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百恋と水族館に出かけてから一週間、七月最後の夜。いろりは自分の部屋で一人、学習机に向かっていた。
あれから百恋からの音沙汰は一切ない。
神の力でスマートフォンも持ち毎日のように連絡して来ていたのに、だ。
百恋がそれをしないのは、恋の駆け引きで押してダメなら引いてみる。……この引いてみる、の工程を行なっていたからである。
そんなことをされているとは露ほども知らないいろり。そんな彼女の背後が、不意に蒼白く光った。
いろりは文字を綴っていたシャープペンシルを持つ手を止め、後ろを振り返った。
するとそこには、蒼白い光を纏った漆黒の鷹がいた。
普通の鷹より一回り大きいだろうか、艶のある羽根に、ガラス玉のような蒼い瞳、それと同じ色の嘴と足が印象的であった。
「……もしかして、鷹海様、ですか?」
「そうじゃ。ようわかったの」
「やっぱり! そのお身体の色と目でわかりました!」
気高い立ち姿の鳥は、紛れもなく海を司る鷹神の鷹海であった。
「怖くないのか、この格好でも?」
「いいえ、ちっとも」
「狐雲様の狐姿ならともかく、わしや、蛇珀の蛇姿なんかは特に娘には嫌われる類じゃろう」
「……そうなんですか? 私は爬虫類も鳥類も好きですが」
「真面目じゃが変わった娘じゃの……」
「……あの、蛇珀様に、何かあったのでしょうか?」
椅子に座った身体を鷹海の方に向けて不安気に尋ねるいろり。仙界から使者が来るなど、何か悪い報告でもあるのだろうかと心配をしたのだ。