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今日は久々に領地内を見て回ったランディリックである。本来ならば頻繁にそういうことをし、民の声をすくい上げるべきなのだが、町全体が深い雪に閉ざされている時期は、元より夏に比べてその辺りの動きが緩慢になる。


だが今年はそれを理由に、例年にはなくその辺りがおろそかになってしまっていた。王都エスパハレからここ――ニンルシーラへ連れてきたばかりのリリアンナの傍を離れるのが躊躇ためらわれたからだ。


もちろん、配下の者が時折町へ降りて住人たちの様子を上申してくれてはいたけれど、自分の目で見るのと上げられてきた報告を受けるだけとでは、やはり解消度が違う。


今は国境警備の方が雪のお陰で夏季ほど忙しくはないが、雪解けとともに隣国マーロケリーへの警戒も強めねばならない。


ランディリックとしては、マーロケリー国の人間と国交を正常化できる未来が訪れることこそが最良の道だと思うのだが、今のところ我が国にはそのつもりがないらしい。


次期イスグラン帝国王になるであろう皇太子は温厚な人柄で知られている和平派だ。好戦的な現国王の代では難しいかも知れないが、イスグランに新しい風が吹くのもそう遠い将来ではないだろう。


(まぁそうなれば、国境警備としての僕の任もお役御免になるかな?)


それはそれでいいと思う。というよりのんびりと領民たちの生活を支えながら領地経営にのみ尽力する方が、リリアンナとともに過ごす今の生活には向いている気がするのだ。


それに――。


(リリーにはマーロケリーあちらの国の血が流れているからな)


それもあって、ランディリックはこのままマーロケリー国とは和平は無理でも、最悪停戦状態が続けばいいと願っている。



***



「閣下、城壁の修繕が終わりました」


城内に戻るなり、ディアルトからそんな報告が上がってくる。ディアルトは、リリアンナを王都エスパハレへ奪還しに行った際、筆頭従者を務めてくれた信の厚い臣下の一人だ。ランディリックは常より、城内を空ける際は彼に兵たちの統率を任せることが多い。


今日は主に城壁修繕の監督を頼んでいた。


邸内のことをランディリックに代わって執事のセドリックが取り仕切ってくれているように、ディアルトもまた、ランディリックの片腕として外でよく働いてくれている。


「分かった。見に行く」


答えながら、ディアルトへ何の気なしの視線を投げかければ、ディアルトがふっと表情を緩めた。


「ちなみにリリアンナお嬢様は今、カイルとともに厩舎きゅうしゃにいらっしゃいます。中から賑やかな声が聞こえていましたので、恐らくは仔馬を……見ているのではないかと――」


「そうか……」


別にランディリックからリリアンナのことを尋ねたわけではない。だがランディリックにとっては、そこも気になる点だと心得ている出来た臣下はさり気なくそんな情報も流してくれるのだ。

ヤンデレ辺境伯は年の離れた養い子に恋着する

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