テラーノベル
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「示談で済めばそれで終わるけど……請求額に対して支払い能力があるかどうか」
「示談が成立しなければ、損害賠償請求の民事訴訟を起こす事になる」
「そうなれば、場合によっては差押えもあり得る」
情に流されるわけにはいかない
わかっていても
流されそうになる
辛く過酷な決断
それでも
純也には純也の未来があるように
私には私の見据える未来がある
お腹の子にも未来がある
純也のしでかしたことは自業自得
そう割り切って
目的を見失わずに
無情であろうとも
私は
冷徹に正しい判断をしなければならない
リュカはこれまで
この件に関しては興味が薄く見えた
リュカからしてみれば
社内で起きた
いち不祥事にすぎないのだろう
私はそう思っていた
だがこの日
本件について
まるで独り言のように
珍しくその胸中を明かした
「この件、実は俺にとっても対岸の火事ではなくて」
「ほら、俺が就任して経営陣が新体制になって、これまで改革を進めてきただろ?」
「俺らは特に力を入れてコンプライアンス順守を強化してきた」
「その矢先に発覚した不祥事がこれ」
「ステークスホルダーに向けて公にするか否かの問題もある」
「そうなれば新体制の責任を問われるかもしれない」
「コンプライアンスを強化したことで、これまで埋もれていた不正が炙り出せたとも言える」
「だが、新経営陣に不満のある勢力は、これ見よがしに新体制下故に起きた事態だと煽るだろう」
「まさに社内政治の格好の種になり得るんだよな」
私の前では
いつも飄々としていて
どこか天然にも映るリュカ
そこに冷徹な社長の面影はない
私にとって
社長というのはレッテルでしかなかった
頭ではわかっているが
リュカはうちの会社のトップ
社長として社長の勤めを日々こなしている
臣桜
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BrownSugar
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#オフィスラブ
猫塚ルイ

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209
社長には社長の
リュカ目線の世界線があるのだと
まるで他人事のように
茫然と聞き入ってしまった
「おっと、ごめんごめん、話逸れたね」
「まあ、鈴木さん?の件は今のところはそんな感じかな」
「で、本題はこれから会いに行く瑠奈のお母さんのことだよな」
そうだった
私が鈴木さんの不正の件を振ったことで
話が本題から逸れてしまった
私たちは
これから母を訪ねる
母親には
たまにの休みなので
いつも振り込んでいる仕送りを
渡すがてらに会いに行くとだけ伝えてある
離婚届けの証人のことも
リュカを同伴することも
一切伝えていない
「仕送りを渡しに行くとしか伝えてなくて」
「なるほど……じゃあ俺が居たらビックリするだろうな」
「お母さんの性格からいってどんな展開になると思う?」
私にも読めない
それが正直なところだった
母は感情の振れ幅が大きく
性格も感情も一定ではない
長年共に暮らし
育ててもらっておきながら
母を理解できない自分を痛感して
少し悲しくなる
「正直読めない……かな」
「たぶん、母親は仕送りのお金が欲しいだけ」
「それに支障がなければ私の離婚には興味なさそうだけど……」
そう
母の人物像から察すると
以前リュカが推察した通りだった
だが
性格も感情も一定ではない
その時の気分次第では荒れもする
それだけに
どんな反応をするのか全く読めない
「なるほど……了解」
「じゃあまあ、出たとこ勝負だな」
「臨機応変に柔軟に対応しよう」
「俺のことは何て存在にしておく?」
「……」
全く以て
最適解が一体何なのか
皆目見当がつかなかった
友人?
友人を何故連れて来るのだろう
別れてこの人と一緒になる?
離婚前からそんな話は
不適切ではなかろうか
不謹慎極まりないと感じるかもしれない
「……じゃあ取り敢えず友人にしておこう」
「一緒に出掛けるついでに立ち寄ったってことで」
「……」
本当にそれで大丈夫だろうか?
私には分からなかった
だけど
何より頼りになるリュカがそう言うのであれば
その後どう転ぼうとも対処できる出方なのだろう
そう勝手に解釈し
私はその意見を否定しなかった
「じゃあ、そろそろ向かおうか!」
「ちょっと用事あるから銀行だけ寄らせて」
気付けばお昼前
私たちはタクシーを呼び
タクシーが到着すると
レストランを後にした
途中デパートに立ち寄り
母の好みに合わせて
母の好きなものを私が選んだ
上品なお弁当と
高級な和菓子をリュカが買ってくれた
そして
リュカの用事で
しばし銀行に立ち寄ると
私たちは
待たせていたタクシーを再び走らせ
一路母が待つ実家へと向かった
コメント
1件
みぅ🤍🥀です〜! 第93話、読んだよ…。 主人公とリュカ、お互いに背負ってるものがありすぎて、会話の一つ一つが重くて切なかった。 特にリュカの「俺にとっても対岸の火事ではなくて」っていう本音がぽろっと出た瞬間、すごくリアルで胸にきた。普段の天然な雰囲気とのギャップがたまらん…。 そしてお母さんに会いに行くシーン、どんな反応が返ってくるのか怖くてドキドキした。続きが気になる〜!