走り続けた。
その車内には、先ほどまでの賑やかさとは違う、重い空気が漂っていた。