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「新藤さん、お久しぶりです! その節は、色々お世話になりました」
翌日。ソファーが来たので、異例の壁紙使いのモデルハウス紹介として新藤さんが三階部分を撮影しに自宅にやって来たため、玄関先で彼の姿を見た光貴が嬉しそうに招き入れた。
三階部分の撮影がメインだというのに、久々に会う新藤さんと光貴は目的を忘れてリビングで音楽雑談をしながら盛り上がっていた。二人が楽しそうにしているのを見るのは、なんとも複雑な気分になる。
話は光貴のサファイアとしての活動が中心だった。その流れで作曲についての悩みを打ち明けていた。コード進行やアレンジについて悩んでいると新藤さんに打ち明け、ギター片手にあれこれ喋っている。私には全然助けられない領域だから、光貴にとって目からうろこ状態で感激していた。悩んでいたアレンジが解決し、さあこれから――という場面で光貴のスマホのアラームが鳴った。
現在午後七時半。光貴は今日、新曲のミーティングがやまねんさんの家である。午後八時集合なので、そろそろ出発の時間となった。
「あー、もうこんな時間かぁ。新藤さんとお話するの、すごく楽しかったです。おかげで新曲のアレンジがバッチリになりそうです。次お会いできるときまでにしっかり練習しておきますね!」
「楽しみにしております」
「じゃあ、僕はもう行きますので、三階しっかり撮影してくださいね。ソファーがもう、めっちゃいい感じでなので!」
「承知いたしました」
「では、よろしくお願いします!」
光貴はギターを背に抱えて慌ただしく自宅を出発した。
今日は新曲のミーティングだけなので帰りは早い。そのことは新藤さんに伝えてある。
新藤さんと二人きりになってしまい、リビングに静寂が訪れた。
光貴がいなくなってしまった途端、私はこの新築マイホームで裏切り者の顔を出す。
最低だ。いつかそのうち天罰が下り、地獄に堕ちる。
「なあ。そんな所に突っ立ってないでさ、三階案内してくれよ」
新藤さんが仮面を脱ぎ捨てた。もう新藤さんじゃない。
私が先頭に立って三階に彼を案内した。
「今日の律のミニスカート姿、かわいいな。脱がす時間が惜しいからすぐできるようにしとけよ、って言った俺のいいつけをしっかり守ってくれたんや」
普段私は滅多にスカートを履かない。今日この恰好は新藤さんからのリクエスト…というより命令だ。
三階に足を踏み入れた途端、ぐっと抱きしめられて唇を奪われた。
もう、私はどこまでも堕ちていく。
光貴に合わせる顔がないと言いながらも、
あなたを裏切り続ける外道だから。
罪に溺れて息ができなくなって、
そのまま泡になって、誰の目にも触れないようにこの世から消え去ればいいのに――