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宿屋で決めた通り、今日はまず防具屋に向かうことにした。

その目的は、先日見つけた金貨30枚の鎧を買うためだ。


「こんにちはー」


「いらっしゃいませ! あ、先日の?」


「はい、先日はお世話になりました。

今日はあの鎧を買いに来たんですけど、まだありますか?」


「もちろん、ございますよ。

こちらはお持ち帰りになりますか? それとも装備していきますか?」


……おぉ、何だかゲームっぽい台詞が出て来たぞ。


いわゆるあの『武器や防具は装備しないと意味ないぜ!』みたいなあれ!

うわぁー、何だか感動だなぁ!


「ルーク、とりあえず試着してみる?

ほらほら、私も例の服を着るからさ」


「そうですね、それでは試着させて頂きましょう」


「すいません、買う前に試着だけしても良いですか?」


「はい! お嬢さんも着替えますか?」


「あ、お願いできます?」


「それではこちらと、あちらの試着室をご利用ください」


「ありがとうございます!

ささ、ルークも着替え、着替え!」


「はい、行ってきます」


「エミリアさんは、すいませんが少々お待ちください!」


「はーい。楽しみに待ってます!」



――10分後。


「じゃ、じゃーん♪」


ルイサさん作の『はったりをかます服』を装備した私。

うーん。やっぱりこの服を着ると、何だか気が引き締まるなぁ。


「ルークは?」


「まだ出て来てないですよ――

……あ、そろそろかな?」


エミリアさんの言葉を遮るように、ルークが試着室から出て来た。


「お待たせしました……。どうでしょうか……」


鎧を纏って照れるルークに、謎のときめきを感じてしまう。


「いいじゃない! うん、凄く格好良い!」


「本当です、見違えました!

それではルークさん、アイナさんと並んでみてください!」


「というか、私が横にいきますよ……っと。

エミリアさーん、どうですか?」


「うん! ばっちり似合ってます!

ルークさんの場違い感も、どこかに行っちゃいましたね!」


……場違い感。

それはルークを傷付けて、この鎧の購入を決定付けたフレーズだ。


「良かった……。

私のために、アイナ様に恥を掻かせるわけにはいきませんからね」


「エミリアさんもこっちに来てみてください!

三人で並んでみましょう!」


「はーい♪」


私の言葉に、エミリアさんは嬉しそうに混ざってきた。


ところで、自分たちの姿を見るには鏡に映すしかないんだけど――

……お店にある鏡は、横幅が無いんだよね。


三人でぎゅうぎゅうに詰めたような感じじゃなくて、悠然と並んだものを見てみたいんだけど……。


「もっと大きい鏡で見たいですねぇ」


「これ以上の鏡となると、私は見たことがありませんが……」


「わたしはありますけど――

……それって、王都のお城の中でしたね」


むぅ……。

鏡は普通に見掛けるけど、大きい鏡はあまり存在しないのか。

宝石屋で見た、ガラスのショーケース……みたいな立ち位置なのかな?


「あ、そうだ。

貴族のお屋敷にある場合もあるので、コンラッドさんのお屋敷にはあるかもしれませんよ?」


「でも……招かれて行った場所で、鏡の前で急に並び始めるのは……やりたくないですね」


「確かに……」


……そういえば、この世界には『写真』はあるんだっけ?

存在自体が無いと、また意味不明なことを言ってると思われちゃうんだけど――


「ところで、『写真』……って分かります?」


「はい? 分かりますけど、写真がどうかしましたか?」


お、この世界には写真があるんだ。


「折角だし、撮れるものなら撮っておきませんか?」


写真を撮れば今日の記念にもなるし、客観的にどう見えるのかっていうのも分かるからね。


「アイナ様。この街にも撮影をしてくれるところはありますが……大丈夫ですか?」


「え? 何が?」


「撮影代って、金貨1枚くらい掛かりますよ」


「えっ? 高いんだね!?」


「「えっ?」」


……あああああっ!?

またこのパターンか……っ!!


「ちなみにアイナさんの生まれたところでは、いくらくらいで撮影できるんですか?」


えぇっと……ちゃんとしたところで撮影したのなんて、成人式のときは置いておいて、就職活動のとき……以来かな?

確かそのときは、3千円くらい……だったっけ?


「えぇっと……。

銀貨3枚……くらい?」


「かなり安いですね……」

「さすが、アイナさんの生まれたところは発展していますね……」


実際は、簡単な写真であればスマホとコンビニだけでプリント出来ちゃうんだけど……。

そうすると、もっと安く仕上がることになるのか……。


……それはそれとして、この世界で写真を撮るなら金貨1枚なのか。

ダイアモンド原石が金貨60枚で売れたから、別に払えはするけど……さて、どうしたものか。


「あの、お客様」


「あ、はい! 何でしょう!」


「写真をお求めでしたら、実は当店でも準備中なんです。

納得いくものが撮れるかはお約束できませんが、それでもよろしければお撮りしますよ」


「え! 本当ですか!?」


「ええ、ノークレームでお願いできれば」


「はい、お願いしたいです!」


「かしこまりました。

それでは申し訳ないのですが、お会計だけ先にお願いいたします」


「分かりました、準備しますね」



えーっと……、金貨30枚、金貨30枚……っと。

自分のお財布と、依頼の報酬を入れている皮袋だけだと……結構足りないかな。


でもこうしてみると、今見ているお金が、三人で稼いできたものなんだなぁ……。


……うーん。


「ねぇ、ルーク。

お金、ちょっと貸してくれない?」


「え? 構いませんが……。

今朝、ジェラードから受け取っていませんでしたか?」


「ああ、あれはねぇ……何ていうか、ズルみたいな稼ぎ方だったでしょ?

今回は、できればそれ以外のお金で払いたいな……って、思っちゃって」


「はぁ」


「うーんとね、折角だから、ズルして稼いだお金じゃなくて、みんなで貯めたお金で払いたいなって、そう思ったの」


私も少し分からない感じになっているので、ルークはさらに分からない感じかもしれない。

お金を持っているのに、借りるわけなのだから。


「……はい、何となく分かりました。

私の理解が及んでいるのか自信がありませんが、つまり例のお金には手を付けたくない……ということですね」


「そうそう!

まぁ、宿屋とかの支払いでは普通に使うけど」


それに、ルークに借りる時点で少しアレなんだけどね……。

何というか、自己満足というか、潔癖というか――


……何なんだろう?

ルークとエミリアさんの頑張りを、この鎧の購入に充てていきたい……っていうのかな。


「それで、いくらお渡しすれば良いですか?」


「えっとね――」


……残金を提示すると、ルークがぎりぎり出せる金額だった。


「ごめんね! すぐ返すから!」


「特に使い道もありませんので、いつでも大丈夫ですよ」



……その後、支払いを済ませてから、その流れで写真を撮ってもらった。

ルークがやけに緊張していたけど、それで笑いが起きたあとは……みんな、良い笑顔で笑えていたかな。

異世界冒険録~神器のアルケミスト~

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