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#💛💜
愛日
1
翌日の依頼を難なくこなし、皆が特務調査局に集まったのは静岡組が帰って来た16時頃。
とりあえず、全員で話したいという事だけを伝えていた。先ずは静岡組からの報告、そして神奈川での依頼についての報告と続く。
💛「また阿部は無茶したのか」
💚「無茶ってほどじゃ……」
💙「阿部ちゃんの目の色ってさ、いっつも緑じゃん? それがもっと濃くなってく感じ? グラデーションっぽくてキレイだった」
💚「それってどの辺の色?」
タブレットの画面に、緑色の色見本がずらりと表示される。似たような色が多いけれど、その中から一つだけ、渡辺が指を差した。
💙「あ、これ。だったと思う」
💚「《碧色-へきしょく-》、だね。このへきの字でも、みどりって読むんだよ」
🖤「あ。俺も前に見たの、いつもと違った。事務所で黒い矢で狙われて、逃げてる時に見た」
💚「えっ? どれ?」
🖤「えーっと……これ」
目黒が指差したのは、いつもよりもっと白っぽい緑色。
💚「こっちは翡翠色。翡翠のすいも、これ一文字でみどり、だ……」
🩷「へぇ~。みどりっていっぱい漢字あんだね!」
💜「碧色の時は多分、電気の方の異能を使ってる時だね。阿部ちゃん、それで疲れてたんでしょ?」
💚「うん、まあ、それはあるかも」
💜「じゃあ、こっからが本題。夜中に起こった事、話して」
みんなの視線が一気に阿部に集中する。
唯一、起こった全てを把握しているのが阿部だけだから。
ふぅっと一息つく。
💚「夜中に目が覚めて、何かの気配を感じたから窓に向かったんだ。そしたら、腕を掴まれて外に投げ出されて……」
💜「13階からね」
🩷「え、13階から!?」
💚「地面に向かって引っ張られてたから、電磁浮遊で衝突は回避したよ。でも引っ張る力が強くて捕まってたら、あの女の人が来たんだ。自分の事、芙蓉って言ってた」
🧡「ふよう? 変わった名前やね」
🤍「花の名前だよ。知らないの?」
🧡「そ、そんくらい知っとるわ!」
💚「俺たちのことを知ってるみたいだった。異能特務調査局の人間に会いたくて来たって」
“特に、特異な異能を持った阿部に”という部分は省く。芙蓉の目的がわからないし、特異な異能というところで、阿部の異能について知られるわけにはいかなかったから。
💚「前に起きた事件の中に、願いに関するものがいくつかあったと思うんだけど、それらに芙蓉がかかわってたんだと思う」
💛「じゃあ、俺らの情報を調べられてたってことか」
💚「昨日は挨拶だけで、また満月の夜に会うつもり、みたいな事を言ってたけど……」
❤️「満月の夜って、あと一週間?」
💛「相手の目的がわからない状態で、一週間後に相対するのか……こっちに不利だな」
🩷「芙蓉の異能は?」
💚「わかんなかった。あの男の子の異能しか使われてなかったと思う」
💜「情報はなし、か。とりあえず、最大限の警戒を。特に、接触がありそうだった神奈川組。それと、実際に接触があった阿部ちゃん」
💚「でもあれは、俺がたまたま気付いただけで、誰でも良かったみたいだし」
💜「そうだとしても、警戒はしておくこと」
💚「……はーい」
💙「何でちょっと拗ねてんだよ」
💚「拗ねてないですぅ」
💜「その顔で言われてもねぇ」
🤍「かわいっ」
けれど異変は、確実に迫ってきていた。
翌朝、鏡の前に立った阿部は、自分の首元を見て「はぁっ」とため息をついた。
💚「また大きくなってる……」
それは顎を持ち上げられた時に芙蓉の爪が刺さってできた傷。あの時は、爪の先が少し刺さっただけで何も気にならなかったけれど、なんとなく絆創膏を貼って隠していた。けれど今はもう、絆創膏で隠せる大きさではない。それに、何だか形になっているような気がする。丸みを帯びた菱形とでもいうのだろうか。
💚「ただの、傷じゃない……?」
言うべきだろうか。けれど、何の確証もないのに、何をどう話せばいいのだろう。
💚「……ふっかに電話するかぁ」
とりあえず、電話をかけるとすぐに深澤が出る。
💜『阿部ちゃん? どうした?』
💚「ごめん。今日ちょっと休んでもいい?」
💜『いいけど。なんかあった?』
💚「まだ回復しきってないのか頭痛くて。今日、俺が担当する依頼なかったよね?」
💜『うん、大丈夫。無理しないで休んで』
💚「ありがとー」
嘘をつくのは忍びないけれど、あながち嘘でもないし、何よりこの傷を見られたら大騒ぎになりそうで嫌だった。
芙蓉につけられた傷なのだから関係していることは確定しているけれど、それでも。
とりあえず、傷が見えないようにバンダナを首に巻いて隠す。
💚「……芙蓉に関する情報、集められないんだよな……」
調べようとすると、途端に息苦しくなって電脳空間から戻って来てしまう。この傷と、何か関係があるのだろうか。いや、愚問だ。
今日はなんとか隠せたけれど、あと6日、隠しきれる筈もない。
💚「……はぁ……覚悟決めなきゃ、かな。でもその前に、俺に出来る事はしておこう」
その日まで、できうる限りの準備をしておかなければならない。
💙「電話、阿部ちゃん?」
💜「そう。休みたいんだって」
💙「え、珍し」
💜「だよね。まあ、昨日と一昨日で無茶してるから、休むって言うなら大歓迎なんだけどさ」
❤️「ホントに休んでれば、ね」
💜「そう。そこなんだよ。休めって言っても休まないからさ、阿部ちゃんは。だから舘、あとで阿部ちゃんにご飯作って持ってってあげてくれる?」
❤️「もちろん。疲労回復に良さそうな食材使うね」
満月まであと5日。
宮舘と渡辺が昼ご飯を作って持ってきてくれて、一緒に食べたのが12時頃。向井と佐久間が、コーヒーとお菓子を持ってやって来たのが15時頃。目黒とラウールが様子見に遊びに来たのが17時頃。どうせだからと一緒に夕ご飯を食べることになり、阿部は休ませる為、目黒が簡単にオムライスを作ってくれた。仕事帰りだという深澤と岩本が阿部の家に来たのが、20時頃。
次から次へとやって来るメンバーたちに苦笑を浮かべつつも、何だか嬉しさを感じていた。
岩本と深澤が帰って、お風呂に入っていた時だった。
それに気が付いたのは。
💚「……これ、なんだ?」
体の中心部に、小さな痣がある。
よくわからないけれど、昨日まではなかった筈。それにここは、芙蓉が最後に触れた場所。首だけではなかった。
💚「完成を、急がなきゃ」
もう、時間がない。
満月まであと4日。
翌日は大き目のリボンを首に巻いて傷を隠し、特務調査局に向かう。
💜「阿部ちゃん、もういいの?」
💚「うん。昨日はみんなありがとね。おかげさまで、ちゃんと休めました」
その日はいつもどおり、コントロールルームで仕事を終えて帰り、お風呂に入った時に鏡で体の痣を見た。
昨日よりも大きくなったそれは。
💚「……蕾……?」
この痣が植物の蕾だとしたら、首の傷は種のように思えた。そうして見ていると、首の傷が小さくなっていることに気が付いた。
💚「傷が種になったから、痣が蕾になった……? 芙蓉、月下美人……昼に咲く花と、夜に咲く花……二つ揃ったら、ずっと咲き続ける。上弦の月、満月……芙蓉にとって重要なのは、月下美人の方……?」
とにかく、異能を使わずに何とか芙蓉の目的を探らなくては。
満月まであと3日。
その日は、首の傷があまり目立たない事もあって、昨日よりも細いリボンを巻いて特務調査局へ向かった。
🤍「あの依頼、阿部ちゃんも一緒に行こうよ!」
💚「依頼?」
🤍「リニアモーターカーの実験場で不具合が起きたんだって。僕が行く予定だったんだけど、阿部ちゃんも一緒ならもっと心強いからさ!」
🩷「阿部ちゃん、いつもみたいにこっからアクセスするんじゃダメなの?」
🤍「佐久間くん。リニアを舐めてもらっちゃあ困るよ」
💚「リニアは結構、複雑なんだよ。俺でも簡単には干渉できない」
💜「じゃあ、めめとラウと阿部ちゃんの三人で行ってきてくれる?」
各々で返事をし、三人でリニアモーターカーの実験場に向かう事にした。
トラブルの内容はあまり複雑なものではなくて、ラウールが機械の壊れた部品を作り出して交換し、電気系統を阿部が修理する。
磁場の調整も行い、お昼過ぎには終えることができた。
それは良かったのだけれど、雨雲が近づいて来たから急いで帰ろうという阿部に、駅から走っている最中で突然のスコールに見舞われてしまった。雨宿りをしようにも、すでに濡れているからこのまま帰ろうということになり、びしょ濡れになりながら特務調査局に入った。
💜「うわ、めっちゃ濡れてんじゃん! 風邪引くよ! シャワー浴びて来て!」
🖤「阿部ちゃん、先に行きなよ。俺もラウールもまだ大丈夫だから」
💚「え、いいよ。俺、後でも平気」
🖤「いーや、ダメです。阿部ちゃんが入んなかったら、俺は入りません」
💚「……じゃあ、行ってくるね」
あーなった目黒は引いてくれないという事を知っている。だから言われた通りにシャワールームに向かって、服を脱ぎ始めた。洗面台の鏡に映る胸の痣が目に入る。昨日より、少し蕾が開いている気がする。そして、蕾の周りにあるのは、細い花柄。これは、月下美人の花だ。
ガチャッとドアが開いた。
🤍「阿部ちゃん、やっぱり僕も寒いから入るー……って、何それ!?」
ヤバいと思った時にはもう遅くて、シャツを脱いでしまっていたから隠す方法もなくて、声を上げたラウールに両肩をがっしりと掴まれる。
🤍「これ、なに?」
💚「あ、これは……」
🤍「阿部ちゃん! 隠し事はなしだよ! 僕たち、そんなに信用できない?」
💚「ちが、そうじゃなくって……」
🖤「ラウール、どうした? ……阿部ちゃん、なに、それ……」
すぐ後から目黒も入ってきて、阿部の胸の痣に気が付いてしまった。
もう、どうやっても隠すことができない。
💚「ごめん、いろいろ確証を得てからと思ったんだけど……ちゃんと話します……でも、シャワーは浴びていい?」
🖤「あ……どうぞどうぞ」
🤍「あ、そうだった。一緒にはーいろ!」
先ほどまでの緊迫した雰囲気はどこへやら。和やかな雰囲気のままシャワーを浴び、その後に目黒が入った。全員が上がって髪を乾かすと、二階に降りていく。
今、事務所に残っているのは深澤と宮舘、それと、依頼から戻って来たラウール、目黒、阿部の五人だけ。今日は渡辺と向井が休み、佐久間と岩本は調べものをしている。
❤️「なんか三階、騒がしくなかった?」
🤍「もー、舘さん聞いてよー。まーた阿部ちゃんが隠し事してたー」
💚「またって何?!」
❤️「阿部の隠し事なんて、今に始まったことじゃないよ」
💚「舘様まで! え、俺、そんな感じ?」
💜「何を今更。考えてることとか、すぐには言ってくれないじゃん。で、なに? 今回もそういう感じ?」
🤍「こういう感じー」
前に立っている阿部の服を大きく捲ったラウールに、深澤も宮舘も何してんだと目を丸くして、映ったものに眉を顰めた。
💜「それ……なに、どうしたの?」
❤️「蕾、みたいだね」
💚「舘様もそう思う? 俺もそう見えてて。あ、じゃあ、舘様これはどう見える?」
首元のリボンを外して、顎を上げて首がよく見えるようにする。
みんな、体の中心にある痣の方に視線が集中していて気が付かなかったようだ。
❤️「……種?」
💚「やっぱりそうか……舘様が言うなら間違いなさそう」
🤍「それ、傷? 阿部ちゃん、最近やたら首周りに小物つけてるなと思ったら……」
💚「元々ね、リボン付けたりしてたからバレないかなって。芙蓉と会った時に、爪が刺さってできた傷なんだけど、日に日におっきくなってたんだよね……でも、こっちの蕾ができたら、傷が小さくなったから、ああ、そういうことかなって」
💜「じゃあ、その胸のとこも?」
💚「最後、芙蓉に指を押し付けられたとこ。一昨日はただの小さな痣で、昨日はもう蕾みたいだった。それが今、少しだけ開いてる。この花、月下美人だと思う。芙蓉が付けてたストールにも月下美人が描かれてたし……」
🤍「満月に向けて、咲いてる……?」
💚「多分。偶然じゃないよね」
💜「……阿部ちゃん、大丈夫なの? 体調に変化とかは?」
💚「とりあえず、ないよ」
🖤「ホント?」
💚「ホント、ホント。もうさすがに隠さないよ」
❤️「阿部のそれは、信用できないからね」
💚「ええー。ひどーい」
💜「いっつも隠す方が悪いんだよ。で? 阿部ちゃんは、どう考えてるわけ?」
💚「……正直、芙蓉の目的はまだわからない。調べようと思ってもできなくて……多分、これのせい」
そう言って、蕾の痣がある辺りに触れる。
🤍「……それが今回、会いに来た目的ってこと?」
💚「可能性はあるよね。誰でも良かったって言ってたけど、俺は異能の特性として精神的な方に敏感だから、引っかかる可能性は高い。もしかしたら、調べられたら困ることがあった?」
🤍「だとしたら、狙いはあの時に接触しようとした他の人?」
💚「かもしれない。昼に咲く芙蓉と、夜に咲く月下美人。月に拘る芙蓉……月下美人は夜の女王とも呼ばれてる」
🤍「夜の女王か……夜の支配ってこと……?」
💚「でも、うちのメンバーでそんな異能はないし……いや待って、ふっかのふーちゃん」
💜「……へ? 俺?」
もう阿部とラウールが何の話をしているのか理解できなくなっていた三人は傍観を決め込んでいたのが、急に話を振られて間の抜けた声を出してしまった。
💚「《八咫烏-ヤタガラス-》って知ってる? 日本神話に出てきたカラスなんだけど。八咫烏って、導きの神であると同時に、太陽の化身だって言われてる。もし、ふーちゃんが同じような存在だとしたら……」
💜「いやいや、ちょっと待ってよ。だって、元々は普通の鳥だよ?」
🤍「でも確かに、普通の鳥があんな姿になるって変だよね。それこそ、神様っっぽいじゃん。よく、困った時には導いてくれてるし」
🖤「阿部ちゃんがそう思ったんなら、きっとそうだと思う」
💜「出たよ。めめの阿部ちゃん全肯定」
❤️「でもさ、何もしないよりは、そう思って対策しといた方がいいと思う。満月まで、もうあと3日。迎え撃つ準備も必要じゃない?」
🤍「っていうと?」
❤️「拠点はここじゃない方がいい。誰にも迷惑にならないところに行こう」
🖤「迷惑にならないところ?」
❤️「そ。招待するよ。うちの別荘に」
岩本の運転する車で連れて来てもらったのは、小高い丘の上にある大きなお屋敷。
車を降りて、皆がそのお屋敷を見上げる。
🩷「すっげー!」
🧡「ほんまに?!」
💙「うわっ!」
💚「でかっ」
🤍「さっすが舘さん! 似合いすぎー!」
💜「まさかホントに別荘とかあるなんてなぁ」
💛「ネタだと思ってた」
🖤「……おおー」
❤️「ふふっ」
不敵な笑みを浮かべる宮舘に、絶対面白がってるな、と皆が思っていた。
中に入ると、その広さが更に分かるようだった。赤を基調とし、ロイヤルで優雅な内装は宮舘らしさ満載で、舘様屋敷と皆が心の中で呼んでしまったとか。
❤️「部屋は好きに使っていいんだけど、二人一組の方がいいかな。ここが襲撃はされないと思うけど、念のためにね」
💛「部屋割りどうする?」
💜「SnowManと言ったら、これでしょ」
ジャーンと取り出したのは、穴の開いた白いボックス。中には四色のカラーボール入っていて、2、2、2、3で分かれるようになっている。
佐久間から順番に引いていき、見えないようにして持ち、覗き込むラウールを岩本がたしなめつつ全員が引き終わると。
💜「せーの!」
分かれた部屋は、目黒と宮舘、阿部と佐久間、岩本と渡辺、ラウールと深澤と向井というもの。
それぞれの部屋に荷物を置きに行き、その日はもう夕方だったので、夕ご飯を食べるとすぐに部屋に入った。
その日の夜、阿部は一人、佐久間が寝ている部屋の隅で遅くまで作業をしていた。
満月まであと2日。
次の日は、宮舘の別荘の中を探検したり、近くの山を探索したりと自由にのびのびと過ごしていた。芙蓉が来るのは満月の夜と確定している為、今から気を張っていても疲れるだけだから、と。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
そして、阿部は決意していた。お風呂から上がってベッドでゴロゴロしている佐久間を振り返り。
💚「佐久間」
🩷「ん? どした?」
💚「佐久間に、聞いてほしいことがあるんだけど」
🩷「え、なに? そんな改まって……」
💚「これは、佐久間にしか頼めないことで、対芙蓉の切り札になると思う」
🩷「阿部ちゃん、芙蓉のこと、何かわかったの?」
芙蓉については調べられないから、確定できることはほとんどないと言っていた。その阿部が今、芙蓉の対策について話すというのは、少々引っかかる。
💚「ふっかのふーちゃんが八咫烏かもって話はしたよね」
🩷「にゃす。太陽の化身、だっけ?」
💚「そう。元々、ふーちゃんは普通の鳥だった。スチールグレイでカラスっぽいのは、ふっかが鋼の能力者だからだと思ってたんだけど、昨日、改めてふーちゃんを見せてもらったらさ、足、三本になってた」
🩷「えっ、マジ!?」
💚「それと、芙蓉が他人の願いを叶えてたのが気にかかってて。もしかしたら、芙蓉は他人の願いと引き換えに自分の願いを叶えられるのかもしれない」
🩷「それってつまり?」
💚「ふーちゃんが八咫烏だったらいいと、願った。そしてそれが、本当になった」
🩷「何のために?」
💚「太陽が消えたらどうなる?」
🩷「……ずっと夜になる?」
💚「そう。芙蓉は恐らく、月下美人。つまり、夜の間でしか活動ができない」
🩷「えっ、でも待ってよ。阿部ちゃん達にぶつかろうとしたのって、その芙蓉だったんだよね?」
💚「だから、名前が芙蓉なんだよ。昼に咲く花。その名を冠することで、昼でも少しは動けるんだと思う。けど、万全じゃない。常に行動するには、常に夜である必要がある」
🩷「それでふーちゃんを消す……? んー、わっかんねえ!」
💚「とにかく、芙蓉の異能が成就する力なら、俺に仕掛けられたこれが、その為のおまじないなんだと思う」
自分で服を捲って素肌を見せる。
阿部の体の中心には、開花しかかっているような痣が艶やかに浮かび上がっている。
💚「もう五分咲きだ。明日満開になるのは、間違いないね」
🩷「……阿部ちゃんの願いが使われるってこと?」
💚「まあ、一概にそうとは言い切れないんだけどね。だから、佐久間に託したいんだ。俺の願いが成就されず、芙蓉を退ける方法を」
阿部からの作戦を聞いて、佐久間の顔がどんどん曇っていった。阿部とて分かっている。これがどれほど危険で、どれほど無謀なのかを。
けれど、未知数の脅威を前に、躊躇などしていられない。考え得る全ての可能性を考慮して最適解を導き出さなければならないのだ。
それが、阿部の役目だから。
🩷「……阿部ちゃんの願いって、なに?」
💚「……みんなの笑顔、かな」
満月まで、あと1日。
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