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診療所の窓から見える夜空は、ようやく雨が止んでいた。薄い月が浮かび、空気には火薬の匂いがまだ残っている。
ベッドの端に座るいるまは、包帯の上からジャケットを羽織り、銃を腰に差した。
もう迷いはなかった。
🎼🌸「……本気で行くの?」
🎼📢「あぁ。
もうこの街にいたら、お前も狙われる。
“マフィアの犬”としての俺は、ここで終わりにする」
いるまの声は静かだった。
けれど、その瞳の奥には燃えるような決意が見えた。
🎼🌸「俺も行く」
🎼📢「ダメだ。危ねぇ」
🎼🌸「危ないのは、いるまのほうでしょ。
俺を置いてくなら、ここで叫ぶから」
その言葉に、いるまは思わず小さく吹き出す。
唇の端を上げ、いつもの皮肉交じりの笑みを浮かべた。
🎼📢「……お前、ほんとめんどくせぇ」
🎼🌸「知ってる」
ほんの一瞬、笑い合う。
だが次の瞬間、外で車のエンジン音が響いた。
いるまは即座にらんの腕を掴み、低い声で囁く。
🎼📢「来た。……走るぞ」
二人は裏口から外へ飛び出した。
夜の街は、雨で濡れたアスファルトが光を反射している。
遠くから、黒塗りの車が数台、ゆっくりと近づいてきた。
🎼🌸「あれ……組織の……?」
🎼📢「あぁ。もう完全にマークされてる。
でも――今回は逃げねぇ」
いるまは手榴弾を投げ、瞬間、爆音と光が辺りを包んだ。
その隙に、らんの手を掴んで走る。
🎼📢「こっちだ!」
🎼🌸「はぁっ……はぁっ……!」
冷たい風が頬を切る。
息が切れても、らんは手を離さなかった。
むしろ、力を込めて握り返した。
🎼🌸「……いるま、怖くないの?」
🎼📢「怖ぇよ」
🎼🌸「じゃあ、なんで笑ってるの」
🎼📢「お前が隣にいるから。
俺、今やっと……生きてる気がする」
その言葉に、らんの胸が熱くなった。
彼は走りながら、ふといるまの横顔を見た。
血の跡がまだ消えない頬に、月の光が淡く差し込む。
🎼🌸「……いるま。
もし全部終わったら、どこ行きたい?」
🎼📢「そうだな……
海の近くとか。人がいなくて、静かで、誰も俺らを知らねぇとこ」
🎼🌸「……いいね、それ。
朝になったら、そこに行こう」
二人の呼吸が重なり、夜を切り裂くように走り抜けた。
背後ではまだ爆発音と銃声が続いている。
でも、らんはもう振り返らなかった。
🎼🌸「……ねぇ、いるま」
🎼📢「なんだ」
🎼🌸「俺、いるまとならどこまでも行ける」
🎼📢「……覚悟、できてんだな」
🎼🌸「とっくに」
いるまは立ち止まり、息を整えると、
乱れた前髪を払ってらんを見た。
🎼📢「じゃあ、これから先は――二人で地獄を歩く」
🎼🌸「……うん。
でも、地獄でもいい。あんたとなら」
ふたりの手が、もう一度強く結ばれる。
夜風が吹き抜け、遠くの空に微かに朝の色が滲んだ。
🎼📢「行くぞ、らん」
🎼🌸「うん」
二人の影が夜の道に溶けていく。
その背中に、もう逃げるだけの弱さはなかった。