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<全てを背負う覚悟>
2024-12-29
「…ん…」
目を開くと、真っ先に飛び込んでくるのは禍々しい程の紫色の空。黒雲が浮かぶその空が見えるということは、あの扉がちゃんと通じていたということに他ならなかった。
「あれ、…ツララ、オーター…?」
ひんやりとした感覚を体全体に感じながら、一緒に来た2人の仲間の安否を確認する。
「…よかった、息はあるね。おーい、ツララー、オーター、着いたよー。起きてー!!」
体を軽く揺さぶりながら、目を覚ますように呼びかけた。体感10秒ぐらいで、ツララとオーターはそのまぶたをゆっくり開く。
「…ん…ここは…」
「お、ツララ。おはよう。…って言ってもこっちの時刻が朝なのかは分からないけど。着いたよ、異世界。大丈夫?起きれる?」
手を差し出し、ツララが起きれるように声をかけた。その私の手を握った手は、まさに氷のように冷たい。もう随分と前から触れていて慣れたから、今となっては驚くまでもないけれど。
「…ライラ…?…、…あれ、ここ、…異世界、?」
「あはは、大丈夫?…あぁ、これ魔力酔いしてるね、仕方ないよ。ツララ、初めて来たんだし。寧ろこれ軽い方だから、ツララはいい方だよ。」
よかったよかった、と頭を撫でながら、ツララの魔力を少しづつ馴染ませる。いやぁ、本当によかった。結構軽い魔力酔いだったし。流石神覚者。
「…あれ?」
神覚者で思い出した。そうだ。オーターのこと忘れてた。
「オーター!?待って待って、そうじゃん!?オーター大丈夫!?」
先程から喋っても動いてもいないオーター。あれやばくないこれ??え??
「えっえっ大丈夫??もしかして死んでる??」
▶もしかして:死んでる
「…煩い、ですよ、…ライラ……」
「…、!オーター!大丈夫!?もしかして魔力酔いしてるんじゃ…! 」
うつ伏せのままで話すオーターの頭に触れながら分析する。どうやら重度の魔力酔いを起こしてるらしい。
「…!!?、え、ちょっ…治療魔法!!」
通りでさっきから少ししか話さないし動かないわけだ。魔力酔いを起こしてるから、動かないんじゃなくて動けないし、話さないんじゃなくて話せないんだ。オーターが魔力酔いになるなんて予想してなかったから、気づくのが遅れた。
「…大丈夫オーター!?生きてる?!」
「…大丈夫です。ちゃんと生きてます。」
その落ち着いた低い声に、私は安堵する。魔力はもう混ざってない。ちゃんと馴染んでいる。
「よかったぁ…まさかオーターが魔力酔いになるなんてね…」
「本当です。急に脱力したと思ったら動けなくなったんです。先に話してくれれば対策の仕様があったのですがね。」
「いやごめんって。まさかオーター魔力酔い、それも重度になるなんて思わなかったんだって。」
「はぁ…それで、ここが異世界とやらですか?」
真剣な声で、オーターはそう聞く。
「…うん。ここがそうだよ。」
少し不安になりながら、私は答える。過去に来たことがあるとはいえ、ここは腐っても異世界で、今までいた世界とはまるで違う場所だ。
今までの常識は通用しない。
「……大丈夫?」
静かな声が落とされる。ツララの声だった。その宛先は、視線の先に居た私らしかった。
「…え?大丈夫だよ?私は」
その言葉が発せられてから数秒して、やっと私に宛られた質問だと気づいた。
「…嘘だね。ライラ、緊張してるでしょ。いつもより声が震えてるし、手だっていつもよりだいぶ冷えてる。…怖いの?それとも、…不安?」
「…!」
図星だった。怖くて不安で、どうしようもないほど感情が揺らいでる。また拒絶されたらどうしようとか、またあの悲痛な叫びをさせてしまったらどうしようとか、そんな感情が。ストレスじゃない、でも限りなくストレスに近い感情。名前なんて分からないけれど、不快なことだけは分かってしまう。
「…大丈夫、なはずだったのにね、……ごめんね、ツララ、オーター。私、今怖いみたい…」
私らしくないと分かってはいるのに、2人に子供のように縋り付く私は弱い。
「…2人がいるから、私一人だけじゃないから、…大丈夫だって、何があっても受け止められるって…そう思ってたのに…」
声が震える。上手く喉から言葉が出ない。ちゃんと伝えられない気持ちが伝わらない。
「…怖い、不安なんだよ…どれだけ心強い味方がいても、どれだけ私についてきてくれる人がいても…、またアイルに否定されるのが、怖い…」
何度呟いたって叫んだって、事実が変わらないことは分かってる。アイルが私のことを嫌ってることも、学園長が私を████そうとしてることも、全部。全部変えることの出来ない真実だ。
「……自分達は大丈夫なんて言えないし、絶対勝つなんてことも言えない。…でも、」
ツララの手が、冷たい手が、私の手に触れる。
「…風の神杖のそんな顔なんて、見たくない。だから守る。例えボロボロにされちゃっても、殺されかけちゃっても。…ライラは、その子と一緒に帰るって、約束したんでしょ。」
その蒼い瞳は、硬い意思で出来ていたように見えた。綺麗で、聡明で、そして、私よりも純粋な瞳は_あぁ、もう。そんな目で見ないでよ。
「……ありがとう、ツララ。」
_みんな救いたくなっちゃうじゃんか。
「…行きますか。」
眼鏡を押し上げ、真剣な声でそう聞いてくる。
「うん。…大丈夫だよね、2人とも。」
「うん。大丈夫だよ。」
「はい。」
泣きたい。逃げ出したい。でも駄目だから。
立ち向かうしか、今の弱い私はできないから。
「…行こう。」
全てを背負うしかない。
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あとがき(2024/12/31)
こんにちは!作者の依です!
いやぁ、早い事でもう大晦日ですよ。
この物語を描き始めたのが確か今年の5月ぐらいなんですけど、もう半年以上経つんですよね。
半年も書き続けられたことに感謝します🙏
見てくれてありがとうございました!
そしてまた、来年もうちの子達と夢小説をよろしくお願いします🙇♀️
また来年会いましょう!今年もお疲れ様でした!!