ずっと一緒だって言葉を、これほど恨んだことはない。
episode8
じーちゃんが死んで、もうすぐで二ヶ月が経とうとしていた。
正直、悲しいという感情よりも実感がわかない方が勝っている。
でも、日々は容赦なしに過ぎていく。尚くんとのコスプレや、類さんとの会話。
日々は待ってはくれない。
突然だったから、よくわからなかった。死因は病死で肺炎だったそうだ。
後悔後悔…ずっと後悔している。あのとき、どうしてもっと早く気づかなかったのだろう?なんであのとき、疑わなかったのだろう?
もう、辛いよ…。
消えたいよ…。
『…僕、言ったでしょ?ショウにゃんのことは、僕が守る。一人になんて、させない。』
じーちゃんが死んで、ずっと閉じこもっている俺に類さんはそう言ってくれた。
ドア越しだったけど、その声だけ鮮明に聞こえた気がした。
『おじいさんは、ショウにゃんのことが大好きで、ショウにゃんも同じくらい、好きなんでしょ?まだ…
伝わってないよ。』
まだ伝わってない。だから伝えなきゃって、幸せだよって、言わなきゃって…!
そう、思えた。
「笑くん、準備できた?」
「うん。」
そして今、尚くんを助けるため、魔法少女になっています!
「笑くんは階段で待機しててね。」
「了解。」
尚くん情報で、どうやらいじめっ子の麻衣ちゃんが尚くん家に遊びに来るらしい。
その時俺が出てくる。
ピーンポーン…
来た…!
尚くんと目を合わせ、同時に頷く。そしてドアを開けると、そこには麻衣ちゃんと…
「ショウにゃんに会えるって本当でしょうね〜?」
「うん、それは本当だけど隣の人、誰?」
きれいな黒い髪に整った顔立ち。まさに暗黒の王子とはこのことを言うのか。
「ん?ああ、付き添いよ。従兄弟。気にしないで。」
「そう…。まあ、上がってよ。」
いじめっ子を家に上がらせる勇気が凄いな…
麻衣ちゃんと従兄弟はリビングに腰を掛けるなんかあんまり乗り気じゃないな…。従兄弟に関しては寝てるんじゃね?
「で?ショウにゃんは何処にいるの?」
タイミングをミスらないこと、地声は出さないこと、振る舞いは多少女っぽくすること!
よし!
ゆっくりと階段を降りていく。俺の視界からもリビングが見えてきた。
そして麻衣ちゃんと目が合う。
「嘘…でしょ?」
目を丸くして俺を見つめる。
バレませんように!バレませんように!
心でそう何度も唱えると麻衣ちゃんは俺に抱きつく。
「え!?」
「本当にショウにゃんなんですか?!本物ですか?!」
えーっと…ショウにゃんの声は確か…昨日類さんが見てた放送を思い出せ!!
「そ、そうだよ〜…」
俺の口から出た声は、ショウにゃんとは裏腹に、甲高い声が出た。
終わった☆
麻衣ちゃんは一瞬動きが止まり、俺の顔をじーっと見る。
「ショウにゃん風邪ひいてるの?大丈夫?今日の放送できる?」
おお、めっちゃ心配するじゃん…。
「コホンッコホンッ、へ、平気だよ〜」
「ホントに…?!…じゃあ、麻衣ちゃん好きだよ。って言って下さい…!!」
なんか申し訳無いな…。俺本物じゃないし…
「麻衣ちゃん、大好きだよ。」
あああああああ!///恥ずかしいいいい!俺マジ何してんだろう?!
「キャー♥ありがとうございます!ありがとうございます!」
なんとも言えん…。
「まさか、本当にショウにゃんを連れて来られるなんてね…。まあいいわ、また遊びに来るから。」
そう言うと、俺に抱きつく。
「ショウにゃん、また来るね!配信も毎日行くから!♥」
「あ、ありがとう…。」
苦しい苦しい…。
「お邪魔しました。」
従兄弟、お前に関しては何故来た?
ジト目で従兄弟くんを見ているとふっ…と目が合う。
この人、何処かで…。
「ごめんね、笑くん…。」
あれから麻衣ちゃんは帰り、尚くんと一息ついた。
「全然いいよ。これでいじめられることはないんでしょ?」
「うん。確信はないけどね…。」
尚くんは常に優しくて、雰囲気が類さんに似ていた。だからかな、凄く落ち着く…。
「まあ、またいじめられたら言ってよ。俺で良ければ、相談だけでものるからさ。」
「ありがとう!」
すると視線をキョロキョロ動かした。
「どうかした?」
「い、いや…!その…度々で申しわけないんだけど…」
「うん。」
「こ、これからも仲良くして頂けませんか…?!」
· · ·
それだけ?
「え、それだけ?」
「え?」
「そんなの決まってんじゃん。よろしく、尚。」
「!!///」
いきなり呼び捨ては駄目だったか…?
そりゃそうか、急に馴れ馴れしくされたら気持ち悪いよな…。
「ごめんごめん💦尚くん。」
「いや、尚でいい!!尚って呼んでよ!」
俺の肩を掴み勢いよく言う。というより、言い聞かせる。
「わ、わかった…尚…。」
「うん!よろしくね!笑くん!」
「何でお前はくん付けなんだよ。」
「え、…笑…///」
少し照れながらも、どこか嬉しそうな尚だった。それを見て、俺も嬉しくなる。
初めての、友達が出来たよじーちゃん。
「ホントにいいのに…。」
「ううん。せめて送らしてよ。」
あれからすっかり夕方になり、俺は尚の家を後にすることになった。
最初は一人で帰っていたのだけれど、途中から尚が来て、送ってもらっている。
「しかし、本当に笑はショウくんに似てるよね。モデル?」
「んー…わかんないだよな…。俺のことをモデルに作られたのか、それとも偶然か…。どっちにしても怖いけどな。」
「確かに。…気を付けてね。」
「何が?」
「だって、今結構テレビに出てるでしょ?笑もそのうち狙われるかも…。」
「確かに…!怖っ。」
「何かあったら言うんだよ?!」
「わかってる。ありがと。(*^^*)」
「…///うん…。」
そういや、類さんに何の連絡もしてないな…。一応、友達の家に行くとだけ伝えてるけど。
ピコン♪
っと、噂をすれば…
〘ショウにゃん、今から迎えに行くね(*^_^*)〙
「ふふw」
〘ありがとう(*^^*)高校近くのバス停で。〙
「笑の両親?」
気づいたら尚がスマホを覗き込んでいた。
「うわっ!?」
「あ、ごめん!つい、楽しそうだったから…」
「いや、全然いいけど…。」
「仲良いんだね。」
「どうだろ…?」
尚にはまだ言わない。信頼してないわけじゃ無いけど、なんとなく、言わない方が良いと思っている。
「んじゃ、俺もうここでいいや。」
「え!?もうちょっと…!」
「でも、結構送ってもらったけど…。尚も帰った方がいいんじゃ?」
「だけど…!!そうだね…。」
「じゃあ、そういうことで、送ってくれてありがとう。また学校で(*^^*)」
「ま、待って…!」
俺が尚に背を向けようとすると、思いっきり手の袖を引っ張られる。
「うおっ!?…どうした?」
尚の顔が前髪の影でよく見えない…。
「もうちょっと…一緒にいたいって、言ったら駄目かな…?」
「…え?」
「あ!ああ!別にどうしてもってわけじゃ無くて…!!ご、ごめん!勝手なこと言って…」
尚は慌ただしく手を振る。
いや、そんな誤魔化さなくても…。
「いいよ。(*^^*)バス停まで喋ろっか。」
するとパアっと明るくなった。
本当に類さんに似てるな…w
「いいの!?やった〜」
俺にとっても初めての友達だし、もっと知ってた方が良いのかな。
「なんか、笑と居ると何もかもどうでも良くなる。なんでだろ」
「その気持ち分かる。夢中で喋ってると時間なんてすぐ過ぎるよね」
「そうなんだよ〜…だからさ、」
「ん?」
「ずっとーー…」
尚が何かを言おうとした時、俺は誰かに後ろから引き寄せられた。
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