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妖刀鬼神丸〜蛇骨長屋戦闘記

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妖刀鬼神丸〜蛇骨長屋戦闘記

62 - 第62話ルナ浅草の奥山で居合い抜きを見る

2025年10月16日

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ルナ浅草の奥山で居合い抜きを見る

ルナ浅草奥山で居合い抜きを見る


一刻後、ベアト一行の姿は浅草広小路にあった。猿若町にある市村座に十三代中村屋の勧進帳を観に行く予定だが、その前にルナやローラの為に浅草寺に参詣しようという事になったからだ。

「ふふ・・・さっきの相撲小屋面白かったわね」志麻がさも可笑しそうに思い出し笑いを堪えている。

「志麻、面白がっている場合じゃねぇぞ、どう考えたってありゃ仕組まれた事だ」

「そうだな、電昇竜は明らかにベアトの正体を暴こうとしていた」

「松金屋さんを襲った連中の一味かしら?」

「儂に因縁をつけてきた職人風の男はそうじゃろう。小屋の外でやろうとして失敗したものじゃから電昇竜を上手く丸め込んで公衆の面前でベアトの頭巾を剥ごうとした」

「まったく、手の込んだ事をしやがる」

「じゃが、さすがに真昼間から襲ってくることは無さそうじゃな」

「まぁ、何を仕掛けてくるか分からねぇから気は抜けねぇが・・・」

「とにかく、次は芝居見物ね。人の多い所だから気を付けなくっちゃ」

「ああ、そうだな・・・だが、それはそれとして・・・」一刀斎が慈心を睨んだ。「爺さん、さっき懐に入れた物を出しな」

「な、何の事じゃ?」

「惚けるんじゃねぇ、土俵に置いてあった一両の事だよ。ありゃ、勝負に勝ったベアトのものだ」

「えっ、お爺ちゃんそんな事してたの、見損なったわ!」

「くっ、見ておったのか、まったく油断のならぬ奴じゃ」

「お前ぇに言われたかねぇよ、さ、出せ、相撲に勝った記念にベアトに返してやんな」

「ちっ、仕方あるまい」

慈心は渋々懐中から一両を取り出してベアトに渡す。ベアトはそれを受け取ると慈心の顔をマジマジと見返した。

「ジシンサン、アナタ、ナニヲシタノデスカ?」

「な、何って・・・決してネコババしようとしたのでは無いぞ、信じてくれ断じてその様な事は・・・」

しどろもどろに言い訳を繰り返す。

「ナゼ、アノオオオトコ、アンナニカンタンニトンデイッタ?」

「ああ、その事か・・・」慈心はホッとしたように胸を撫で下ろす。

「柔じゃ」

「ヤワラ?」

「まぁ、一般には体術の事を指すようじゃが、本来は心術の事よ」

「シンジュツ?」

「和気やわらぎ中和の術と言ってな、相手の勢気を静気で中和するのじゃ」

「???」

「と言っても分からぬじゃろうの。人は防御能力に不安があると攻撃的にならざるを得ない。じゃが防御が完璧なら他人を攻撃する必要は無い。これを養うのに体術が適しておるから柔術をやわらと言ったりするのじゃが、日本の武術は須すべからく戈止ほこどめの技と言って平和の技なんじゃよ」

「オオ!ナンダカワカリマセンガ、ニホンブジュツミステリアス&ファンタスティック!」

ベアトは一人で興奮して喜んでいる。

「爺さん、うまく誤魔化したな」一刀斎が耳元で囁いた。

「ああ、あの技を教えろと言われても困るからな」

「まぁ、ベアトにとっちゃ一両なんて端金なんだろうが、爺さんの技の方が余程思い出に残ったっていう事かも知れねぇな」

「もう、あんな無茶はやめて欲しいもんじゃよ」

「まったくだ・・・」

一刀斎がうんざりした顔で言った時、ルナが前方を指差して訊いた。

「シマ、アレハナニ?」

「ああ、あれは浅草寺の総門、俗に言う雷門ね」

突然ルナが駆け出したので、志麻は慌てて後を追った。足の悪い振りをしなければならないので大変だ。

「ナンテカイテアル?」今度は赤い提灯を見上げて訊く。

「かみなり、って書いてあるのよ」

「カミナリ?ナニ?」

「え〜と・・・」

「サンダーノコトヨ」ローラが側に来て説明してくれた。

「ナゼ、サンダーカイテアル?」

「え〜とね、正式には『風雷神門』と言って、風の神様と雷の神様の門という意味ね」

「カミサマ、ドコイル?」

「ほら、見て」志麻が門の左右を交互に指差した。「右が風神様で左が雷神様よ」

提灯に気を取られていたのだろう、今気付いたというようにルナの目が大きく見開かれた。

「ワォ!グレート!」

「ぐ、ぐれ・・・?」

「オオキイッテオドロイテルワ」今度は志麻に通訳してくれる。

「そ、そう・・・おっきいでしょルナ?」

「オッキイ!」

やっと江戸歩きにも慣れて来たのか、子供らしい本性が現れ始めた。志麻もなんだか楽しくなる。

「ルナ、お菓子買いに行こうか?」

「オカシ!ルナスキ!」

「ローラさん、いい?」志麻がローラに訊いた。

「ヨロシクオネガイシマス」御高祖頭巾の奥の目が柔和に笑っている。

「よし、ルナ行こう!」

志麻がルナの手を引いて提灯の下を潜り、仲見世通りに入って行った。

「志麻のやつ楽しそうだな」

「妹が出来たようで嬉しいのじゃろう」

「さて、見失わねぇように俺たちも後を追おうじゃねぇか」

「うむ、そうしよう」


*******


仲見世通りの両側には、土産物屋、玩具屋、駄菓子屋が軒を連ねていた。横浜の居留地には無い風景だ。

何度か浅草に足を運んだ事のある志麻には見慣れた景色だが、ルナは眼を輝かせてあっちの店こっちの店と飛び回っている。 志麻はともすれば雑踏に紛れて見失いそうな小さな背中を追いかけて、離れないように後を追った。幸い大人達は床台に並ぶ商品に夢中で、ルナの碧い眼に気付く者は居ない。

一瞬ルナを見失って慌てて辺りを見回したら、色とりどりの鞠のような飴の前で釘付けになっていた。

「ルナ、飴欲しいの?」志麻は訊いてみた。

ルナは恥ずかしそうにコクンと頷いた。

店のおばちゃんに飴を袋に入れてもらいルナに手渡すと、一つ頬張って嬉しそうに志麻を見上げた。

「美味しい?」

ルナはからくり人形のように何度も首を上下させる。

「志麻、本堂でお詣りするぞ」一刀斎が追いついて来て言った。

「は〜い」

仲見世を過ぎると、前方に立派な朱塗りの楼門が見える。仁王門だ。

「アッ!カミナリノカミサマガイル!」ルナが叫んだ。

「あれは仁王様よ」

「オカオ、コワ〜イ!」

「そう、恐〜い顔で悪魔を追い払ってくれているのよ」

「フ〜ン・・・ニホン、カミサマタクサン・・・」

「そう、その辺の木や石にも神様は宿っているわ」

「ワルイヒトカラ、ルナマモッテクレル?」

「ええ、必ず守ってくれるわ」

「ダッタラ、アンシン!」

ルナはホッとしたように息を吐いた。

仁王門を潜り本堂でお参りした後、東の随身門から出て猿若町の市村座に向かう事になった。

だが、ルナは本堂の西側の賑やかさが気になって仕方がない。

「ネエ、アッチニハナニガアルノ?」

「ああ、奥山ね。あっちには見せ物小屋があるわね」

「ミセモノゴヤ?」

「そう、軽技の曲芸や珍しい動物の見せ物、ああ、お化け屋敷もあるわよ」

「ソレナニ?」

「サーカス、ズウ、スリラハウス・・・」ローラがルナの耳元に囁いた。

ルナの眼がキラリと光る。

「ルナ、カブキヨリ、ソッチガイイ!」

「ルナ、ワガママイワナイデ。セッカクマツガネヤサンガチケットトッテクレテルノニ・・・」

「イヤ、ルナイッテキナサイ」ベアトがローラの言葉を遮った。

「アナタ・・・」

「ローラ、オトナノツゴウヲコドモニオシツケテハイケナイ。ルナニハジブンガヤリタイコトヲヤラセルベキダ」

「デモ・・・」

「ローラさん、敵の狙いはベアト氏じゃ、我々と離れていた方が安全かも知れんぞ」

「待て慈心、敵はさっきお前ぇの腕を見ちまった。矛先を女子供に変える事は十分にあり得る」

「ではどうする、ルナの願いを無碍にするのか?」

「そりゃお前ぇ、命の方が大切だろうが」

「待って一刀斎、でもそれじゃあベアトさんを満足させるって言う目的が果たせない、そうなれば松金屋さんの商売も終わり」

「ソノトオリデス、シマサン。ワタシハテキニオビエテジユウヲウバワレルノハナットクデキナイ」

「私がルナを守る。私はルナに、江戸を思い切り楽しんでもらいたいの」

「そうだな、子供に歌舞伎は退屈かも知れねぇな・・・」

「デモ、シマサンハオンナデス、モシオソワレタラ・・・」ローラが不安げに呟いた。

「志麻の腕は儂が保証する、大抵の事では志麻が遅れをとる事は無い」

「ローラ、『カワイイコニハタビヲサセヨ』トイウニホンノコトワザガアルノシッテルカ?」

ローラは観念したように目を伏せた。

「ワカリマシタ、アナタガソコマデオッシャルノナラ・・・」

「ゴメンネママ、ルナ・・・」

「イイノヨ、ママモルナニ、ヤリタイコトヲアキラメルヒトニ、ナッテホシクナイカラ」

「ローラさん、ルナは私が必ず守ります・・・命に変えても」

「シマサン、ルナヲヨロシクオネガイシマス」


*******


一刀斎たちと別れた志麻は、ルナと一緒に浅草寺裏手の奥山に向かった。

「ルナ、何が見たい?」

ルナは珍しそうに辺りを見回していたが、人だかりのある一角を指差して。「アレハナニ?」と訊いた。

志麻は見せ物小屋に掛かる絵看板と幟の文字を読んで。「ああ、あれは駱駝の見せ物ね」と答える。

「ラクダ?」

「そう、背中に瘤のある、そうね・・・馬に似た怪獣」

「カイジュウ?」

「そう、みんなそう言ってるわ。日本には居ない怪しい獣」

「ミタイ!」

「じゃあ、行ってみようか!」

大勢の人の列に並び木戸銭を払って中に入ると、人熱ひといきれに混じってムッと獣の匂いが鼻を突いた。背の低いルナの為に人を掻き分けて前に出ると、書割を配した舞台の上に駱駝が立っていた。志麻は初めて目にする駱駝の姿にアッ!と息を呑んだがルナはさほど驚きもしなかった。

駱駝は二頭で、説明によると夫婦であるらしい。

唐人の格好をした芸人たちが楽器をかき鳴らし、ちょっとした芸を披露しようと頑張っているのだが、駱駝は我関せずと餌を喰んでいる。

それでも観客たちは文句も言わず熱心に見入っていた。

「ああ、これで夫婦円満、家内安全間違いなしだ」

「家に駱駝の絵を貼っておくと子供が麻疹はしかに罹らねぇらしいぜ」

「雷も駱駝を怖がって落ちてこないってよ」

「駱駝のおしっこからは有難てぇ仙薬ができるそうだ」

どうやら、ご利益を求めて駱駝を見に来ているらしい。

ルナが志麻の袖を引いた。

「シマ、デヨ・・・」

「何で?今入って来たばかりじゃない?」

「アレシッテル、ニホンクルマエ、ミタコトアル」

どうやらイギリスの動物園で見たらしい。

「そっか、イギリスではそんなに珍しくないのか」

「クニデハ、キャメルイッテル」

「きゃめる、ね・・・よし、次行こ!」

またもや人を掻き分けて小屋の外に出た。

「さて次は・・・」

「アッ!アレオモシロソウ!」

ルナが西参道の一角を指差した。小屋ではなく通りに筵を引いて前に縄が張ってある。

「あれは・・・」

確か慈心が時々副業としてやっている仕事だ。志麻も一度手伝った事がある。

「居合い抜きじゃない・・・」

「イアイヌキ?」

「そう、日本の武術の一つなんだけど、技を見せて丸薬や歯磨きを売るの」

「ミテミタイ!」

「いいけど・・・」

志麻としては内情が分かっているだけに、気が進まない。

「イキマショ!」

ルナはそんな志麻に構わず、小走りに駆けて行く。

「しょうがないわねぇ・・・」


「さぁさぁお立ち会い、ご用とお急ぎでない方はゆっくりとお聞きあれ!」

聞き覚えのある口上が聞こえて来た。行ってみると何に使うのか風呂桶が置いてある。慈心の時とは道具立てが違っているようだ。

「鐘一つ売れぬ日もなし都かな、遠出山越し笠のうち、物のあや色あいろと利方りかた、利方がわからぬ山寺のぉ・・・」

筵の上で派手な陣羽織を着て顎鬚を生やした熊のような侍が、腰に五尺の大太刀を佩はいて辺りを睥睨している。

「さてお立ち会い、かの牛若丸源義経は投げ上げた柳の枝を、十と三つに斬り分けたという。これから某それがしがそれを超えて見せよう!」

ワッと声が上がる。

「どなたかこの柳の枝を、上に放り上げてくださらぬか?」そう言って見物衆を見回した。「おっ、そこのお腰元・・・」

髭の侍が志麻を指差した。

「えっ、私?」

腰元と言われて一瞬誰のことかと迷ったが、そうか、今日は腰元に化けているんだっけ、と気が付いた。

「そうそう、儂が合図をしたら、これを儂の頭上三尺のところに投げてくだされ」

有無を言わさず、柳の枝を投げて寄越す。

「なんで私が・・・」

「シマ、ヤッテ!オモシロソウ!」

ルナが目を輝かせている。

「もう、仕方ないわねぇ」

一度やった事があるので要領は心得ている。右手に枝を持って身構えた。

「いつでもいいわよ!」

髭の侍が太刀の柄に手を掛けて腰を落とした。

「今だ、投げてくだされ!」

柳の枝が志麻の手を離れて、髭侍の頭上に舞った。

それを髭侍が抜く手も見せぬ早技で、掬い斬りに斬り上げる。

枝は斬る度に舞い上がり、落ちて来た所を髭侍に斬られてまた舞い上がる。それを幾度と無く繰り返し髭侍が鞘に太刀を納めた時には十四の枝の切れ端が地面に落ちて散らばっていた。

見物衆からどよめきが上がった。ルナも目を丸くして手を叩いている。

「スゴイ、スゴイ!」

「やるじゃない、慈心のお爺ちゃんより凄いかも・・・」

志麻も感心して感じ入っている。

「さぁてお立ち会い。驚くのはまだ早うござる!」

髭侍は筵の横に置いてある風呂桶を指差した。

「儂は今からこの大太刀を腰に佩いたまま風呂桶に入る。出て来た時に見事太刀が抜けていたならお慰み!」

「無理だろ、そんな狭い所で刀なんか抜ける訳がねぇ!」

「よしなよしな、恥を掻くのが落ちだぜ!」

見物衆から野次が飛ぶ。

髭侍がニヤリと笑った。

「さてお腰元、お名前はなんと言われる?」

「え、し、志麻だけど・・・」

「志麻殿か、良いお名前じゃ」

「あ、ありがとう・・・」

「では志麻殿、儂が風呂桶に入ったら蓋を閉めてくだされ」

いつの間にか良いように使われている。

「分かったわ、ここまで来たら最後まで付き合うわよ」

志麻は張られた縄の下を潜って風呂桶の横に立った。

「それは有難い」

髭侍は当然のように言って、風呂桶に身を沈めた。

「閉めてくだされ!」

志麻が蓋を被せると見物衆が急に静かになった。皆息を潜めて風呂桶を見つめている。

ルナもジッと成り行きを見守っていた。

時折、鐺こじりや柄頭が木桶に当たる音が聞こえるが、風呂桶の横に立っている志麻にだけしか聞こえない程の微かな音だ。

「良いぞ、開けてくだされ!」

志麻が蓋を取ると、髭侍の頭がひょっこりと現れた。勿体ぶってまだ立ち上がらない。

風呂桶の中を見て志麻がアッと小さく声を上げた。

「どうした、抜けなかったのか!」

「さっさと立ちやがれ、江戸っ子は気が短ぇんだよ!」

「勿体ぶってんじゃねぇや!」

またもや野次や罵声が飛び交っている。

「さて、勿体ぶっている訳ではござらん。だが、儂も商売、ただと言う訳には参らぬ」

「じゃあどうすりゃ良いんだよ!」

「今日の売り物は、越中富山の反魂丹。これを買ってくれるお方のみ、前の方にお集まり願おう」

半信半疑ながら、結果を知りたい者がゾロゾロと縄の前に集まって来る。買わない者は背後に押されて髭侍の姿を見る事は出来ない。

「では、志麻さん。そこの反魂丹と引き換えに、お客様から二十文づつ集めてくだされ」

「ええっ、そんな事までやらせるの!」

「最後まで付き合うと言うたではないか?」

「くっ・・・言わなきゃ良かった」

「シマ、テツダウ!」

いつの間にかルナが傍に立っていた。

「え、でも・・・」

「ルナモ、ドウナッタカシリタイカラ」

「そう、じゃあなるべく目を伏せて、これを持ってついて来て」

志麻はルナに集金用の笊を持たせ、自分は反魂丹を抱えて見物衆の間を回った。

「では、お立ち会い!」

全部集め終わるのを見届けると、髭侍が抜き身を掲げてスックと立ち上がった。どよめきと歓声が同時に沸き起こる。

「すげぇ!どうやって抜いたんだ!」

「あんな狭ぇところで・・・どう考えたって、無理だろう、じゃねぇか・・・?」

「わかんねぇ・・・」

「だが、良いもん見せて貰ったぜ!」

「二十文じゃ安いってもんよ!」

「ありがとよ、また来るぜ!」

見物衆は満足げに言って、次の見せ物を見る為に立ち去って行った。

「ありがとうござった。お陰で店じまいができるでござる」髭侍が二人に礼を言った。

「ドウヤッテヌイタノ?」思わずルナが訊いていた。志麻があわててルナの口を押さえたが後の祭りである。

「おや、お嬢ちゃんは・・・」

「お願い内緒にして、手伝ってあげたんだからそれくらい良いでしょう」志麻が髭侍を睨んだ。

「あはは、いやいや、やけに色の白い娘っ子だと思っただけでござる」

「そう、ならいいけど・・・」

「お嬢ちゃん、どうやって抜いたか教えてあげたいが、これはなかなか口には出来ぬ」

「ナゼ?」

「う〜む、困ったな・・・」

「私、聞いた事があるわ、居合の達人は身体中の関節を精妙に動かして、どんな狭いところでも刀を抜く事が出来るって。もしそうなら、あなたは相当な達人ね」

「あはは、お褒めに預かり光栄でござる。まぁ、そんなところにしておこうか」

髭侍は膝を折ってルナの目の高さに合わせた。

「お嬢ちゃん、秘密は明かせぬがこれは売り物だが今日のお礼だ」

そう言ってルナの手に反魂丹を握らせた。

「アリガトウ・・・」

「ここには妙な奴らも集まって来る、気をつけて行くんだよ」

髭侍は意味ありげに言うと、立ち上がって関わりを避けるように筵を片付け始めた。




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