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画像︰水永 ありす
ありすに手を引かれ、二人は一軒のカフェに入る。電車で二駅越えた部多乃町にある、レトロ風の洒落た店。
老夫婦が営んでいて、人気メニューはホイップクリームがたっぷりのったパンケーキだ。六人席にはすでに、三人の男女が寛いでいた。
「なぁんだ、君たちか」
「霧亜、知り合い?」
「同中」
そう、霧亜と同じ中学で、よくつるんでいた三人組である。
ショートヘアの似合う背の低い女子と、対照的に背が高く腰まで伸ばしたストレートロングが目を引く女子。そして端に座っている少しムスッとした茶髪の男子。
三人とも霧亜と同じ部活に所属していた。高校に入ってからはクラスが別になり、ラインのみの接触となっていたのだ。
「おひさ〜」
「先に食べてる」
「これ以上来んなよ……」
全く知らない奴じゃなくて良かった、と思いながら、霧亜は三人と向かい合うように座る。隣にありすもちょこんと座った。
「何でありすと知り合いなわけ?」
キミら違う中学でしょ、と霧亜が三人に疑問を投げかける。
「それなー」
「『それなー』じゃなくて……」
ショートヘアの女子……もとい、安樂 華音が相変わらずのギャル口調で答える。
「この子ホントオモロくて。入学式の後、いろんな人に片っ端から話しかけてたんよ」
で、面白そうだったからつるむことにした。と、華音がケラケラ笑いながら告げた。
「コミュ強……」
と、小さく短い感想をロングヘアの女子がつぶやく。羽柴 彩芽。見た目に似合わず気が小さく、自分から動くことはなかなか無い。正反対な性格をしている華音とは幼稚園からの幼馴染だそうだ。
「もう帰っていいか?」
唐突に茶髪の男子……月路 優雅が苛立ちまぎれに華音たちに聞く。どうやら、女子ばかりに囲まれているのが落ち着かないらしい。テーブルを見ると、抹茶ラテを飲んだのみのようだ。
「だーめー」
「結城も来るって言うから来てやったんだぞ!!」
「試合が近いから、今週は練習づけだって。さっきラインがきた」
3
ありすがスマホを見ながらしれっと答える。
「ふざけんな!!」
「ごめーん(笑)」
「バスケ部は相変わらずスパルタだねぇ」
華音は気にせず呑気に続ける。
「さ、霧亜とありすもなんか頼みなよ」
「じゃあ、私はホイップマシマシアイスパンケーキで!!」
「どこのラーメン屋だよ……」
ありすは元気よく答え、呼び鈴を押す。優雅は早々に諦めたのか、ツッコミをしつつ、抹茶パフェを頼む。
「おれはチョコとマシュマロのパフェ」
「でた、霧亜の『おれっ娘』」
「ほんと好きだよな、マシュマロ」
「うっさい」
君だって今、抹茶パフェを頼んだじゃないか〜、と霧亜は負けじと煽りを入れる。「ケンカしないで……」と彩芽がアワアワと不安そうにつぶやいている。
霧亜には下に妹が二人おり、そのうちの一人がボクっ娘なため、それに付き合っているうちに一人称も変わってしまったのだ。もうくせになっているので、なかなか直らない。
そうこうしているうちに、頼んだメニューが届く。
パフェはマシュマロとシリアルの三層作りで、上には焼きたてのマシュマロとチョコソースがかかっている。
パンケーキはスフレ生地で、バニラアイスにたっぷりとホイップクリームがのっていた。
抹茶パフェの方も美味しそうだ。抹茶風味のスポンジに、小豆、白玉、そして沢山の抹茶粉が降りかかっている。
「なぁんで弓道部に入らなかったん??きりあ〜」
「そう言う華音こそ。人のこと言えないでしょ」
「ウチは青春を謳歌したいのー」
霧亜、華音、彩芽、優雅の四人は中学では弓道部だった。しかし高校に入ってからは、霧亜は吹奏楽部、華音は帰宅部と所属を変えている。彩芽と優雅は変わらず弓道部だが。
「前にも言ったよ。元々音楽の方が好きなの。弓道は君らに誘われて乗っただけ」
「もったいねぇな。お前上手かったのに」
「でも、優雅が続けてるのは意外だった」
飽きっぽい性格してるのに、と霧亜が茶化す。
「しょうがないだろ。クソ兄貴がやってたから……、それに、女のお前に負けっぱなしは気に触るからな」
だから、兼部してでも弓道部に来い、と優雅がパフェをつつきながら勧誘する。
「流石に吹奏楽と兼部はキツイって」
「なら、空いた時間にでもいいから来い。俺が勝つまで続けるからな」
「めんどいからヤダよー」
「まあ、いいじゃん、優雅も霧亜の吹奏楽聴けば?」
これ以上騒ぎにならないようにと、華音が口を挟む。
「練習で来れんときは動画送るしー」
「は?第一、お前は音楽鑑賞なんてするタマか?」
「ありすに頼めばいいじゃん♪放送部だから演奏会とかで関わりあるっしょ」
「もひろん!最高のアングルで撮ってあげふよー!きいあ!!」
「勝手に話を進めるな⋯⋯」
そもそも写真に写るのも苦手なんだが……と、霧亜は憂鬱そうな顔をする。パフェにのっている焼きマシュマロを伸ばしながら、霧亜は追加でカフェオレを頼んだ。
「で?何でこのメンツで集まることになったん?ウチはよく知らんのやけど〜」
「え?ありすに誘われたから来たんだが……」
「?霧亜も用件知らねぇのか」
一体どういう事だ、と優雅は不思議そうに尋ねる。
「おれに聞かれても困る。六限終わってすぐ、引っ張ってこられただけだしな」
「わたしも……」
彩芽もオドオドしながら答える。その様子だと、ありすに誘われた後、華音に連れてこられたようだ。
全員がありすの方を向く。
今現在、話題の中心になっている人物はというと、
「ん〜〜!おいひぃ〜〜〜!!」
……夢中でパンケーキを頬張っていた。
「スフレ生地とか、贅沢すぎるよ〜〜!ホイップとシロップもボリューム満点で最高すぎる〜〜〜!」
夜ご飯いらないなぁ〜〜、などとハイテンションになりながら食レポをしている。
「おい……、おいってば!!」
「うわぁ!?どしたの、優雅」
「どしたの?じゃねぇよ!!用件を言え、用・件・を!!」
「あぁ!忘れてた!!」
「誘っておいて、忘れてたのか……」
霧亜と優雅は呆れた顔をして絶句する。
「やっぱオモロいね〜、あんた」
「え〜〜、ありがとー!!」
「褒めてないと思う……」
彩芽も驚きからか、珍しくツッコミをした。
本題を聞かれ、ありすが神妙な顔で口を開く。
「実は……、みんなに助けてほしいことがあって……」
皆が真剣な顔つきで続きを促した。
この世界、能力を持つことが当たり前。よってどんなトラブルが起こっても不思議ではなかった。人間関係で何かしらあったのか。或いは、不良組織にでも絡まれたか。
一体どんな問題が……、と霧亜たちは耳を傾ける。
「……宿題を、手伝ってください!!!」
???…………………………???
「「「「 は??? 」」」」
あまりにも予想外すぎる、そしてふざけた回答に、霧亜たちは声を揃えて、呆れ果てた音を出すしかなかった。霧亜と優雅に至っては本日二度目の絶句となったのだった。