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オーターとの共同任務で彼の意外な一面を見たレナトスは、『オーターの事をもっと知りたい』という思いを抱いた。
そして共同任務後のレナトスの行動は早かった。
レナトスは基本夜勤だが、人手不足の際には日中でも任務に呼び出される事がある。
そのためオーターと顔を合わせる事があり、その時には挨拶をかかさずし、仕事を優先するあまり食事を摂る事を疎かにしてしまいがちなオーターを強引に誘い、共に食事をするという事もあった。
オーターは初めこそレナトスの事を鬱陶しそうにしていたが、どんなに冷たくあしらっても嫌な顔一つせずめげずに話しかけてくるレナトスに次第に心を開いていき、レナトスの努力の甲斐もあって『リボルさん』呼びから『レナトス』と名前で呼ぶようになり、隣にいる事を許すまでになった。
そのオーターの変化にレナトスは大喜びした。
そして今、休憩時間を利用してレナトスはオーターの執務室に来て雑談をしていた。
雑談と言っても、主にレナトスが話しかけてそれにオーターが応えるというものであったのだが。
それでもレナトスはオーターが言葉を返してくれる事が嬉しかった。
二人が雑談していると、
ポツポツ。
サアアア。
「!」
「降ってきたな。」
雨が降ってきて執務室の窓を濡らしていく。
レナトスが話を中断し窓の外を眺めていると、オーターがポツリと呟いた。
「雨は・・・嫌いだ。」
「・・・え?」
レナトスはオーターの方へと顔を向け目を見開いた。
オーターは、レナトスが今まで見た事がないくらいに眉間に深くしわを寄せ窓の外を睨んでいた。
「オ、オーター?」
「フー。・・・すみませんが、今日のところはこれでお開きにしてくれませんか?」
オーターは窓から視線を外し、息を吐きながらカチャと眼鏡を押し上げレナトスに言った。
「あ、ああ。また今度な。」
「はい。・・・また。」
いつもと違う彼の様子にレナトスは素直に頷き、ソファから腰を上げ執務室を出た。
レナトスが出ていく間、オーターはうつむいたままで彼の方を一度も見る事はなかった。
パタン。
閉めたドアの前でレナトスは扉に背中を預けながら、ハーッと息を吐いて天をあおいだ。
(昔何かあったんだろうけど、聞いたところで何も教えてくれないよな。)
あの頑なだったオーターがやっと心を開いて隣に置いてくれようになった手前、昔雨の日に何があったのか聞けるほどの勇気が今のレナトスにはなかった。
「・・・仕事、戻るか。」
ポツリと一言呟いてレナトスは気持ちを切り替えて歩き出すのだった。
*****
『雨はオーターにとって地雷』らしいとレナトスが知った日から、雨が降り続いていた。
ザアアア。
(今日も雨か。恵みの雨もこうも降り続くと流石にまいるな。太陽が恋しくなるぜ。)
「そういやあいつ、大丈夫かな。」
レナトスの脳裏に見た事がないくらいに険しい顔をして「雨は嫌いだ。」と言ったオーターの姿がよぎる。
レナトスはガシガシと頭を掻いてから呟いた。
「休憩がてら、あいつのとこ行ってみるか。」
レナトスはオーターの下に行く事にした。