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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第31話 〚繋がる手段〛(恒一視点)
スマホは、机の中に入れてある。
恒一は、昼休みの教室を見渡しながら、指先でその存在を確かめるように軽く机を叩いた。
——便利な時代だ。
連絡は一瞬。
距離は、画面一枚で消える。
偶然だって、作れる。
さっきの出来事が、頭から離れなかった。
担任に注意された男子たち。
周囲の「便利だよね」という声。
誰も気づいていない。
便利なものは、繋ぐだけじゃない。
管理も、操作も、できる。
恒一は、視線を前に向けた。
白雪澪。
窓側の後ろの席で、本を読んでいる。
静かで、目立たない。
けれど、なぜか周りが寄っていく。
——いや。
寄せられている、のか。
橘海翔。
相馬玲央。
三軍だと呼ばれる女子たち。
誰もが、澪を中心に動いている。
それが、恒一には許せなかった。
(俺が、先に見つけたのに)
スマホを取り出す。
画面を点けないまま、指でなぞる。
りあの連絡先は、もう入っている。
あの時、カフェで話した時。
彼女の目は、すぐに欲で光った。
「一軍になりたい」
「特別になりたい」
その気持ちは、分かりやすい。
——使える。
恒一は、心の中でそう判断した。
澪に直接触れなくてもいい。
近づかなくてもいい。
人を使えばいい。
繋がりを、利用すればいい。
スマホの画面を見つめる。
送信欄に、短い文章を打ちかけて、消す。
まだだ。
今は、様子を見る。
澪が守られている今、動くのは早い。
でも。
——手段は、揃ってきている。
スマホ。
噂。
人の欲。
それらは全部、
「繋がるための道具」だ。
恒一は、マスクの下で、静かに息を吐いた。
(もう少しだ)
澪が、予知に頼らなくなった時。
守る側が、油断した瞬間。
その時こそ。
彼は、スマホをそっと机の中に戻した。
誰にも見られないように。
誰にも気づかれないように。
昼休みのチャイムが鳴る。
日常は、何事もなかったように続いていく。
——けれど。
見えないところで、
確実に「繋がる手段」は、整えられていた。