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3ヶ月が過ぎた。

トラゾーの俺らに対する態度の硬度は更に上がった。

何重にも壁が作られている感じだ。


今まで通りいつもは4人でご飯は食べるようにしていた。

それが声をかけても、大丈夫です、の一点張りで。


当たり前だ。

居心地が悪いに決まっている。

記憶を無くしてからも一緒に食べてくれていたのはただの義務感だったのだろう。

それが今では拒否されるようになってしまった。


元々、俺らを忘れてからトラゾーは任務など以外では関わろうとしなかった。


美味しそうに食べていたトラゾーの姿を見るのが俺らは好きだった。

その姿を見なくなり、なんなら食べてるかどうかも危うい彼の丁度良い体つきは少し痩せたように見える。


「トラゾー、ちゃんと食べてる?」


「食べてますよ。ほら」


手元にあるのは簡単に栄養補給できるタイプのゼリーだった。


「そんなの、何の栄養にもならないですよ」


「トラゾー、これサンドイッチ作ってもらったから食べな」


クロノアさんに差し出されたサンドイッチをじっと見て机を指差した。


「また後で食べるので置いといてください。俺、次の潜入先の下調べのまとめしないとなんで」


暗に出て行けと言われてるようだった。


「…ごめん。でも、心配だから…」


「心配?……あぁ、潜入できる人がいないと困りますからね。俺、丈夫なんでこんなんじゃ倒れませんから。心配ご無用ですよ、ぺいんとさん」


「違くて…!」


心を閉ざすトラゾーには今何を言っても響かない。

届かない。


「…明日にはここを出て潜りますから。何かあれば連絡、暗号で送ります」


視線はもう目の前に広がるたくさんの紙と端末と画面に戻ってしまった。


「…ぺいんと、邪魔になるから出よう」


「ごめんなさい、トラゾーさん。お邪魔しました」


2人に肩を押されてトラゾーの執務室から出る。

扉が閉まった後、カチリと鍵のかかる音がした。


これ以上、踏み入るなと言わんばかりに聞こえたその小さな音は俺らに重くのしかかる。


「……もう、嫌われちゃったんかな」


「ぺいんと…」


「俺、トラゾーに嫌われたら生きてけない…」


「そりゃ、僕だって…」


「俺もだよ…」


俺ら以外には普通、というか当たり前だが何一つ変わらない接し方のままだ。

あの屈託のない笑顔だってもうずっと見ていない。

優しい声で名前も呼んでもらっていない。


近付きたくても近付くことができない、まるで蜃気楼を見せられているようで。

それがどれだけ夢であればといいのかと願うほどに。


大切なものほど見落としやすかったりする

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