テラーノベル
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父と私をバカと言った池田の方がバカに違いない。
低俗なことを言うだけ言って帰って行った池田の言葉は屈辱的なものばかりだったけれど、敵を知るためにきちんと分析しなければいけない、と考えて、その後の仕事中ずっと考えていた。
結果、池田の調べたのが私のことだけで、事件から遥香へ結びついていないことは不幸中の幸いと言えると思う。
ただ、こうやってどこからか計画というのは狂う可能性があるのだとも思い知った。
毎晩、最後にキッチンを片付けるのは広瀬さん、第一家事室を片付けるのは私。
その第一家事室を整えたあと綺麗に手を洗いながら、撮りためたたくさんの証拠を世に出す準備を開始すると決意した。
そして、身だしなみをチェックするためにある姿見に向かって、にっこりと口角を上げてみる。
……笑顔がひきつっているかな……
池田のせいよ……遥香の荷物持ちよりも、お尻を触り愛人発言をした池田のせいよ…今日はね。
男が女性に対してこういう言動を取ると、私たち家族の運命を狂わせた遥香への感情と男へも同じレベルの感情が一気に湧きあがる。
ここへ来た時には想像出来なかったことが起こっているけれど、遥香と冤罪事件が結びついていないことは
「最悪の状況ではない…大丈夫」
と鏡の中の自分に言い聞かせてから第一家事室の電気を消して部屋を出た。
「お疲れ様でした」
「篤久様……えっと…まだ御用がありましたら……」
家事室のドアのすぐ横に立っていたのは篤久様で、何か仕事があるのかと綺麗な顔を見上げた。
「疑問や不思議に思うことがあって調べた」
「……何のことでしょうか?」
表情を変えない篤久様からも
“調べた”
という言葉を聞いて、私のこととは聞いていないのにドキッとする。
「単刀直入に聞く。悪いようにはしない。イエスかノーで答えて」
「悪いようにはしない……って……悪いことを聞かれる前置きですよね?」
私のことか……
バカな池田よりも、頭のいい篤久様の方が手ごわいに決まっている。
なんだろう……
私は不安になりながらも、池田はバカで腐っているようにしか目に映らないけど、篤久様は素敵な人にしか見えないのは不思議だな、とまだ1ミリも変化しない篤久様の顔を見ていた。
「悪いことを聞くという気持ちはない。ただ事実、真実を聞きたいだけ」
どういう言葉で言われたって、私に拒否権はない。
私は何も答えることは出来なかったけれど、小さく頷いた。
「真奈美さんが中園にいるのは、あれの冤罪事件に関係がありますか?」
「……」
ほら……池田と篤久様の違いはこれ……手ごわい相手だわ。
「イエスでもノーでも、俺はどちらでも構わない。ただ知らなかった事実を知ったから確かめているだけ」
「知らなかった事実……?」
「あれが中園になる前に冤罪事件に関わっていたことは、今まで知らなかった」
コメント
6件
ほんとそこだよね。調べたって上部だけのあれの男と篤久様の違い。全てに直結してると思うわ。 真奈美ちゃんはどう答える?そして真実を知った篤久様は動くのか!
篤久様が味方になってくれたらええのになぁ…🥹
イエスと言いたいところだけど…篤久様の真意がわからない今は迂闊に返事はできないよね😣本当に味方になってくれれば、、、🙏🙏🙏