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石動はずっと眠り続けていた。穏やかで、まるでこの混沌とした世界の喧騒など一切関係ないかのようだ。だが、長い眠りの果てに、石動の目蓋が微かに動き出した。
「ん…ここは…」
ゆっくりと目を開けた石動の視界に飛び込んできたのは、教皇の顔だった。教皇は微笑を浮かべて石動を見下ろしている。
「やっと起きたか、石動。」
「…教皇?何が…起きてるんだ…?」石動は混乱した表情を浮かべながら体を起こそうとしたが、全身が鉛のように重い。
「無理はするな。」教皇は石動の肩に手を置き、静かに椅子に腰掛けた。
教皇はその場に座り込む石動を見ながら語り始めた。
「石動、お前が眠っている間に多くの血が流れた。そして、多くの者が死んだ。」
「死んだ…?南無や法師も…?」石動は途切れ途切れの記憶を思い返しながら尋ねた。
教皇は頷き、続ける。「そうだ。彼らは勇敢だった。そして、没死者たちもまた…。」
「没死者?」石動の眉が寄る。
教皇は一瞬言葉を飲み込んだが、深い溜息と共に真実を語り出した。
「没死者とは命を落とした者たちだ。しかし、彼らは死ぬことを許されず、異能によって生かされ続けている。神域の中枢を支える存在だ。」
「…そんなことが…可能なのか…?」
教皇は視線を逸らし、苦渋に満ちた表情を見せた。「それが零の力だ。死者を操る術も持っている。」
石動は驚愕の表情を浮かべた。「それじゃあ…彼らは…ただの操り人形か?」
教皇は首を横に振る。「いや、簡単なものではない。没死者たちは記憶と感情を持ち続けている。だが、自らの意志で動くことはできない。零の命令に従うしかないんだ。」
石動は目を伏せ、拳を握りしめた。「そんなことが許されるはずがない…!」
教皇は石動の目をじっと見つめた。「そうだ。だからこそ、我々は零を止めなければならない。だが、そのためにはお前の力が必要だ。」
石動は深く息を吐き出し、ゆっくりと立ち上がった。「分かった。俺も戦う。これ以上、誰も犠牲にしないために。」
教皇は小さく頷き、静かに言った。「では、石動。準備を整えろ。我々の戦いは、まだ終わっていない。」