業務を終えた夜。
更衣室から出てきた華は、廊下で律の背中を見つけて思わず声をかけた。
「……あの、律さん」
振り返った律の瞳は、いつも通り落ち着いている。
「お疲れさまです、桜坂さん」
「お疲れさまです! ……あの、その……」
華は胸の前で両手を握りしめ、言葉を探すように一拍置いた。
「た、たまには……飲みに行きませんか?」
律は少し驚いたように瞬きをする。
普段なら自分から誘うことのない華の真剣な顔に、短い沈黙が落ちた。
「……飲みに、ですか」
「はい。律さんと……行きたいです」
勢いで言い切った自分に気づき、華の頬は真っ赤に染まる。
律はふっと息をつき、口元にわずかな笑みを浮かべた。
「……いいですよ」
その一言に、華の胸がぱっと熱くなる。
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