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『カロリン諸島』を発ったアークロイヤル号は、全速力を維持したまま『ファイル島』へ向けて海原を走っていた。

その間スカイホエールの群れに遭遇したが刺激すること無く、無事に航海を終えた。航海中トラブルメーカーでもあるシャーリィが熟睡していて大人しかったことも関係していた。

『カロリン諸島』を発った翌日の夕方、アークロイヤル号は無事に『ファイル島』への帰還を果たす。流石に時刻が夕暮れだと言うこともあり、『ダイダロス商会』との交渉は翌日に延期。帰還したことのみを知らせて、その日は船で過ごすことにした。

「宿なんかは無いんですか?」

「あるにはあるけど、シャーリィちゃんにはお勧めしないよ。ほとんど売春宿みたいなものだからねぇ」

「なるほど、確かに私には縁がない場所ですね。ルイ、寄り付かないように」

「行かねぇよ……」

「船長、船員のは何人かが外泊許可を求めてるぜ」

リンデマンがエレノアに申請を伝える。

「全く、シャーリィちゃんから報酬を貰った直後かい」

シャーリィは今回の遠征で船員全員に臨時ボーナスとして金貨二枚を報酬として支払った。日本円で言えば二百万円に相当する金額である。ハメを外すのも無理はなかった。

「どう使おうと彼等の自由ですよ」

「済まないねぇ。ハメを外し過ぎないようにちゃんと言い含めておくんだよ。大事な商談がまだ残ってるんだからね」

「分かってるよ。戦利品を売り捌くまで大人しくしてるだろうさ」

今回手に入れた『飛空船』のパーツなども『ダイダロス商会』に売却する予定であった。相場通りなら、薬草の売り上げと合わせて星金貨二十五枚の成果となる。

日本円にすれば二十五億円と言う凄まじい売り上げである。

「どのくらいで売れるか分かりません。状態の良いものを集めてくれましたが、廃品であることに変わりはありませんからね」

「それでも経費を引いて星金貨二十枚以上の売り上げだよ。ロメオが回復薬を作ったらまだ売れそうだね」

「楽しみです。それに、明日の会談では別の目的があります」

「例の知り合い絡みか?」

ベルモンドが問い掛ける。

「はい。私の予想通りなら……星金貨二十枚より遥かに重要な利益に成るかもしれません」

「そんなにか?」

「希望的願望ですけどね。どちらにせよ、『ファイル島』で最大の『ダイダロス商会』の会長と会えるんです。エレノアさん、明日はちょっとだけ手伝ってください」

「なんでも気軽に言っておくれよ」

翌朝、日の出前にシャーリィの船室にエレノアが呼ばれ、しばらく出てこなかった。

「船長遅いなぁ。朝の点呼が始まっちまうぞ」

「お嬢からの呼び出しだろ?こんなに朝早くからなのは珍しいけどな」

甲板でリンデマンとベルモンドが言葉を交わす。そんな二人にルイスが近寄ってきた

「おはよう、ベルさん。リンデマンのおっさん」

「おう、おはよう」

「よう、ルイ。朝っぱらからお嬢がエレノアを呼び出したんだが、なにか知らねぇか?」

「知らねぇなぁ。昨日の夜に、出てくるまで部屋に入るなって言われたけどさ」

ルイスも知らないらしく、首を左右に振る。

それからしばらくして、陽が登り皆が朝食を済ませた頃ようやくエレノアが船室から出てきた。

「船長、何してたんだ?もう朝飯は済ませちまったぞ?」

「ふふふっ、野郎共!目を見開いてよぉく見てみなぁ!滅多に見られないシャーリィちゃんだよぉ!」

やけにテンションの高いエレノアが宣言すると、船室からシャーリィが出てきた。

「よう、シャーリィ。なにして……!?」

声をかけたルイスが固まる。他の皆も目を見開いて硬直した。何故ならば。

「ごきげんよう、シャーリィです」

そこにはワインレッドのドレスに身を包んだシャーリィの姿があった。小柄な体格はどうしても幼さを前に出してしまうシャーリィだが、ドレスを纏うだけで気品と女性らしさを醸し出していた。そして肩口で揃えられた金の髪には、小さなバラのコサージュが髪飾りとして付けられている。

このドレスはエーリカがシャーリィのために仕立てたものであり、万が一に備えて持ち込んでいたのだ。

「道理で時間が掛かったわけだな」

「気付けを手伝ってたのか?エレノア」

「エーリカちゃんから頼まれててね。いやぁ、普段のシャーリィちゃんも可愛いけどドレス姿も捨てがたい」

「ああ、似合ってるな」

「……綺麗」

エレノア、ベルモンド、アスカが感想を話している間、硬直しているルイス。それに気付いたシャーリィは彼に近寄る。

「どうですか?ルイ。エーリカが仕立ててくれたので変なところはない筈ですが」

「あっ……いや……うん、なんというか……似合ってるんじゃないか?うん」

顔を赤くしながら視線をそらしつつルイスは感想を口にする。それを聞いたシャーリィは、ジト目を向ける。

「エレノアさん曰く、こんな時は素直に誉めるものらしいですよ?」

「えっ?あっ、いや……悪い」

「ふふっ、それでこそルイですけどね」

花が咲いたような笑みを浮かべるシャーリィに、ルイスは益々顔を赤くする。

「青春してるなぁ」

「シャーリィちゃん綺麗だからねぇ、照れてるのさ」

「だろうな。似合ってるぞ、お嬢。どこからどう見ても貴族のお嬢様にしか見えないな」

「ありがとうございます、ベル。ドレスなんて久しぶりなので、少し緊張しますね」

「様になってるよ、シャーリィちゃん。その格好で会うつもりかい?」

「全てが私の予想通りなら、ドレスの方が礼儀を示すことが出来ます。例え違っても、気品を示せればと思います」

「なら馬車を手配しよう。そんな格好で彷徨けるような場所じゃないからね。リンデマン、馬車を手配しておくれ」

「それなら、手下を向かわせてる」

「おや、仕事が速いじゃないか」

「ボスの荷物にドレスがあるのは知ってたからな。それに、船長が長いこと一緒に何かしてたんだ。何となく必要になるんじゃないかと思ってな」

「とは言え、上品なものは用意できないだろうけどな」

一時間後、手配した馬車が用意されるとシャーリィはそれに乗り込みバザーにある『ダイダロス商会』の屋敷を目指す。同行者としてはベルモンド、ルイスの二人が選ばれた。

現地に到着すると『ダイダロス商会』の案内で目立たないように裏口へ誘導されて、屋敷へと入る。

相変わらず気品ある応接室へ通された一行をラウゼンが迎える。

「先ずは、よくぞご無事で。目的のものは手に入りましたかな?」

「はい、情報提供ありがとうございます。いくつか戦利品もありますので、後程買い取りをお願いします」

「畏まりました。後程品を改めさせていただきます」

「それで、代表とは都合がつきましたでしょうか?」

「昨日知らせていただけましたからな。我が主も本日滞在されておられます」

そこまで話すと、シャーリィはベルモンド、ルイスの退室を命じた。それを見て内密な話と察したラウゼンもボディーガード達の退室を命じた。そして応接室にはシャーリィとラウゼンのみが残された。そこでシャーリィは立ち上がり、ラウゼンに向き合う。

「それは良かった。感謝します、ガウェイン辺境伯様」

ここでシャーリィは優雅に一礼する。それを見てラウゼンは驚きの表情を露にする。

「……覚えておられたか」

「幼少期、幾度も屋敷を訪ねてくださったお方を忘れる筈はありません。まして、父の大切な盟友を」

「……やはり、貴女は……よくぞ、生きておられた。初めてお会いした時は、確信を抱けなかったが……そうか、無事だったか……」

ラウゼンの顔に安堵が浮かぶ。

「何とか。今は故あってシェルドハーフェンで『暁』の代表を務めています」

「そうであったのか……」

「詳しい話は後程。ガウェイン辺境伯様。『ダイダロス商会』の代表はやはり?」

「予想通りだ。貴女についてはなにも話していない……今、お呼びしよう」

そしてラウゼンが扉を開いて、貴公子然とした青年が入室。シャーリィを見て目を見開く。

それに対してシャーリィは、恭しく一礼した。

「シャーリィ=アーキハクトがご挨拶申し上げます。ユーシス=フォン=ローゼンベルク第三皇子殿下」

シャーリィはまたひとつの再会を果たすこととなる。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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