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「舞衣…。」
「鋭児郞。」
お互い抱きしめ合う。
「良かった…!!」
「なんて顔してるのよ。」
「お前こそ。」
涙を拭いあって笑う。そして先生から聞いた話や事故の時の話をした。
「爆発の衝撃で意識飛んで、鋼化解けちゃったんだ。」
呟くように舞衣は言った。
「…怖かったか??」
「わかんない。ほんとに一瞬だったから。」
と微笑む顔には少し疲れが。
「久しぶりに喋って疲れたろ。ゆっくり休んで。」
「うん、ありがとう。鋭児郞もね。」
帰りのタクシーで、八百万にお礼の連絡、上鳴と爆豪に舞衣の報告の連絡を入れた。
それから、リハビリが始まり都合が合えば切島も手伝う日々。上鳴や爆豪、八百万らもお見舞いに来てくれた。そんなある日。
「あのさ。鋭児郞。」
「ん??」
車椅子で外気浴していていると、舞衣が口を開く。
「私さ、◯ラウドに憧れてレーサーになったって話したことあったじゃん。」
「あったな。」
「それだけじゃないの。」
「他にも憧れのキャラが??」
「そうじゃなくて…。死にたかったの。」
「どうして…??」
動揺していることを悟られないように、車椅子を押し続ける。
「ごく普通の家庭で育ったし、学校生活、友達にも恵まれてた。なのに、死への思いは消えなかった。身体の傷は自傷行為でつけたようなものなの…。」
そう語る背中は悲しげだ。
「話してくれてありがとう。」
「嫌われないか、心配してた。」
「嫌いになんか、ならねーよ。」
ちょうどベンチの側まできたので、車椅子を止め、自分も座る。
「俺いま、バイクの免許取ってる最中だからわかったんだけどさ、バイクの起こしかたもそうだけど、カーブは重心のかけ所が難しくて。レースのスピードでカーブするには、スリップ覚悟で曲がらないといけないから、舞衣の身体の傷は努力の結晶でもあると思う。」
「ちょっと待って。バイクの免許とるの!?」
「え!?あ、おう!!退院まで秘密にしとこうと思ってたのに!!」
「マジか!!どんなバイクに乗りたい??」
「そりゃ、舞衣も乗れるサイドカー付きだぜ。」
「え、いいの…??」
「嫌か…??まさか、あの時のトラウマになって…??」
「違うの。私、こんな身体になったのに、一緒に…。」
切島は舞衣をお姫様抱っこする。思わず舞衣の顔は真っ赤に。
「一緒にいたい。身体が不自由とか関係ない。告白した時からいつも、舞衣のこと想ってる。」
「きっと迷惑かけるよ??」
「良いんだ。迷惑なんかじゃない。」
「…ありがとう。」
切島は、笑って頷いた。
そこの2人~無理しない!!
と看護師に言われたので照れ臭そうに謝って、病室に戻った。
退院の日。
「免許取得おめでとう。」
「そちらこそ、退院おめでとう。」
切島はサイドカーに舞衣を乗せ、出発する。
「ちょっとドライブ、付き合ってくれるか??」
「うん。」
そう言って暫く道なりに走る。
「なんか新鮮だなぁ。運転してるときは街並みみる余裕なかったけど。」
「そうだよな。なんか良さそうなお店見つけたら今度行こうな。」
「うん。」
と話しているとだんだん知ってる場所に近づく。
「このカフェ。」
「そう。さ、入ろうぜ。」
とお姫様抱っこされ入ると。
「退院おめでとう!!」
上鳴・爆豪を筆頭に初めて会った時のメンバーが声を揃えて言い、クラッカーを鳴らした。
「皆ありがとう!!」
「長旅お疲れでしょう。ここにお座りください。」
と八百万と麗日の間に座る。皆久しぶりの再会なので話題に花が咲く。高校時代の話まで話題に上がり、楽しい時間は過ぎていった。
「じゃあな。安全運転でな!!」
「わかってるよ電気。ありがとうな、皆。」
「また集まろうね!!」
「今度は、ゲーム大会にいたしましょうか??」
「それなら、とびきり面白いゲーム用意しとくね。」
「ボクらにできることなら、何でもするよ。」
「ありがとう緑谷君。その時はお願いしますね。」
「コイツ(切島)、ほんとに良い奴だから、ぜってぇ手離すなよな。」
爆豪の思いがけない言葉に2人は頬を赤くし、他は感心する。先程の言葉が台無しになるので敢えてつっこまない。
「じゃあ舞衣、行くか。」
と颯爽と走り去る姿をあとのメンバーは思い思いに見送った。
家に戻り、ソファに舞衣をおろす。
「お疲れ様」
「鋭児郞もお疲れ様。ありがとう。」
「いえいえ。」
2人でソファからの景色を眺める。
「やることいっぱいだ。」
「少しづつ、やっていこうぜ。」
「うん…。」
「舞衣…??寝た…??」
規則正しく寝息をたてる音がする。切島は起こさぬように抱き上げ、ベッドへと運ぶ。
「ん…私…。」
「少し寝てろな??なんかあったら…」
「一緒に寝て??」
「わかった…。」
絶対に、この手で舞衣を幸せに。そう誓って舞衣の額にキスを落とす、そんな夕暮れ時…。