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修学旅行二日目、今日は一日中班での自由行動だ。
沢渡の班は大谷を含めて男子3人女子4人の7人班だ。
午前中は海辺の方へ行っていた。
海に来たが海水浴ではなく、裸足で遊ぶくらいだ。
沢渡以外の班員はまるで青春の1ページのようにはしゃいでいた。
沢渡は海洋恐怖症なので少し離れた場所で班員を見守っていた。
しかし、沢渡はずっと座っているうちに喉が渇き始めた。
近くに自販機があったことを思い出し、買いに行くために立ち上がる。
「飲み物買ってくるー。」
「りょーかーい。」
沢渡が班員達に向かって呼びかけると大谷が返事をした。
海に着いてから20分ほど経っている。
あんなに動いて疲れないのかと沢渡は大谷達を背に歩き出す。
沢渡は自販機のところまで行き、飲み物を見るが何がいいのか分からなくなる。
沢渡は優柔不断で買い物などをすると、いろいろな事を考えてしまい長い時間その場に留まってしまう。
今回も例に漏れず立ち止まっていると後ろから声が聞こえた。
「俺先に買ってもいい?」
沢渡は驚き、声のする方に顔を向けると同級生の姿があった。
「びっくりした。」
沢渡の後ろにいたのは同じクラスの小泉瞬哉(こいずみ しゅんや)だった。
黒髪でキリッとした顔立ち、身長182cmと見るからに男前の小泉。
男女問わず仲がよく、運動神経も抜群なので部活の助っ人によく呼ばれている。
小泉達の班も今は海に来ているらしい。
よく見れば他の班もいることに沢渡は気づく。
「さわりょう達も海来てたんだ。」
「そ、俺は海苦手だから入ってないけど。」
さわりょうというのは沢渡の事である。
同じクラスに同じ名前がいるので、分けるために大谷がつけたあだ名だ。
小泉は話している間にジュースを買い終える。
その横で沢渡は未だに迷っている。
「………決まってないの?」
「どれがいいのか分からなくて…。」
沢渡は自販機とにらめっこを続けている。
「……さわりょう炭酸苦手?」
「炭酸?飲めなくはないけど…。」
沢渡が答えると小泉が自販機に再びお金を入れる。
そして、先程小泉が買った炭酸ジュースをもう一本買い、沢渡に渡す。
「はい。」
「…え、は?どういうこと?」
「何飲むか決まってないんだよね?」
「そうだけど…。」
「あげる、これ俺のオススメだから飲んでみてよ。」
小泉はそういうと自分の班のところへ走って戻った。
「あ、ちょ!~っありがと!」
沢渡は走る小泉に向かって叫ぶ。
小泉は振り返り手を振った。
「………あれはモテるわ。」
沢渡も大谷達のところへ戻った。
戻ると大谷達は海から出て砂浜に座っていた。
さすがにずっと動いているのは疲れるのだろう。
「あ、おかえりー。」
「ただいまー。うわっ!すっぱ!!」
沢渡は「ただいま」と言いながら小泉から貰ったジュースを飲む。
しかし、それは想像を絶する酸っぱさだった。
その酸っぱさから沢渡の顔が中心に集まり、変な顔になった。
「うっわー!さわりょう顔やっば!」
「なにこれ!?まじですっぱいんだけど!」
ペットボトルのラベルには『超すっぱい!レモンジュース』と書かれていた。
午後からもそのジュースを少しずつ飲むがすっぱ過ぎて飲み切る事は出来なかった。
そして二日目も無事に終わり最終日に入った。
最終日は首里城に行ってから空港に行く。
首里城でも何事もなく終了し、空港に行くまでにお土産を見る時間がもうけられた。
「沢渡ー、僕先に行ってるから。」
「ほーい。」
沢渡はお土産の前で固まっている。
バスに戻る時間が近づいている中、沢渡はお土産を買うか迷っていた。
それに慣れた神代は先にバスへ戻った。
「どうしよう…。レジ並んでるし時間かかるよな。そうしたらバス遅れるかも…。」
沢渡はうーんうーんと悩んでいた。
そこに再び聞いたことある声が後ろから聞こえた。
「さわりょう?…また悩んでんの?」
「うわ!小泉!驚かせんなよ…。」
「それなに?シーサーの置物?買うの?」
「買いたいけど、レジが並んでてバス遅れるかもだからやめようと思ってる。」
「でも、買いたいんでしょ。ずっと突っ立てるってことは。」
小泉がニヤニヤしながら沢渡を見る。
沢渡は図星を突かれ居心地の悪そうな顔をする。
「あ、これ美味しそう…。」
「このパイ?あー、確かに。」
「…………。」
小池は目を輝かせてパイを見つめている。
「……欲しい?」
「……うん。」
「じゃあシーサー買うついでに買ってきてやるよ。」
「え!まじ?ありがと、後で金渡すわ。」
「いいよ、ジュースのお礼。」
そういうと沢渡はシーサーとパイを持ってレジに並ぶ。
沢渡の横に小池も並ぶ。
「いや、先バス行ってろよ。遅れるぞ。」
「一人より二人で遅れた方が強くね?」
「どういう事だよ。」
沢渡が笑うと小池もつられて笑っていた。
バスの方へ行くと案の定、先生が待っていた。
バスの中へ入るとほとんどの生徒が座っていた。
入ってすぐの席が一つ空いていたが女子が座っている。
しかも後ろに座っている女子が「来たよ」と耳打ちしている。
「小泉くん、ここ席空いてるよ。一緒に座らない?」
女子は小泉を指名した。
小泉は「あー。」となにやら渋っている。
沢渡はそんな小泉の横を通り過ぎて他にも席が空いていないか探す。
神代と大谷は違うクラスなのでバスが違う。
適当に空いている席に座ろうとすると、小泉が沢渡を呼んだ。
「さわりょう!空いてる席ある?」
「は?あー、うん。」
「ごめん。俺、沢渡と座る約束してて。」
「そ、そっか。なら仕方ないね。」
小泉は沢渡のところまで行き、二人席に座る。
「おい、約束なんてしてないだろ。いいのかよ。」
「空港まで寝たいんだよ。女子といると話さないといけないだろ。」
「はー?」
小泉と沢渡は小さな声で話す。