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話も落ち着いてきたところで俺はアランさんにある提案をしていた。
「アラン様にお願いがございます。宜しければ聞いて頂きたいのですが……」
その言葉にアランさんはうんうんと二回頷いて促してくれた。
「私とここに居るシロはメアリーにとっては魔法の師匠にあたります。ですから、これからも指導を続けていきたいと考えているのですが、如何でしょうか?」
「それは私にそなたを雇えという事なのか?」
「いいえ決してそのような事ではございません。ただ行く末を見守っていきたいのです。ですから毎日でなくても構いません、時間があいてる時にその都度指導ができればと考えています」
「うん、しかしだなぁ、一時でもメアリーを預けるとなると…………。いや、やはり今回は縁がなかっ……」
「ちょっとお待ち! アランあんたは結果を急ぎ過ぎるねぇ」
そこへ食いぎみに割って入ってきたのは おばば様。
いつの間に部屋へ入ってきたのだろう? アランさんもびっくりしている。
「こ、これは おばば様、ますますご健勝のご様子で……」
「そんな挨拶なんかどうでも良いんだよ。ちょっと座ってもいいかえ?」
「もちろんですとも。ささ、こちらへ」
「はんっ、ありがとね」
「それで突然どうなさったのですか?」
「それじゃ率直に言うよ。アラン、このゲンを近くに置いておきな。必ず役に立つから。本当はカイゼルに付けたかったんだけどねぇ。ダンジョンのことが絡んでるから、アランお前さんほうが都合が良いだろう。いいね」
「しかし、どういう者かも分かっておりませんし……」
「あぁーもう、じれったいねぇ。 いいかいアラン、この子はねぇダンジョンを管理する能力を持ってるんだ。そこでおまえさんが王国とのパイプになって橋渡ししていくんだよ」
アランさんは少し混乱しているようだが、おばば様が間に立ってくれたお蔭で誤解することもなく、なんとか話は続いていく。
話の途中で、喉が渇いたからアレ出しな!
――とか。
ちょっと小腹が空いたからコレ出しな!
――とか。
いいように使われてしまったが、みんなを笑顔にできたのだから。まぁ良いかな。
ダンジョン・デレク の転移陣を利用した運用。
温泉施設は王家専用にしてほしいとか。
二つも手が回らないので、ダンジョン・サラの方は冒険者ギルドに任せた方がいいとか。
それは様々な議題があがった。
………………
そして俺は最後に爆弾を放りこんだ。(ミスリルの件)
ダンジョン・カイル内で行われていたミスリル鉱山の占拠についてだ。
「ダンジョン鉱山でのミスリル排出は現在ストップしております。がむしゃらに掘ったところで一かけらのミスリルもでません。既に70日程止めているので、奴らは相当困っているはずです」
占拠していた関係者は一人残らずマーカーを付けて追跡しており居場所も全て把握できている。
とりあえず、今は問題点を出すだけ出していき、あとは国王様も交えて詰めていくことにした。
この話し合いをおこなっている間、メアリーは暇を持て余し、たいそう焦れているのかと思いきや、隣りでシロをもふりながらニコニコしてみんなを見ていた。
このように、あーでもないこーでもないと話をする姿は見ていて楽しいのだろうか……。
いや、話は関係ないな。
家族が集まってワイワイしてることが嬉しかったのだ。
俺もメアリーに魔法を教えることが出来そうだし、少しほっとしていた。
これもみんな、おばば様のお陰だよな。
今度、少々無理なお願いをされても聞いてあげることにしよう。
このあと夕刻より、身内だけを集めて夕食会を開くらしい。
場所は大食堂にて行われるそうだ。
メアリーは家族と共に控えの間に移った。
「また、夕食会で会おうね」と言って別れてきた。
今日の為に作ったドレスもメイドさんに届けてもらった。
実は昨晩、
出来上がったドレスをどうしても着てみたいと言いだしたので、メイドさんに手伝ってもらい部屋で一度着させてみたのだ。
犬耳と尻尾を持ったメアリーなのだが、ドレス姿もすこぶる可愛いかった。
さあて、こちらも準備していきますかね。
………………
そして俺たちは夕食会の会場へ案内された。
両開きの大きな扉が開かれ中へ足を進めると、
――ひしっ!
マリアベルである。
しがみつかれたのはシロちゃんだ。
「マリアベルちゃん、こんばんはー」
膝を折ってあいさつをする。
その折、シロに頼んで鑑定をおこなった。
――やっぱりあったか。
時空間魔法だ。それにMPの数値も30と多めだ。
まだ、3歳だというのにどういう事だろう?
この件もおばば様に要相談かな……。
そして夕食会は滞りなく終了した。
ナツが心配していたマナー関係は、ナツと子供たちの手元に遮音の結界を張ることでクリアしていた。
フフフッ♪ 音さえしなければどうと言うことはない。
夕食会のあとは立食形式でデザート・お酒・おつまみなどがテーブルに並べられ歓談していくようだ。
俺はおばば様を見つけると、さっきのマリアベルの件について相談してみた。
・時空間魔法が非常に珍しい事。
・扱い方を間違えると非常に危険な事。
・狙われたり攫われたりする可能性がある事。
とても有用な魔法だけに十分気を配ってほしいと注意を促した。
隣にいらした王妃様も我が子のことゆえ真剣に聞き入っている様子だ。
――そこへ、
「マリアベルがどうかしたのか?」
いかにも偉そうな感じの男性が声をかけてきた。
「なんだい、カイゼルの坊やじゃないか。背ばかり大きくなってからに」
「おばば様、坊やは勘弁してくだされ。このカイゼルもう28にもなるんですから」
おばば様がいじっているのだが、カイゼルって確か……。
「そうなのかい。それじゃあこの国をしっかり導いていくことさね。がんばんな」
そして俺の腕を取ると、
「カイゼル、こっちの坊やの面倒もしっかりと頼むよ。いいね!」
と、まさにおばば様の独壇場である。
「ゲン坊、こっちがカイゼル。この国の王だよ」
その言葉に俺は素早く貴族礼をとるが、
「なーにやってんだい。ここには身内しか居ないんだ、そんなことは後でしな」
「…………」
そう、おっしゃられても……。俺 部外者だし。
――やれやれ。
俺は立ちあがると、
「私はゲンと申します。モンソロで冒険者をしております。そして、こちらがシロ。私の従魔になります」
シロの背にはマリアベルとメアリーが跨っており、こちらに手を振っている。
無難に挨拶したのち、さっきのマリアベルの話をカイゼル王に聞かせていった。
「おお、そうであったか。使い熟せれば素晴らしい魔法ではあるな」
「もう少し大きくなったらゲンに預けても良いかもしれないねぇ」
「それほどの者であるのか?」
そのようにカイゼル王が問うと、おばば様は大きく頷いた。
「ここだけの話、この坊やとそこの犬コロが本気を出せば国が滅びるさねぇ」
「そして、この者は英雄クドウから託されてんのさ。この国をよろしく頼むってね。ほれっ、例のヤツを見せておやりよ」
俺は言われるがままに、懐から金の宝剣を取り出しカイゼル王へ手渡した。
「こ、これはまさか【初代様の宝剣】では? 確か同じものが宝物庫に……」
「ダンジョンの発見者でもあるんだ。あとは言わなくったって分かるだろう? とにかくしっかりおやり」
宝剣を見つめたまま、おばば様の言葉にコクコクと頷くカイゼル王であった。
「まあ、せっかく集まったんだ。明日は皆でダンジョン見学を兼ねて温泉でも入りに行こうじゃないか。山だから涼しいし、美肌の湯ときたもんだ」
おばば様が勝手に仕切って、予定まで決めてしまっているのだが……、良いのだろうか?
「おばば様、ぜひ私もお供いたします!」
と、おばば様の腕を取るのはアラン大公の奥方であるアストレアさん。
メアリーもニコニコ笑いながら横にくっついている。
「そうだったね、あんたも初めてだからビックリするよぉ。ほれ、この腕を見てごらんよピッチピチさねぇ」
自慢げに腕をまくって見せているのだが……、この場にはマナーもへったくれもないようである。
でもまあ、こうして見ていると、
このクルーガー王国における王族たちの関係性は至って良好のようだね。