テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#おんおら
ドズル社好き
1,226
#さんちゃんく!
あおい
1,964
6,529
#魔法パロ
薙刀 瑜菜🍃💌⚓️
104,062
ない
「……開けて?」
ドアの向こうから、もう一度声がした。
おんりーは、握りしめた手を見つめていた。
指の隙間から、青い花びらが覗いている。
どうしよう。
どうすればいい。
頭の中で、同じ言葉ばかりがぐるぐると回っていた。
今、ドアを開けたら。
おらふくんは、きっと部屋に入ってくる。
いつものように笑って、いつものように話して。
そして、床に落ちた花を見つける。
そのとき、なんて説明すればいい?
友達への片想いを拗らせて、花を吐くようになりました。
その相手は、あなたです。
――そんなこと、言えるわけがない。
「……おんりー?」
声が、少し近くなった。
ドアに耳を寄せているのだろうか。
「……なあ、ほんまにどうしたん?」
おんりーは、ゆっくりと息を吸った。
「……ごめん」
ようやく出た声は、自分でも驚くほど弱かった。
「……ちょっと、待って」
「うん。待つよ」
すぐに返事が返ってきた。
「急がんでええからな」
その優しさが、今は苦しかった。
どうして、そんなに優しいんだろう。
どうして、そんな声で名前を呼ぶんだろう。
どうして。
どうして、好きになってしまったんだろう。
おんりーは、床に落ちた花を拾い集めた。
一輪。
もう一輪。
指先が震えて、うまく掴めない。
それでも、なんとか全部をティッシュに包んだ。
机の引き出しを閉める。
床を確認する。
花びらは、残っていない。
これなら。
これなら、まだ。
「……お待たせ」
ドアを開けると、おらふくんが立っていた。
「おんりー!」
いつもの笑顔。
その顔を見た瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。
「……ごめん。待たせて」
「全然ええよ!」
おらふくんは笑って、それから、少しだけ首を傾げた。
「……なんか、顔色悪ない?」
「そう?」
「うん。大丈夫?」
「大丈夫だよ」
いつもの嘘。
いつもの笑顔。
おらふくんは、しばらくおんりーの顔を見つめていた。
それから、ふっと表情を緩めた。
「……なら、ええけど」
「……うん」
「お邪魔しまーす!」
明るい声とともに、おらふくんが部屋に入ってくる。
おんりーは、そっとドアを閉めた。
――見つからなかった。
ひとまず、それだけで安心した。
けれど。
「……あれ?」
おらふくんが、机のほうを見た。
「ん?」
「なんか、花の匂いせえへん?」
おんりーの心臓が、跳ねた。
「……え?」
「いや、なんか、ふわって」
おらふくんは不思議そうに部屋を見回した。
「おんりー、花とか飾ってるん?」
「……飾ってないけど」
「そっかー。気のせいかな?」
そう言って、おらふくんは笑った。
おんりーも、笑おうとした。
けれど。
喉の奥が、ひどく疼いた。
「……っ」
まずい。
今は、だめだ。
おんりーは顔を背け、口元を押さえた。
「……おんりー?」
「……ごめん、ちょっと」
「えっ、やっぱり体調悪いんちゃう!?」
おらふくんが、すぐに近づいてくる。
「大丈夫!? 座る!?」
「……大丈夫、だから」
「でも……」
「……ほんとに」
必死に笑う。
おらふくんは、納得していない顔をしていた。
それでも、無理に問い詰めることはしなかった。
「……分かった。でも、しんどかったら絶対言ってな」
「……うん」
おらふくんは、少し迷ったあと、ぽつりと言った。
「……僕、おんりーに無理してほしくないから」
その言葉が。
胸の奥に、静かに沈んでいった。
***
しばらくして。
二人は並んでゲームをしていた。
いつもと同じ。
画面を見て、話して、笑って。
おらふくんが失敗すれば、おんりーがツッコむ。
おんりーが黙れば、おらふくんが話しかける。
何も変わっていない。
……はずだった。
「なあ、おんりー」
「ん?」
「最近、なんか悩み事ある?」
指が止まった。
「……なんで?」
「んー……」
おらふくんは、少し考えるように唸った。
「なんとなく?」
「なんとなくって」
「いや、なんか……」
そこで、言葉が途切れた。
おんりーは、画面から目を離さずに尋ねた。
「……なに?」
おらふくんは、ゆっくりと口を開いた。
「……僕、最近のおんりー、ちょっと心配なんよ」
「……」
「前から咳してるし、なんか、無理して笑ってるみたいやし」
おんりーは、何も言えなかった。
気づいていたのか。
ずっと。
自分が隠しているつもりだったものに。
「……気のせいだよ」
やっと、それだけ言った。
「……そっか」
おらふくんは、すぐには否定しなかった。
その代わりに。
「……僕には、言えへんこと?」
そう聞いた。
おんりーは、息を止めた。
言えない。
言えるわけがない。
でも。
本当は、言いたかった。
苦しいと。
助けてほしいと。
好きだと。
全部。
「……違う」
おんりーは、ゆっくりと首を振った。
「……おらふくんに言えないんじゃなくて」
言葉が詰まる。
どう続ければいいのか、分からなかった。
「……俺が、言えないだけ」
おらふくんは黙っていた。
おんりーは、視線を落とした。
「……ごめん」
「……なんで謝るん?」
「……心配かけてるから」
「そんなの、謝らんでええよ」
即答だった。
「心配くらい、するやろ」
その声は、あまりにも自然だった。
まるで、当たり前のことみたいに。
おんりーは、思わず顔を上げた。
おらふくんは、真剣な表情でこちらを見ていた。
「……友達やん、僕ら」
その言葉に。
おんりーの心が、静かに軋んだ。
友達。
そう。
友達だ。
大切な。
かけがえのない。
だからこそ、これ以上は望めない。
「……うん」
笑う。
ちゃんと笑わなければ。
「……そうだね」
おらふくんは、少しだけ安心したように笑った。
「うん!」
その笑顔が、好きだった。
好きで、好きで。
どうしようもないほどに。
***
帰り際。
玄関で靴を履きながら、おらふくんが振り返った。
「……おんりー」
「ん?」
「また来てもええ?」
おんりーは、一瞬だけ目を見開いた。
「……え?」
「いや、今日楽しかったし!」
おらふくんは照れくさそうに笑った。
「また一緒にゲームしたいなーって」
胸が、熱くなる。
嬉しい。
本当に、嬉しい。
「……うん」
おんりーは、小さく頷いた。
「……いつでも来て」
「ほんま!?」
「うん」
「やったー!」
おらふくんは、ぱっと笑顔になった。
それから、ドアノブに手をかけて。
ふと、思い出したように振り返った。
「……あ、そうや」
「……なに?」
「さっきの花の匂い、やっぱり気になんねんけど」
おんりーの身体が、固まった。
「……っ」
「なんか、知ってる?」
おらふくんは、不思議そうに首を傾げた。
「……知らないよ」
答えは、すぐに出た。
あまりにも早く。
おらふくんは、少しだけ目を細めた。
「……そっか」
それ以上、何も言わなかった。
「じゃあ、またな! おんりー!」
「……うん。またね」
ドアが閉まる。
足音が、遠ざかっていく。
おんりーは、しばらくその場から動けなかった。
そして。
ゆっくりと、口元を押さえた。
「……っ、げほ……!」
掌に落ちたのは、青い勿忘草。
一輪。
今度は、花びらが少しだけ傷ついていた。
おんりーは、その花を見つめた。
「……なんで」
声が震える。
「……なんで、こんなに好きなんだよ……」
返事はない。
ただ、手の中の青い花だけが、静かに揺れていた。
***
その頃。
帰り道を歩くおらふくんは、スマートフォンを手にしていた。
画面には、さっき撮った写真。
二人でゲームをしているとき、ふざけて撮った一枚だった。
「……ふふ」
自然と、笑みがこぼれる。
楽しかった。
おんりーと過ごす時間は、いつも楽しい。
でも。
今日は、少しだけ違った。
おんりーの笑顔が、頭から離れない。
心配そうに声をかけたとき。
「俺が、言えないだけ」
そう言ったとき。
あの顔。
何かを必死に隠しているような。
今にも泣き出しそうな。
そんな顔。
「……おんりー」
ぽつりと、名前を呼んだ。
胸の奥が、少しだけ痛んだ。
どうしてだろう。
あんな顔を、もう見たくない。
何も話してくれなくてもいい。
今すぐ答えを教えてくれなくてもいい。
ただ。
ひとりで苦しまないでほしい。
「……僕、ちゃんと気づけるかな」
呟いた声は、誰にも届かなかった。
おらふくんは、スマートフォンを胸元に抱えるように持った。
そして、ふと思った。
もし。
もし、おんりーが誰かを好きだったら。
その相手は、どんな人なんだろう。
どんなふうに笑って。
どんなふうに話して。
おんりーの、あの優しい顔を引き出すんだろう。
想像しただけで。
なぜか、胸の奥がざわついた。
「……なんやろ、これ」
おらふくんは、首を傾げた。
まだ、その気持ちに名前はついていなかった。
でも。
確かに、何かが変わり始めていた。
コメント
1件
もう…切なすぎますね😢💔 おんりーが必死に花を隠す姿と、おらふくんの「心配してる」「友達やん」っていう優しい言葉のギャップが、胸に刺さりました。特に「言えないだけ」って言葉が痛くて…。 おらふくんも徐々におんりーへの気持ちが変わり始めてる描写があって、この先どうなってしまうんだろうって、続きが気になって仕方ないです。青い勿忘草の花言葉もきっと意味があるんですよね…素敵な回でした🌷