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あの日以来、涼ちゃんはベッドの奥で丸くなったまま、
もう顔を出さなくなってしまった。
カーテン越しに話しかけても、
返事はなく、シーツの中でじっと静かに震えている涼ちゃん。
恐怖と悲しみ、そして誰にも言えない苦しさが胸を占めていた。
食事の時間になっても、
𓏸𓏸がやってきて優しく、けれどどこか必死な声で呼びかける。
「涼ちゃん……お願い、少しでいいから……」
何の反応もない涼ちゃん。
その小さな背中を見て、𓏸𓏸は泣きそうな気持ちで看護師に助けを求めた。
「ご飯がどうしても口から食べられないなら、せめて栄養だけでも……チューブ、お願いできますか……」
看護師は一瞬だけ迷ったあと、
𓏸𓏸と目を合わせてうなずいた。
「わかったよ、喉からのチューブ食……やってみよう。
本当に涼ちゃんの気持ちが苦しかったら、すぐやめるからね」
ベッドに身を沈めたままの涼ちゃんに、看護師がやさしく話しかける。
「涼ちゃん、今日はこれで栄養を入れようね。
無理はしないから、嫌だったら言ってね」
でも、涼ちゃんはもう何も言わなかった。
ただ目線を落とし、表情も浮かべず、抵抗する素振りすら見せなかった。
喉に冷たいチューブが入る苦しささえ――
何かを諦めきったように、
静かに全部受け入れているようだった。
𓏸𓏸はそっと涼ちゃんの手を握りしめ、
「ごめんね、本当にごめんね」と
何度も心の中でつぶやき続けていた。
看護師が作業を終えると、
ただ淡々とした沈黙が部屋に満ちていた。
(これでよかったのかな……
でも、どうしたら――
涼ちゃんはまた笑ってくれるんだろう……)