船を降り、そこにあったのはどこにまでも続く銀世界だった。そこからは雪上車に乗り、私たちはゆったりと揺られた。
「ああ、進めば進むほど人類の文明から遠ざかっていく。ここには本当に手付かずの自然しかない。まさに神の聖域だ。かつてエベレストを初めて登った先人たちもここまで不安じゃなかっただろうな。」
K2さんが独り言を漏らす。
神の聖域。その言葉にあの紙を思い出す。白い世界が続いたあの世界での唯一の神。創造神。神様は私に何をさせたいのだろう。全てが思い通りのはずのあの、神が。なぜ私に。
顔を上げれば、いつの間にか、天にまで貫きそうなほどの山脈が。
どうやら雪上車で来れるのはここまでのようだ、ここからは犬ぞりで標高4000mまであげるらしい。
「犬の扱いは俺に任せておけ、家で20頭近く飼っているからな。犬の扱いは慣れているんだ。」
「ほう、それは頼もしい。」
コージーさんが自信満々にいい、真現さんが見直したように言う。
私は荷物を乗せようと、ソリへ近づく。
「ワンッ!ヴヴヴヴヴ〜!」
その後も私を警戒するように吠える。
「なんだ。随分と嫌われているじゃないか。」
「もしかして…何かしましたか…?」
青空さんと子守さんが覗き込んでいう。
「何かした覚えはないんですが…」
困ったように苦笑いを浮かべる間も私を威嚇するよう吠える。
「おい!もうお前は荷物を運ぶな!後からそっと乗り込んでこい!」
苛立ったようにコージーさんに言われる。
了解しました。と言い、荷物を運び終わった頃に犬に気取られぬよう乗りこむ。
どうせ匂いやらなんやらで気づかれているだろうが、吠えられなかったので問題はない。
ソリで標高3000mを達した時。
「ワンッ!ワンワンッ!!」
犬たちが唸り声を狂気山脈に向かい上げ、立ち止まる。
どうしたと見てみれば、どうやら足がすくんでいるらしい。
そして私ではなく、山脈に向かって吠え続ける。
「おぉい!犬ども!進め!なんだお前ら、俺の言うことが聞けねぇのか!おい!」
コージーさんが苛立ちを露わにして声を上げる。
「どうしたのかしら。」
「おい。かわいそうだ、そんなに強くあたるなよ…!」
青空さんは犬好きだったようで、犬たちを撫でながらコージーさんに文句を言う。
「おい。犬の分際でふざけやがって!はよ進め!」
「犬の分際でよぉ!ご主人様の言うこと聞いてればいいんだよ!」
檻山さんが言うとコージーさんもそれに乗る。
檻山さんは犬嫌い、かぁ。






