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空の独り言
01 Prologue
『ひとりぼっちじゃないって、すごく嬉しいんだね。』
今思えばなぜ私はあそこで弱気になった彼女をはげまさなっかたのか。
理由はわかってる。
そのころの自分が彼女を励ませるような一つや二つの言葉を私は知らなかった。
『結局最後まで泣いてくれなかったね。』
彼女は私の方を見て不満そうに笑った。
なんで笑っていられるか。それすらも当時の私は知らなかった。
『ねえ、もしさ。私が死んだら、泣いてくれる?』
彼女の手を握ったまま、私は否定も肯定もしなかった。
『ほんと、そう言うところだよ。』
呆れたような顔でこっちを見てきて、私が見た中で1番の笑顔を見せてくれた。
『でも、私。ななっしーと友達になれて本当によかったなぁ!』
それが、私の見てきた中で1番の笑顔で。
その日が、それが、最後の日になるなんて、わかってたら。
もうちょっと、もうちょっと。
泣けてたのにな。
今日はやけにうるさい蝉の音で目覚めた。
ジメジメとした湿気が、体に張り付いて、夏の始まりを感じる。
「夢、か。」
晴れでもない雨でもない微妙な天気が私の心を表していた。
カーテンを開けると灰色な雲が空を覆い尽くしていた。
「とうとう空も灰になったか。」
彼女のように呟くと、誰もいない部屋に私の重い声が響いた。
今年も夏がやってきました。