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臣桜
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BrownSugar
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#オフィスラブ
猫塚ルイ

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その日私は
普段通りに家を出た
普段通り最寄り駅へ向かい
普段通りの電車に乗り
いつもと違う駅で降りた
そこで
タクシーを拾い
タクシーに乗り
約束の待ち合わせ場所に向かう
タクシーで向かうことは
リュカから言われていた
しかし
鈴木さんが後を尾けていた一件以来
過剰に人の目を気にしてしまう
結果
まるで尾行を撒くが如く
念入りに経路を選定し
リュカとの待ち合わせ場所に向かった
「おはよう!」
「おはようございます!」
待ち合わせの時刻の少し前に到着
待ち合わせ場所には既にリュカの姿があった
「大丈夫だったかな……」
「何が?」
「ほら、先日尾行されてたって」
「あぁ~、あれね……」
「あれは恐らく、たまたま見かけて尾けて来ただけだと思う」
「あの匂いが近くに居れば気付くから」
「あの時以外は気配すら感じたことないから大丈夫だよ」
勘が良く
嗅覚も鋭い
人狼リュカの明確な言葉に
ほっと胸を撫で下ろす
しかし
彼と居るとき以外は
依然として注意が必要
そう感じる私は
人間不信にでも陥っているのだろうか
「朝食は?」
「いえ、食べてません」
「じゃあどこかで軽く食べてから行こうか」
「さすがにこの時間じゃ早すぎて迷惑だろうし」
そう言って
道中目についたファミレスで
タクシーを止め
タクシーを降りた
「結局ファミレスなんですね」
「ん~この時間だからね……選択肢ないでしょ?」
「カフェかファミレスくらい?」
「いつもファミレスですよね」
「飲み物の選択肢多いから今の瑠奈にはこっちの方が良いかなって」
「お気遣いありがとうございます」
たまにはリュカとデート気分を味わいたい
たまには洒落たお店にも一緒に行きたい
たまにそう頭を過ることがある
でも
今がその時ではないのもわかる
この先
ずっとリュカと一緒に居ることが出来たなら
そんな時間は無限にある
その時の為の今
そう自分に言い聞かせ
今すべきことの為に集中する
***
「鈴木さん?あぁ……」
私は
先日伊藤さんから聞いた話を尋ねてみた
私は
怪メッセージを送りつけられている身
正直気味が悪いが
不思議と鈴木さんに対しては
そこまで露骨な嫌悪感はなかった
だが
純也の処遇と今後にリンクしている以上
純也からは直接話して貰えない以上
件の状況は知っておきたい
「懲戒解雇みたいだね……」
「かなり重い処罰だけど、事の被害と影響を考えると致し方ないかな」
「続けて損害賠償請求の方向で動いてるみたいだけど……」
「どこまで請求するかはまだ決まってないと思う」
さすがは情報屋というべきか
ほぼ伊藤さんの話通りだった
「それは相手取引先側担当者の処分も同様ですか?」
「他社のことはさすがにわからないよ」
「守秘義務もあるし、社内規定に沿って処分が下るんじゃないかな」
「ただ……損害を請求される可能性は十分あると思う」
やはり……
調査や聞き取りを受けている当の本人が
何をしでかしたのか
調査がどう進捗しているのか
一番よくわかっているはずだ
純也も自身の未来をそう察しているのだろう
それ故に
私の収入を当てに離婚を拒んでいるのだろう
「被害は当該取引先以外の他社にも及んでる」
「本来正当に選考されるべき機会が不当に失われたのだからね」
「うちとしても再選定の上で再発注、そして再投資」
「当該の収入開始時期がズレ込む分、時間的にも回収が遅れ、財務的にも小さくない影響が出る」
「そして社内の工数もさることながら、調査には外部機関も使ってる」
「本件が落ち着いた後も、チェック体制や規則の見直しと更なる改善もしなければならない」
「金銭的な実害に留めておくのか、実際に及んだ範囲まで広げて算出するのか」
「そこは今、現在進行形で関係部署が揉んでいるところだろう」
いずれにせよ
損害賠償請求ともなれば
貯金のない純也の未来は
たちまち窮地に陥るだろう
少し可哀想な気もするが……
ここで情に流されるわけにはいかない
「示談で済めばそれで終わるけど……請求額に対して支払い能力があるかどうか」
「示談が成立しなければ、損害賠償請求の民事訴訟を起こす事になる」
「そうなれば、場合によっては差押えとかもあり得るかもな」
情に流されるわけにはいかない
情に流されるわけにはいかない
わかっていても
流されそうになる
リュカの言う通り
決断はいつも辛い
今ならその言葉の意味がよく解る
目的を見失わずに
情に流されず
どれだけ不憫に感じようとも
無情との誹りを受けようとも
私は
情に流されるわけにはいかない
そして
私は
冷徹に正しい判断をしなければならない
コメント
1件
第92話読み終えたわ……「情に流されるわけにはいかない」って心の中で何度も繰り返す主人公の強さと脆さが生々しくて、胸にくるものがあった。リュカとの朝のやり取りの穏やかさと、その後の重い現実のギャップが効いてるな。純也の末路を理性的に受け入れようとしても、どこかで引っかかる感じ、すごく共感した。次が気になる🔥