そういえば、まふゆって顔がいいんだな、と隣でまふゆの顔を見ながら思う。本当に整っている。これで化粧をしていない、なんて。恨みたくなる。
「じっと私の顔を見て、どうしたの?」
「いや、別に。ただムカつくってだけ」
「何が?」
「……まふゆの顔が良いから」
何故こんなことを言わねばならないのだ。ちょっともやもやする。
ふと、加工したまふゆの顔も見てみたいと思った。興味本位で、どれだけ変わるか。また、今の時代、うさぎとか猫とか動物の耳のようなものをつけた加工なんて簡単にできる。まふゆ本体に堂々と付けることはできないが、加工という形なら見ることができるのではないか。
「ねえちょっと、写真撮ろうよ」
「どうして?」
「いいから、ほら撮ろ?」
「……」
スマホを構えると、渋々まふゆは入りに来てくれた。
うさぎの耳と鼻がつくやつを選んだので、顔を認識するとそれがついた。するとにこりと笑うまふゆ。反射的にそれを押す私。
「えっ!?」
「何?」
「まふゆの笑顔……え……」
「作り笑顔だよ?」
「まさかしてくれるなんて……ねえ、これSNSにあげていい?」
「いいけど。……うん、いいよ」
凄く不思議そうな顔で返事をしてくるまふゆ。
いや、だってだって、まさか笑ってくれるとは思わないから、ちょっとうれしいんだよね。
コメントに笑顔になってくれるなんて、っと。驚きの顔文字とか付けてタグも沢山つけて投稿しちゃお。
「ねえ、これから沢山写真撮らない?」
「好きにしたら?」
「やった! え、じゃあ今度の休みどこかに行こうよ!」
「いいよ」
「やった〜」
どこに行こうかな、まふゆの服とか買っちゃうのとか良いんじゃないかな。うん、ちょっと楽しみ。
そうやって話している間ピコンピコンと鳴り続ける通知音。まふゆの写真を載せたからだろう。
「絵名、さっきから通知が凄いね」
「まふゆが出たからだと思うよ。顔いいし」
私以外を褒めるようなファンのコメントはあまり見たくないが、気になるので確認はしておく。
いいねの初動の勢いはとてもいい。まふゆの顔を出しただけでこんなに反響があるものか。コメントはまふゆを褒めるようなものから……あれ。
『カーディガン変わったと思ったけど、その子とお揃いだったんだね』
『この子、恋人限定のパンケーキ一緒に食べに行ってた子じゃない? 制服とカーディガンが同じ』
『もしかして、本当に付き合ってる?』
やけに多い反響、いいね、コメント、まふゆの顔が良いだけではない。また別の理由、
「これって、炎上?」
「『俺のえななんが……』」
「こ、こういうのって消したほうがいいのかな」
「わからない……」
取り敢えず消して、友達だって弁解しておこう。
──後日、消したことで余計に怪しまれるようになった。
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