TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

テラーノベル(Teller Novel)
推しには近づくな!

推しには近づくな!

「推しには近づくな!」のメインビジュアル

7

推しの隣

♥

3

2022年09月19日

シェアするシェアする
報告する

「ショウにゃん、準備出来た?」

「うん!行こう。」

episode7

類さんの家に居座ってから3日目、病院からじーちゃんの目が覚めたとの連絡が入った。

居ても立っても居られず、学校が終わってすぐ、類さんと病院に向かった。

一応じーちゃんには、類さんのことを説明するつもりだ。でも多分あの人は驚きはしないだろうな…。


「じーちゃん…!」

病室に入り、じーちゃんの寝てる病床へ一目散に行く。

「…笑か…。」

しかし、いつもの元気は無く、老けたみたいだ。

「じーちゃん?大丈夫そ?」

「なーに、心配するな。わしはまだピチピチじゃ。」

「ははwそうだね…。もっと生きてもらわないと…。」

そうだよ。もっと、もっともっと生きてもらわないと。生きてよ。

「あ、そうだ!じーちゃんに紹介したい人がいるんだ!類さーん!」

すると、カーテンの隙間からひょっこり顔を出した。

「こんにちは。細田 類と申します。」

類さんはそっとじーちゃんに微笑みかけた。

「今一緒に暮らしてるんだ。」

「一緒に?暮らしとるだと?」

「うん!すげー面倒見てくれて、優しくて、素敵な人なんだ!!」

「…あはは…///」

じーちゃんは目線を外し、窓を見る。

「…ふんっ…そうか、若者が一体どうやってこんなやんちゃな男の面倒を見るんだ?」

「あ…」

「じーちゃん!」

「とっとと帰れ。見舞いはまた今度でいい。」

「何だよその言い方!類さんはじーちゃんのために…!」

すると類さんは俺の肩を掴み、首を横に振った。

「…私はこれで失礼します。お孫さんと二人で会話したいでしょうから。」

そう言って、どこか寂しそうに微笑む。

類さん違うんだ。じーちゃんはもっと優しくて…強くて…!

いい人なのに…。

類さんはそのまま病室を出ていく。

「…じーちゃん、何であんな言い方したんだよ。おかしいだろ。」

「…笑。」

「ん?」

「幸せか…?」

「え?」

「本当に今の状況が、お前に合っているか…?」


✾✾✾✾✾

正直、予想はしていた。

だって、今まで愛情を注いできた子が、見ず知らずの奴に奪われたんだから。

俺だったら怒り狂ってる。

よくよく考えれば、これは俺の甘えだった。ただショウにゃんに甘えて欲しくて、笑っている姿が見たくて…。

でも…

その隣に俺は居ない。

居ちゃいけない。

ショウにゃんには大切な家族がいる。そしたら、隣は大切な家族の方が良いに決まってる。

どこの誰かわからない、俺より。

でも良いんだ。ショウにゃんが笑ってくれればそれで。

だって、笑くんなんだから。


✿✿✿✿✿

「どうしたの、じーちゃん?」

じーちゃんは悲しそうな寂しそうな表情で俺に問いかけた。

何でそんな顔するんだよ。

「…親を早くに亡くして、わしと貧乏な暮らしをして、さらには家族でない人と一緒に暮す。こんな人生嫌じゃろう?」

「そんなこと…!」

「すまなかった。笑、ごめんな。」

「…何で?」


そんなことを言ってほしいんじゃない。

そんな表情をしてほしいんじゃない。

そんなことを思ってほしいんじゃない!

そんなこと…

「どうでもいいよ!!そんなこと!」


✾✾✾✾✾

ショウにゃんとおじいさんの様子を見に、病室に都戻ろうとドアに手をかけたとき、声が聞こえた。

《どうでもいいよ!!そんなこと!》

「ショウにゃん…?」

ケンカ!?早く止めないと…!

「何で決めつけるんだよ。じーちゃんはずっとそう思ってたの…?俺のこと、そういう風に見てたの?可愛そうな子だって…!」

「…!」

「幸せだったよ。すっげー幸せだった…。この日々が続くこと、じーちゃんとご飯を食べれること。全部全部、幸せだって気づいたよ!…せっかく気づけたのに、何でそんなこと言うの?」

「笑…」

「何がそんなに駄目なの?幸せだって思うことの何がだめなんだよ?!家族じゃない類さんといることがこんなに楽しいのに、幸せなのに、俺の声も聞こうとしないで、決めつけんなよ…!」

…なんだろう…全部俺に言われてるみたいだ。

決めつけてた。ショウにゃんの隣は俺じゃない方が良いって…。その方が幸せだって。

だけど…

まだ、笑くんの声を聞いてないじゃないか…!


✿✿✿✿✿

気づけば涙が出ていた。

言葉を続けて言ったせいか、息切れがする。でも、本音を言えて、スッキリした気がした。

じーちゃんと居られること。類さんと笑い合えること、全てが幸せだって伝えたかった。

…すると、じーちゃんは俺の頬に手を添えた。

「じーちゃん…?」

「お前は母さんにそっくりだ。」

「え…?」

「敵わんな…お前には」

そう言って微笑んだ。

そこには満足感で溢れていた。

そしてゆっくり腕と目が閉じた。

「じーちゃん…?」

「ショウにゃん…」

振り向くと類さんが涙を流して立っていた。

「類さん、じーちゃん、動かないんだけど…何で…?」

すると類さんは顔をクシャクシャにして目から大粒の涙を出していた。


じーちゃんが俺を呼ぶことは、もう無かった。

推しには近づくな!

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

3

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store