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リフレインを歌い終わって、静まり返るホール内──
あたしの歌は、受け入れられなかったんだろうか。
今まで、アイドルのリオが歌ってきたようなポップな歌とは、
確かに違いすぎるけれど。
でも、これが本当のあたしだった。
あたしの歌いたい歌だった。
シンとする観客席へ、
「ありがとう……」
と、あたしは一言を告げた──。
それを待っていたかのように、ホールから信じられないくらいの拍手が、怒涛のように巻き起こった。
リオーーーー!
リオちゃーん!!
最高ーーっ!
ありがとうーーー!
ひとつひとつの声が、重なり、膨れ上がる、嵐のような大歓声。
この歓声を聴けただけでも、よかったと思った。
歌えたことに心から満足ができて、
あたしは、幸せだった。
「ありがとうー! みんなー!!」
あたしはもう一度、ステージ上から叫び返した。
応えるように歓声が高まり、それが静まるのを待ってから、再びマイクに向かった。
「みんな、ありがとう。
七瀬リオを、応援してくれて。
今日、あたしは誕生日を迎えて、
18歳になったよね?」
おめでとうー! と、再びたくさんの声が飛んでくる。
「ありがとうね。
だけどね、本当は、違うの」
そうして最終日の今日に、元から言うつもりで決心していた真実を、あたしは吐き出した──。
「あたし、もう21歳になったの。
3歳、ごまかしてたんだよ」
会場が一瞬にして凍りついたような空気になる。
投げかけられていた声援が、ピタリと止む──。
「ウソでしょ?」「ホントのことなの?」「信じられないんだけど」
ことの真偽をはかりかねて、ざわざわと観客たちがざわつく中、
ライブを裏で見ていたスタッフが、あわてたようにステージへ走り出てきた。
「これは、全部本当のことだから──」
マイクに向かい、続けてしゃべろうとするあたしを、スタッフがやめさせようとして、数人で羽交い絞めにする。
その腕から必死に逃れると、
「ありがとうね! みんな!
だましてて、ごめんねっ!
七瀬リオを、今まで応援してくれてありがとう!
あたし、今日で引退するから、だから、許して! みんなっ!!
今日は、自作の歌を聞いてもらえて、とってもうれしかったよ!!」
あたしは最後に、そう声を張り上げた──。