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怪奇・怪獣ワールド

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怪奇・怪獣ワールド

9 - 絶滅前夜

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2025年09月12日

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沖縄本島から漁場に着いた小型の漁船の甲板で、船長が若いアルバイト男性に怒鳴り散らしていた。


「いつまであくびしてやがんだ! さっさと網を入れろ。この時期の漁は夜明け前の今が勝負なんだぞ」


まだ夜が明けきらぬ薄暗い空を見つめつつ、男はしぶしぶ網を肩にかついだ。


「へーい。やれやれ、時給が高いのに釣られてとんだ重労働の仕事選んじまったな」


次の瞬間、船全体にガクンという衝撃が走った。男は甲板上で足をすくわれ、尻もちをついた。


「うわ! おやっさん。なんかにぶつかったんですか?」


船長は操舵室から走り出て海面をのぞき、首を横に振った。


「そんなはずはねえ。この辺りに岩場とかはねえはずだ」


アルバイトの男は甲板の反対側から海面を見ようと、よろよろと立ち上がって歩を進めた。そして、甲板の縁の手前で足が止まった。


彼の眼前には、甲板に立っている彼の背丈より高く、数本の何かがそびえ立っていた。それは一本一本がうねうねと動いている。


男は船長に声をかけようとしたが、恐怖のあまり言葉にならず、ヒッヒッといううめき声にしかならない。


振り返り、アルバイトの男と同じ方角を向いた船長が叫んだ。


「な、何だ、これは?」


船体がまたぐらりと、今度は縦方向に傾いた。アルバイトの男は甲板の上でひっくり返り、転がされ、そのまま船尾から海面に投げ出された。


水中でライフジャケットの紐を引き、必死で海面に浮かび上がる。空気が充填され膨らんだライフジャケットの浮力で顔を水面上に上げた時、彼は十数本の巨大な触手状の物が船体にからみついているのを見た。


「ふ、船が……引きずり込まれてる!」


船長の悲鳴が遠くから聞こえた気がした。漁船はそのまま、じわじわと船首を下にして、触手によって水中に引きずり込まれ、姿を消しつつあった。


男は顔を蒼白にして、漁船から少しでも遠ざかるべく、泳いだ。ようやく太陽の最初の光が水平線上に差し込んだ時、漁船は完全に見えなくなっていた。


翌日の昼、警視庁公安機動捜査隊の宮下警部補は海上保安庁第11管区本部にタクシーでやって来た。那覇は日差しは真夏より弱まったとは言え、じっとり汗ばむ陽気だった。


ダークグレイのパンツスーツを着、上着の前のボタンをきっちり留めた格好で受け付けに要件を告げると、すぐに半袖の制服の海上保安監が出迎えにやって来た。


彼は石上と名乗り、宮下を奥に案内しながら言う。


「いやあ、助かります。こっちには怪獣事件専門の刑事なんておりませんから。警視庁の専門家に来ていただけて」


宮下は遠慮がちに答える。


「いえ、あの、私はテロ対策の部署で、別に怪獣専門というわけでは」


石上は全く耳に入っていない様子で、上機嫌で言葉を続ける。


「いえいえ、ご謙遜を。宮下さんのこれまでのご活躍は聞いております。東京から怪獣の専門家に来ていただけたとは心強い」


「あの、ですから、別に怪獣の専門というわけでは……」


「それで今回の怪獣事件らしき案件なんですが、さっそくご意見を伺いたい点が多々ありまして」


宮下は彼の誤解を解く事をあきらめた。


会議室に通され、数人の海上保安庁職員と宮下は机を囲んだ。石上がホワイトボードに海図を掛けて説明を始めた。


「昨日の件で、計3件目になります。小型の漁船がわずか10日の間に次々と消息を絶っている。それも深度のある、座礁など考えられない場所で」


宮下は海図に付けられた赤い印の位置を見ながら尋ねた。


「生存者はいたのですか?」


石上が答える。


「昨日の件で、一人、アルバイトで漁船に乗っていた若い男が、12時間後に救助されました。で、事情を聞いたんですが、どうにも信じられん話でして」


「どういう点が?」


「巨大な触手を持つ怪物に、船が襲われたと言うんです。船ごと海に引きずり込まれたと。しかも幻覚とばかりは言えんのです。島を結ぶ小型の旅客機のパイロットや乗客が、上空から巨大な何かが海中を移動しているのを目撃したという通報も5件、入っておりまして」


「潜水艇か何かという可能性は?」


「あり得ます。外国の工作員が侵入を試みたのではないかと、それで警視庁の協力を仰いだら、怪獣事件専門の宮下さんが来て下さったというわけで」


「いえ、ですから、私は怪獣の専門というわけでは……」


「いずれにしても、何か普通でない事が近海の水中で起きている可能性が高いのですよ。ご協力よろしくお願いします」


「はあ、それは承知しました」


「では、今日のところはこちらで手配したホテルで休んで下さい。ビーチのすぐ側のホテルを取ってあります。ええと、君、宮下さんをホテルまで車でお送りしてくれ」


立ち上がった職員とともに、宮下はその場を後にしようとした。その時、別の職員がドアを開け、駆け込んできた。その職員は切迫した表情で告げた。


「数時間前に、また船舶が謎の沈没を!」


石上が立ち上がって訊く。


「どこの漁船だ?」


「今度は漁船じゃありません。うちの船です」


「うちの船?」


「本部直属の、巡視艇です!」


その日の夕方、帝都理科大学の渡教授と遠山助教授は、ホテル脇のビーチで水着にアロハシャツという格好で座っていた。


二人の横を3人の水着姿の女子学生が通って、波打ち際に歩いて行く。


渡が顔をしかめて遠山に言う。


「彼女たちのあの格好はなんとかならんのか? 下着も同然じゃないか、目のやり場に困る」


遠山は苦笑しながら答える。


「古いですよ、渡先生。今どきの水着はあれぐらい普通です」


ホテルの玄関に着いた車から降りた宮下が二人に目を留め、近づいて来た。


「渡先生じゃありませんか? あら、遠山先生も」


渡が振り返って驚く。


「宮下警部補か? どうしてこんな所にいる?」


「私はちょっと仕事で。お二人はご旅行ですか?」


「学生の研究発表会がここであってね。遠山君の教え子たちだ、ほら、あそこにいる」


「どうして渡先生も一緒に?」


「付き添いの、そのまた付き添いだ。この……」


渡はそう言って、遠山に顔を向けた。


「軽薄な男と女子学生だけにしとくわけにはいかん」


遠山は口をとがらせて抗議の口調で言う。


「ひどい言われようだな。ところで、宮下警部補、何か事件でも?」


宮下は漁船の沈没が続いている事だけを話した。渡が真剣な表情になって遠山に言う。


「だったら海に近づくのは危険じゃないのか?」


遠山も真面目な顔つきになった。


「確かに。彼女たちをホテルに戻しましょう」


その時、波打ち際の学生たちが大声で渡と遠山を呼んだ。


「先生、何か変な物が流れ着いてますけど」


宮下とともに近づくと、銀色の大きなケースが砂浜にめり込んでいる。鍵はかかっていないようで渡が開くと、短機関銃が一丁入っている。


「何だこれは?」


宮下はとっさにケースの表面を見る。海上保安庁第11管区という表示がある。


もう一人の女子学生が海を見て声を上げた。


「あれ? 何か浮かんでる。ビーチマットかな?」


大きな円盤状の物が縦になった格好でゆっくり砂浜に向かって動いている。自分の背丈ほどの高さがあるそれに彼女は近づき、悲鳴を上げて後ろ向きに倒れた。


「助けて! 何かが足を!」


あわてて渡と遠山が駆け寄り、彼女の両手をつかむ。彼女の足には茶色い、人間の腕ほどの太さがある触手がからみついている。


二人が彼女を陸側へ引っ張ろうとする。その円盤は全容を砂浜の上に現した。


それはらせん状の形の巨大な貝殻のようだった。一番太く開いた場所から十数本の太い触手が伸び、根元に巨大な目があった。


その怪物は女子学生の足をつかんだまま、海に向かって後ずさり始めた。渡と遠山が力を振り絞って彼女の体を引き戻そうとするが、3人まとめて海に向かって引きずられる。


宮下が上着のボタンを外し、腰のホルダーから拳銃を抜いた。女子学生の体と殻の間に入り、引き金を引く。


だが、弾丸は殻に跳ね返され、触手に撃ち込んでも、大したダメージを受けている様子がない。女子学生は泣き叫びながら海に向かって少しずつ引きずられて行く。


「下がって下さい!」


突然大声が響き、大柄なアロハシャツと短パン、サンダル姿の男が近づいて来た。その両手には、さっきのケースの中にあった短機関銃が握られている。


男は手際よく弾丸の入ったマガジンを差し込み、銃口を怪物に向け、ためらう事もなく、連射した。


大口径の銃弾は殻を貫き、青い液体が噴き出す。触手の動きが鈍り、女子学生の足が解放された。渡と遠山は彼女の体を両側から抱えて波打ち際から走って遠ざかる。


大男は触手の付け根に向かってさらに連射を続け、やがてその怪物は殻を横倒しにしたまま動かなくなった。


銃口を下げた男に宮下が近づいた。


「あなた何者? 短機関銃をあんなに鮮やかに使えるなんて」


刈り上げ頭の、宮下より頭二つ分ほどの身長の男は銃を砂浜に置いて敬礼の姿勢を取った。


「申し遅れました。自分は、陸上自衛隊、水陸機動団所属、3等陸尉、松田健太郎であります!」


「自衛官?」


遠山が女子学生たちをホテルに連れ戻し、渡が二人の側へ来た。


「自衛隊員か、君は。自衛隊もこの件を警戒していたのかね?」


松田は手を降ろして答える。


「いえ、単なる偶然であります。自分は現在休暇中で、観光でたまたまここにいただけで。ところで、あれはどういたしましょうか?」


松田があの巨大な殻をもつ生物を指差す。それはもう動いておらず、死んでいるようだった。宮下は一瞬考え込んで答える。


「地元の大学へ運んで遠山先生に調べてもらいましょう。松田さんと言ったわね。運ぶのを手伝ってくれます?」


翌日の夕方、学生たちは東京に帰し、渡は宮下、松田と一緒にホテルのラウンジでアイスコーヒーを飲みながら遠山を待っていた。


やがて遠山がホテルに戻って来た。海上保安庁から紹介された地元の大学の施設であの怪生物を解剖してきたのだ。


同じ席につくと、遠山は真剣な表情で説明した。


「あれはおそらくアンモナイトの一種です。殻の直径が1.8メートル、触手の長さ1.5メートル。タコとイカのハイブリッドのような触手です」


渡が目を吊り上げて訊く。


「アンモナイトは恐竜とともに絶滅したんじゃなかったのか?」


「生き残りがいたんでしょうね。絶滅したと信じられていたシーラカンスという古代魚が発見された例もありますし。それより、やつの消化器官を調べたら驚くべき事が分かりました。やつはプラスチックを食っていました。しかも、消化吸収できるようです」


宮下が驚いて言う。


「プラスチックを食べる? 食べられる物なんですか?」


「プラスチックは有機物です。たいていの動物は消化できませんが、やつはそれが出来るようになったんでしょう」


「ですが、先日の事故の生存者の証言とサイズが合わない。船の甲板の上の170センチ以上の高さだったというから、触手は最低3メートルの長さだったはず」


「それとは違う個体なんでしょう」


松田が、えっ? と声を上げた。


「一匹ではないという事ですか?」


「むしろ、一匹だけという方が不自然だ。もっと大きな個体が複数いると思った方が自然だろう」


渡があごひげをしごきながら言う。


「だが、プラスチックの餌なんてどこにある?」


遠山が言う。


「海洋プラスチックごみかもしれません。海に流出した量は1億トン以上と言われている。むしろ、プラスチックごみを餌にするようになった結果、巨大化したのかも」


宮下がまた訊く。


「でも、なぜ突然この海域に現れたんでしょう?」


「あくまで推測ですが」


そう言って遠山はカバンからタブレットを取り出し、いくつかの水中写真を見せた。


「サンゴが大量に枯死していますよね、ここ数年」


渡が画像をのぞき込みながら言う。


「地球温暖化や、海洋汚染のせいかもしれんとニュースで見た事があるな」


遠山は海図を広げて、ペンで青い印を海岸線に描いた。


「宮下警部補からもらった事故の地点と、サンゴの大量枯死の地点を付き合わせてみました。例えば、こことここ」


遠山が指で示す、赤い印と青い印の組み合わせを見ながら、あとの3人が息を呑む。遠山が続ける。


「サンゴの大量枯死が起きているその沿岸に、船の事故の地点が一致している。サンゴも生物です。サンゴの活動によって発生する何らかの化学物質があり、それがあのアンモナイトの繁殖、成長を抑制していたとしたら?」


渡が右の拳で左の掌をポンと叩く。


「サンゴが無くなった事でアンモナイトが異常に成長し、プラスチックごみを食料にした事で、さらに巨大化した。そういうわけか」


宮下が渡と遠山に言う。


「先生がた、また協力をお願いします。あれのもっと巨大なやつが陸に上がって人を襲い始める危険があります」


松田が言う。


「自分もお手伝いします。隊に報告したところ、このまま現地に留まって、自衛隊として情報収集をするよう、命令を受けております」


その夜、松田が宮下の部屋のドアを何度も叩いた。あわててガウンを羽織った宮下がドアを開けると、自衛隊の礼服姿の松田が興奮した口調で言う。


「大変です。那覇港に停泊中のクルーズ船が、巨大アンモナイトに襲撃されています」


「やっぱり、もっと大きな別の個体がいたのね!」


「自衛隊のヘリがこちらに向かっています。渡先生と遠山先生には自分が知らせに行きますので、警部補もご同行願えますか?」


「分かりました。ホテルのロビーで集合しましょう」


10分後、ホテルの前庭に着陸した人員輸送用ヘリに、渡、遠山、宮下と松田が乗り込んだ。ヘリは那覇港の上空に向かい、遠山が赤外線暗視機能付きの双眼鏡でその光景を観察する。


桟橋から離れた位置に停泊している全長240メートルの大型クルーズ船に、海面から伸びた巨大な触手が何十本も群がっている。


船自体の照明と、周りの海上保安庁巡視船のサーチライトに照らされた船上では、悲鳴を上げて逃げ惑う多数の乗客の姿が見えた。


クルーズ船の船首、中央、船尾の3か所にからみついた触手がさらに上に伸び、殻の部分が海面から現れる。双眼鏡を目に当てた遠山がつぶやく。


「3匹いる。殻の直径が20メートル、触手が10メートルとして、全長30メートルはある」


触手はあちこちに伸びて広がり、そのうちいくつかは乗客の体を絡め取っていた。


巡視船は船の乗客を誤射する事を恐れて発砲出来ないでいた。やがて、デッキのプラスチック製の椅子などの備品と、数十人の乗客の体を触手の先にからめとったまま、巨大アンモナイトはひとつ、またひとつと暗い海面に沈んで行く。


「一番恐れていた事態が起きてしまった」


悔しそうに宮下がつぶやく。遠山が普段と一変した鋭い表情で松田に訊いた。


「海上自衛隊が使う、高性能の水中音響探知機を取り寄せる事はできますか?」


松田はすかさず答えた。


「ただちに、統合幕僚監部に申請いたします!」


二日後の早朝、夜明け前、4人は海上保安庁の大型巡視船の甲板にいた。小型エンジン付きのゴムボートが側の海面に浮いていて、ウェットスーツを着た松田がボートに乗り込んだ。


アタッシュケースほどの大きさの機械からコードが伸び、その先に海中に差し込む音響探知機が付いている。


巡視船の上部に取り付けられた大型のライトが一斉に点灯し、松田は探知機を水中に垂らした。


甲板の縁に手をかけてその様子を見守る渡が遠山に訊いた。


「やつらが光に反応して寄って来るというのは確かなのか?」


遠山は腕組みしながら答える。


「確証はありませんが、イカ釣り漁船がよく使う方法です。それに、今までに襲われた漁船も夜明け前に操業している時に襲われているし、あのクルーズ船も煌々と照明をつけていましたよね。可能性は高いと思います」


やがて松田が機械の本体のスクリーンに映る探査結果を見つめて、船上の3人に呼び掛けた。


「それらしい反応が出ました。ひと、ふた、みつ……3匹来たようです」


徐々に近づいて来る巨大な物体の反応は、巡視船の水中レーダーでも捕らえられた。乗組員にそう告げられた宮下が松田に向かって叫ぶ。


「松田さん、早くこっちに上がって! もうすぐ近くまで来てる」


松田は巡視船から伸びているロープを体に巻き付けたが、まだ音響探知機のセンサーを水中に差し込んだまま、その場を動こうとしない。


「もう少し、あともう少しなんだ。やつらの出す音響パターンさえ記録できれば」


松田が乗っているゴムボートの下に巨大な影がライトで映し出される。それを見た遠山も叫んだ。


「松田君、無理するな! 危険だ!」


松田はそれでもセンサーの先を水中に差し込んだまま、機械本体のスクリーンを見つめている。


「2匹分は取れた。もう少し」


人間の胴体ほどの太さがある褐色の触手が、一本また一本とゴムボートの周囲に柱のように立ち昇る。


機械の本体のスクリーン上の赤い棒が「100%」を示した。松田は機械のコードを引き抜き、本体を胸に抱えてボートから飛び出し、海面に飛び込んだ。


松田の体に巻き付けてあるロープが船上の巻き取り機械で引っ張られ、松田の体は巡視船の船体の下へ移動した。松田は機械本体を左腕で抱えて、船体の壁をよじ登った。


巡視船はエンジンを始動させ、全速力でその場を離れた。やがてヘリコプターが上空に現れ、巡視船のヘリポート部分に着艦する。


松田、宮下、渡、遠山がヘリに乗り込み、ヘリはただちに上昇した。10分ほど飛ぶと、大型の駆逐艦型の船が見えて来た。


ヘリの窓越しにそれを見た宮下が松田に訊く。


「あれは護衛艦?」


松田がうなずく。


「はい、海上自衛隊の協力を得ております」


ヘリから降りると艦橋に通された。艦長が松田に言う。


「音響データは取れたか?」


「はっ! ここに」


松田があの機械を大きなヘッドセットを付けた乗員に手渡す。ソナー監視員が大声で言う。


「ソナーに感あり! 目標3。音響パターン一致を確認。火器管制システムに転送」


艦長が大声で指示する。


「VLSハッチ開け。対潜水艦ミサイル、ひと番から3番まで用意」


砲雷長が言う。


「発射用意完了」


「ミサイル発射!」


艦橋の手前からオレンジ色の炎が吹きあがり、3本のミサイルが垂直に飛び立つ。一定の高度まで上がったミサイルは空中で向きを変え、横方向へ飛ぶ。


海面近くでミサイルの先端が分離し、水中に突入。3本の音響探知魚雷になって、3体の巨大アンモナイトに突進して行く。


海面の3か所から巨大な水柱が上がり、青い液体がまき散らされた。魚雷が3本とも命中した印だった。


護衛艦が那覇港へ戻る途中で夜が明け、まばゆい朝日が甲板を照らした。海を見つめ続ける渡の横に宮下が並んだ。


「先生、何かまだ心配な事でも?」


渡は頭を振ってかすかに笑った。


「いや、そういうわけじゃない。ただ、温暖化、海洋汚染、その他もろもろの影響で地球の生態系が狂い始めているのか、と思ってな」


「確かに、またどこかで別な何かが起きるかもしれませんね」


「ひょっとしたら我々は、絶滅前夜の時代に生きているのかもしれんな」


「は?」


宮下は首をひねった。


「何をおっしゃっているんですか、先生。巨大アンモナイトは絶滅などしていませんでした。まだ世界のどこかに棲息しているかも」


「絶滅するのは、やつらが、じゃない」


渡が宮下に顔を向ける。笑っていたが、その目は笑っていなかった。


「我々人類が、だ」


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