一週間が過ぎた。
私は、怜と二人きりの時だけ、素の自分でいられるようになった。彼だけが、私を知っていて、私だけが、彼を知っている。でも、彼は、ずっと、同じように話す。抑揚はあるのに、どこか、そっけない感じ。話していたら、楽しいけど、たまに、話を聞かない。そんな感じになった。そして、3日間、健人君の夢を見ない。なんでだろ。
「怜。今日の調子は?」
「いつもどうり。」
「そう…。」
いつもどうり…か。毎日、いつもどうりだって。感情がないと言っても、少しの起伏はあるみたいだけど、小説でしか動かない。日常でも、感情の変化がないとつまらないよ…。
ねえ、怜。君は、いったい、何があったの?思い出して、聞かせてよ。君の、過去を。忘れてしまうほど、辛かったの?教えてよ……。怜。
…また…怜のことを考えてた。寝る前に…どうしても、考えてしまう。どうすれば、救えるのか…
次の日
「あ、怜。」
「早苗…ちゃんと寝てるか?」
昨日、寝るの遅かった…
「隠し事はできそうにないね。」
「そーだな。」
「怜は?ちゃんと寝てるの?」
「まあな。遅くとも2時には。」
「遅くとも…早い時は?」
「10時。」
「早…」
「早苗は?」
「4時…」
「ちゃんと寝ろよ。授業中眠くなったら困るからな。」
「うん…」
怜は、何でもお見通し。観察力に長けている。人をよく見てる証拠だなぁ…。
凄いのに…人に…羨ましいと言われそうなのに…どうして、感情が……何回考えても、分からない。過去に、何かあったのだろうけど、それが、分からないから…
怜の家は、私の家から歩いて20分ぐらいのところにある。近いほう。だから、いつも一緒に帰れる。まだ、心の距離は遠いけど。
次の日。
土曜日、部活の日。
その日、怜は来なかった。今まで、休んだことのない怜が、来なかった。
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