夕暮れが深まり、南無の亡骸が冷たい風にさらされていた。エルは満身創痍の状態で、その場に膝をついていた。南無との激闘で負った傷は深く、立つことすらままならない。
「こんなところで…終わるわけには…」エルは血に濡れた唇をかすかに動かした。
しかし、その静寂は突如として破られた。空から二つの影が落下してくる。鋭い風切り音とともに、地面に激突する寸前で両者がふわりと着地した。
「随分とボロボロだな。」
冷淡な声を発したのは渋谷。細身の体に黒いスーツをまとい、その目は鋭く光っていた。彼の隣には、港が立っている。無骨な体つきで、手には巨大なハンマーを握っていた。
「南無がやられたと聞いたが…その相手がこれか?」港が冷めた目でエルを見下ろす。
「たった一人でここまで戦ったとはな。だが――」渋谷が口元を歪め、嘲笑を浮かべた。「その命もここで終わりだ。」
エルは立ち上がろうとしたが、体が言うことを聞かなかった。
「待て…まだ終わってない…!」エルは拳を握りしめ、立ち上がろうとする。
渋谷が一歩前に進むと同時に、彼の手がまるで霞のように動いた。次の瞬間、エルの体は宙に浮かび、地面に叩きつけられた。
「!」エルは息を呑む間もなく、全身が鋭い痛みに包まれる。
「何もさせるつもりはない。これが冷徹な戦いというものだ。」渋谷が冷酷な声で告げた。
港は無言のまま、ハンマーを振り上げた。その一撃はエルを完全に押し潰し、周囲に衝撃波を巻き起こした。地面が陥没し、埃が舞い上がる。
埃の中から微かな声が聞こえた。「…私は…まだ…」エルの声は次第に消え、その体は動かなくなった。
渋谷が冷ややかに言った。「終わったな。」
港は軽く肩をすくめた。「つまらない相手だったな。」
渋谷が空を見上げ、ぼそりとつぶやいた。「次は零か。奴がどれだけ強いのか、確かめるとしよう。」
「そうだな。ここで終わらせる。」港がハンマーを肩に担ぎ、冷淡な目で前方を見据えた。
二人はその場を立ち去り、次なる戦場へと向かう。
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