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#ファンタジー
柘榴とAI

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#ファンタジー
成瀬りん
19,622
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『ヴェルダクレス大陸 マーメイドサイド地方』に『水の迷宮』が誕生しました。
『世界の記憶』に登録されました。
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……それはある日、突然頭の中に聞こえてきた。
まわりの皆は当然驚いていたが、しかしこんなことも3回目だ。
『神器アゼルラディア』に『疫病の迷宮』。そして今回の『水の迷宮』――
前の2回のときに比べれば、そこまで|大事《おおごと》のようには思えなかった。
まぁ、国やお偉いさんにとっては、やっぱり|大事《おおごと》のようだったけどな。
「リーダー! 何をぼーっとしてるの?」
俺に話し掛けてきたのは、俺のパーティ――|紅蓮の月光《クリムゾン・ムーン》の魔法使い、マリモだ。
いつも俺のことを気に掛けてくれて、細かいフォローをしてくれる。
今だって、俺の様子が少しおかしいから……という些細な理由で話し掛けてきてくれたんだ。
……そうそう。俺の名前は、リーダー。
このパーティでの役割もリーダーだが、名前もそのままリーダーだ。
ややこしいとよく言われるが、生まれてからずっと付き合っている、大切な名前なんだぜ?
「……ん? ああ、最近いろいろ大変だなぁ……って、思ってさ」
「まぁ、ねぇ……。
でもこの辺りって、王都の近くよりかなりマシじゃない?」
「……確かに、な」
俺とマリモが話しているところへ、槍使いのナガラと魔法使いのメンヒルが加わってきた。
「まったくだよなー。ここら辺、メシが美味いもんな。
やっぱり冒険者には、メシが大切だぜ!!」
「ナガラさんはそればっかりですね!」
「俺は昔から変わらないんだよっ!
そういうメンヒルこそ、言葉遣いがずいぶん変わっちまったよなぁ……」
「ふふふ♪ 憧れの人の、真似なんですけどね♪」
……そういえばメンヒルのやつ、ある日を境に突然口調が変わったんだよな。
以前はマリモと同じような喋り方で、俺やナガラが何かをやっちまったときは、ダブルで攻められて参ったものだった。
しかし今は性格もずいぶん穏やかになって、実は少しだけ惹かれている俺もいたりするんだが……。
まぁ、告白とかそういうのでは全然ないんだけど。
「――それにしても、『あの子』がねぇ……」
話が途切れたとき、マリモがふとそんなことを呟いた。
「まったくだよな……。
俺、最初耳を疑ったもん。……いや、頭を疑ったというか?」
「あはは。頭に直接聞こえてきましたからね、あの声は」
あの子――
……俺たちが王都ヴェセルブルクで偶然出会った少女。
話したのは少しだったけど、何故だか印象深かったんだよな。
そのあと、しばらくしてから突然、王国から指名手配をされたんだっけ。
さすがにあれはびっくりしたけど、そのこと自体を忘れそうになっていた頃、風の噂が聞こえてきたんだ。
――あの子が、辺境都市クレントスのさらに向こうで、街を作っている。
正直、かなり気になったなぁ。
俺もナガラもマリモも、そしてあの子に惹きつけられていたメンヒルも。
でも、誰も何も言わなかった。
雑談にはちょこちょこ登場してきたものの、だからといって、それだけで辺境まで行こうだなんてヤツはいなかった。
……それもそうだ。俺たちには、金が無い。
Dランク冒険者からまだまだ抜け出せていない俺たちが、金の当てもなく、辺境都市の向こう側になんて、気軽に行けるわけもない。
しかしそんなときに、『水の迷宮』が誕生した。
それも、あの子が街を作っている近くに……。
以前、同じように誕生した『疫病の迷宮』は、結局誰も見つけることができなかったらしい。
……いや、詳しくは知られていないが、実際には調査に向かった兵士や冒険者たちが全滅していた……という話のようだった。
『疫病の迷宮』とは何だったのか?
それは有識者が大いに議論をして、何の結論も見出せないでいた。
頭の良い連中でそれなんだから、きっと俺には……理解の及ばないことなんだろうな。
……おっと、話がずいぶん脱線してしまった。
話を戻すと、俺たちは『新しい迷宮で、スタートダッシュで儲けよう!!』ということで、海洋都市マーメイドサイトに向かっているところなんだ。
ふふっ。どんな冒険が待ち構えているか、今から楽しみだなぁ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――あ! リーダー、街が見えてきたよ!!」
「おぉー……。あれがあの子の作った街、かぁ……。
『海洋都市』って割には小さいけど、普通の街としては……まぁ、普通かな?」
「でもあの街って、作り始めてからまだ1年なんですよね!?
1年であの大きさって、凄くないですか!?」
「確かにそうだよな……。
メンヒルは好意的に物事を見過ぎだけど、それでもあの街の速さはやべぇよ」
あまり真面目なことを言わないナガラまでもが、何やら真面目に言っている。
俺も街の発展スピードについては詳しくないが、きっと凄いことなんだろう。
何も無いところから作ったんだよな? いや、凄いよな!
引き続きしばらく歩いて、俺たちが街門の前まで行くと、一人の兵士が明るく声を掛けてきた。
「海洋都市マーメイドサイドへようこそ!
まだ街壁はありませんが、あちらの街門からお入りください!」
「ありがとうございます。
……あの、身分証明はしないで良いんですか?」
「はい、それは街の中で受け付けておりますので、ご安心ください。
ただ、この門を通るときにはご注意くださいね。魔女様の試練がありますから」
「は、はぁ……」
兵士に見送られ、俺たちは街門の中に入って行った。
街門……とは言っても、結構な長さがある。まるでちょっとしたトンネルのようだ。
「……魔女、かぁ……。
そういえば私、この街に入るときには魔女の試練がある……って聞いたことがあるわ」
「おいおい、そういうことは先に言えよ!!」
マリモのいまさらな言葉に、ナガラが速攻で噛みついた。
……正直ここは、ナガラの方を支持したいかな、俺は。
「まぁまぁ……。
それで、試練って何でしょうね? 何かと戦うんでしょうか」
「私の聞いた話によれば、試練に耐えられずに精神を壊した……なんて人もいるそうよ」
「おいおい! それこそ早く言えよ!?」
マリモのさらなる言葉に、ナガラが再び噛みついた。
……確かにその通りだ。俺は明確に、ナガラの方を支持することにした。
しかしまだDランク冒険者とはいえ、俺たちの間には強固な絆がある。
この絆さえあれば、多少の試練なんて軽く打ち砕いて見せるさ。
……俺がそんなことを思った瞬間――
――ゾ……ゾワワワワワワッ!!!!!!!
「ッ!?」
「うおっ!?」
「ひゃ!?」
「うみゃ!!?」
俺の背中に――いや、身体中に、強烈な悪寒が走った。
驚いて辺りを見るが、特におかしなものは何も見えない。
俺の視界に入ったのは、俺と同じく身体を強張らせながら、辺りを必死に探る仲間だけだった。
「な、何だ、これ……」
「うおぉ……。冗談じゃねぇ……、すげぇプレッシャーだ……」
「うぅ……、ごめん……。私……、何だか……。うぇっ、うえぇ~ん……」
「怖い……、怖いよぉ……」
何も無いはずなのに、周囲は恐怖、違和、不安で包まれた。
こんなものを食らっては、確かに精神を壊す人間もきっといるだろう。
これが試練だというのなら、確かにそれは納得できるものがある――
……まるでこの街に入ることを拒絶するような、そんな気配。
しかしこの街は日々発展しているのだ。
当然、冒険者のように力を持たない人間だって、たくさんいるだろう。
俺たちはこんな試練ごときに負けても良いのか?
……答えは『否』だ。
「――みんな、これはただの試練だ。
別にここで取って食われるわけじゃない。
……だから、行こう。気を張れッ!!!!」
「お、おう……!」
「そ、そうよね……。みんな……、街の人だって、通ってるんだもんね……?
うん、行こう……!」
「ふえぇ……。が、頑張ります……!!」
俺は震える脚を何度も叩き、四人の先頭に立って歩き始めた。
開き直ってしまえば、この程度の気配なんて……何とか、なる。
……一歩一歩確実に進んでいけば、出口はすぐそこなんだ。
――それにしても、この街には何があるんだ……?
こんな試練を課すだなんて、一体何の目的が……?
コメント
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おお…「試練」のプレッシャー描写がめちゃくちゃゾクゾクしました…! リーダーたちの掛け合いもいいですね、ナガラとマリモの軽妙なやりとりが好きです。それでいて“あの子”の影がちらつくところが、連載480話の厚みを感じさせます。新章の始まりっぽくてワクワクしました🌙