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天は全てであり、部分である。
かつて地球に存在した師弟の魂が、天で語っていた。
「最近何かあった?」と哲学者の魂は言った。
「いえ、別に。たいしたことは」帝王の魂は少し考えた「まあ、あえて言えば、久々にペルシャ王の魂と会いましたよ」
「彼、元気だった?」と哲学者の魂は言った。
「ああ見えて、結構執念深いんですよあの魂。もう少しだけ持ちこたえていれば救援の軍が来たから、事態は逆転してただろうって」と帝王の魂は言った。
「彼も、やる気満々だったからね」と哲学者の魂は言った。
「こっちも先生に教わった兵学、バリバリ使いましたからね」と帝王の魂は言った。戦争の目的、地理学、気象学、組織学、運営学、騎馬兵と歩兵の布陣配置、財政、補給線関係のロジスティック、相手の兵力分析、分析してみるとおおむね合格点だったと哲学者の魂は言った。
帝王の魂は、はにかみ笑いをした。
「面白いですね。現世の人は、私が手順を全部すっ飛ばした奇襲で勝ったと思ってるようですから」
「ま、地球の世の中そんなものだと思っといたほうがいいよ」
帝王の魂は地球年齢三十代前半で熱病に倒れ、こちら側にやってきた。彼の帝国はすぐに麻痺状態に陥り、バルカン半島ではマケドニア勢力を一掃しようという勢力が息を吹き返した。
「あの節は、ご迷惑をおかけ致しました」と帝王の魂が言った。
「君のせいじゃないさ。天が召したんだから」と哲学者の魂が言った。
哲学者は当時、哲学を各科目に分けるという、概念の分解に人生を捧げていた(それが今日、地球上でいうところの科学になった)。しかし、それは計画の前半部分でしかなかった。彼は八十歳まで生きることを前提に研究していたのだった。