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その後、俺はクロコダイルの付き人として過ごすことになった。事務処理もやる。だが大抵のことは副社長であるニコ・ロビン、もといミス・オールサンデー1人で事足りるのだ。
「まさかこんな再会の仕方するとは思いませんでしたね」
「えぇそうね。私も驚いたわ」
俺は書類に目を通しながら、向かい側でコーヒーを飲むロビンに話しかけた。彼女は優雅に微笑む。
「それにしてもあなたの淹れるコーヒーは美味しいわね、エメリヒ」
「本当ですか? あなたに言われるとちょっと、いや、大分嬉しいですね。あ、オールサンデー、ここにサイン貰っても?」
俺が書類を差し出すと、彼女はそこにさらりとサインをする。そして、また一口、カップに口をつけた。俺はそんな彼女を横目に見ながら、再び書類に目を通す。
「ねぇ、1つ聞いてもいいかしら?」
「なんでもどうぞ」
「あなたのその狐のお面、ずっと付けているけれど、お気に入りなのかしら?」
「…そうですね。東の海の小さな骨董屋で手に入れたものです。俺はあんまり顔を明かすのが少々苦手なので」
「あらあら、ふふ。わかったわ。誰にだってそういうものくらいあるものね。いつか見せてくれる?」
「えぇ、そのうち」
彼女の言葉に、濁して答える。ロビンは悪い人じゃないしな、近いうちに顔は晒すことになると思う。
にしても、買っといてよかったなぁ。顔隠しの仮面。手配書とともに俺の顔がバーンッて出ちゃったら凸ってきそうな奴が何人かいるからなぁ~~。隠しておくのが一番いいのよ。
「あ、経済新聞俺用に取っといてって言ったやつ、取っておいてくれました?」
俺が訪ねると、ロビンは小さく首を縦に振った。さっすが~~!! 出来る女は違うぜ~~~~!!!
俺が内心でそんなことを思っているとは露知らず、ロビンは俺に質問を投げかける。
「どうしてわざわざ1部取っておいて欲しかったの?」
「え? あー、スクラップブックにするんですよ。子供のころからの趣味なんです」
「そうなのね。素敵な趣味だわ」
「えへへ、ありがとうございます」
俺が小さく笑うと、彼女のハナハナの実で咲いた手が俺の髪を優しく撫でた。
「俺の髪に何かついていました?」
「糸くずがね」
「そうですか。ありがとうございます、ミス・オールサンデー」
「…………」
「オールサンデー?」
「あなたは怖がらないのね。私の能力のことを」
「…? 怖がる要素がどこに……? ミス・オールサンデーは、ミス・オールサンデーでしょう? あなたが優しい人だってことは分かりきったことなので、万が一にも怖がることなんてありませんよ」
俺がキョトンとしながらそんな言葉を返すと、彼女は小さく笑みを浮かべた。
「…ふふ。おかしな人」
「え、俺おかしいです?」
「えぇ。とても」
ロビンは小さく笑みを浮かべたまま、立ち上がる。クロコダイルのところに行くらしい。
「いってらっしゃい」
「…いってきます」
俺は小さく手を振りながら彼女を見送った。