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慌てて前線に視線を戻したズィナミの強化された瞳には、先程まで調子良くモンスターをぶっ飛ばしていたレイブ&ペトラが居た辺りと、少し離れた場所にこんもりと盛り上がったモンスターの山が映っていた。
三つの山は互いに少しづつ近付いて行き、程無く合体すると一際大きなモンスター山へと拡大変化したのである。
ズィナミ学院長とシエル女史は顔を見合わせて言葉を交わしあう。
「行ってくるわね、肌トラブル、いいえシエル、後は頼んだわ!」
「お任せ下さい! 戻っていらしたらゆっくりお話しましょう、頑張って下さい」
「行くよパリーグ!」
『ガオー!』
素早く飛び乗ったズィナミを背に、壁を飛び降りてモンスター山に一直線、恐れの欠片も見せずに向かうキャス・パリーグ。
魔術師達の指揮を任されたシエルは自らの肌が荒れることはおろか、口角に生じた小じわが深まる事さえも厭わずに壁の下、更に下方の地面に向かって大声で告げる。
「アンタも行ってカゲト! ズィナミやレイブ達を守って頂戴っ!」
地の底から気楽な声が響いて返る。
『アイアイサー! 任せとけい!』
「頼んだわよ…… 若作りのババ、学院長……」
レイブは死に掛けていた。
ついさっきまでは非常に上手く行っていた筈である。
押し寄せるモンスターを次々と行動不能にし続けていたのだ。
先行するペトラの勢いは正に猪突猛進、自分より大型のモンスターをも軽く吹き飛ばし、後続するレイブはそれらの脚部に一撃入れては離脱、へし折っては移動、を繰り返すだけの簡単なお仕事だったのだが……
状況は一瞬で豹変したのである。
切欠になったのはペトラの突進が止まった事であった。
信じられない事だが、大型のモンスター達が十数頭、協力してペトラに組み付き、足を絡め尻尾を引っ張りスクラムと気持ちを一つに歩みを止めさせてしまったのである。
通常、ウルフ系のモンスター以外が共闘する事などありえない。
有るとすれば協力しなければそれぞれのモンスターが絶命する、そんな場面で必要に応じて即席パーティーを結成した場合位なのだが……
レイブ達が如何に暴れまわろうとも、押し寄せるモンスター全てを行動不能にさせる事など出来はしないのだ。
であれば、直接被害を受けていない周辺のモンスター達は、彼等を避けて別の方向へと潰走する筈だとレイブもペトラも考えていたのである。
突進を止められたペトラは、あっ、と言う間にモンスターの山の中に姿を消してしまった。
驚愕の表情でその様に瞳を奪われたレイブもまた、飛び掛ってきたモンスター達に押しつぶされるように倒れ込み、動く事が出来なくなってしまっていたのである。