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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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気付くととっくに定時を過ぎていて、ほかの社員が続々と退勤していき、店舗運営部には私と伊地知部長だけになる。
「こんなことだと思った」
部長がお手洗いのために席を外し、私がひとりでパソコンのキーボードを叩いているところに突然社長が現れて、私は思わず目を見開いた。
社長はコーヒーショップでテイクアウトしてきたコーヒーを両手に持っていて、ひとつを私のデスクの上にそっと置く。
「お、お疲れ様です! あの……コーヒー……」
「お疲れさま。それは差し入れ。まだ帰っていない気がして」
「お気遣いいただきありがとうございます。今、始末書を書いていました」
椅子から立ち上がったものの、すぐ隣までやってきた社長に会釈をしたまま、顔を上げられないでいた。
社長はきっといつものようにまっすぐな視線を投げかけてくれているはず。だから余計に緊張する。
「伊地知さんもまだいるの?」
部長のデスクの上が片付いていない様子に気付き、社長がもうひとつのコーヒーをそこへ置いた。
「はい。席を外されてますけど」
「始末書は書かなくていいって伝えたんだけどな」
その言葉を聞いた私は小刻みに首を横に振った。
実際にあの場にいた社長がそう判断したのかもしれないが、だからといって甘えるわけにはいかない。伊地知部長もそんな私の気持ちを汲み取ってくれたのだと思う。
「今日のことは単なるアクシデントでは済まされないです。きちんと始末書を提出して自分への戒めにします」
「わかった。でも……あまり思い詰めないでほしい。君は責任感が強いし、本当によくがんばってるよ」
慈愛に満ちたやさしい声が聞こえてきて、涙腺が一気に崩壊しそうになる。
だけど泣いてはいけないと自分に言い聞かせ、なんとか涙がこぼれ落ちるのだけは回避した。
「ありがとうございます」
うつむいていた顔を上げると、目力のある社長の瞳と視線がぶつかる。
こんなときでも胸がドキドキするなんて、私は本当にどうかしている。
「あのお客様と君は……友達?」
「違います」
即座に否定をした私を見て、社長はもっと驚くかと思ったけれど、意外にも静かにうなずくだけだった。
「以前、彼女に言われたんです。……友達ではないと。大学は同じでしたが、卒業の少し前から完全に交流は途絶えました」
「そうか」
「……信じてくれるんですか?」
私の主張は百合菜とは真逆だから、どちらかがウソをついているのは明白なのに、社長はとまどうことなく私の言葉を受け入れてくれた。それがうれしくて再び涙目になってしまう。
「当然だろ。俺は君を信じる」
「社長……」
「そんな顔をされたら抱きしめたくなるけど、会社の中じゃ無理だな」
困ったようにふわりと笑う顔も、やっぱり綺麗でキラキラとまぶしい。
社長の瞳の中に私が映っている。それだけで充分に幸せを感じた。
だけどひとつだけどうしても気になってしまうことがある。
――百合菜の表の顔には、決して騙されないでほしい。
コメント
1件
お疲れ様です、寺島あおいです🌷 今回は、社長がコーヒーの差し入れを持って主人公のところへ来るシーンから始まって、あの百合菜との一件について話す場面、胸がいっぱいになりました。社長が「俺は君を信じる」と言ったときの優しい眼差しと、困ったように笑う表情が本当に綺麗で。でも最後の「百合菜の表の顔には騙されないで」という一文が切なくて、ここからどう展開するのか気になって仕方ないです…! また続きを読ませてくださいね😊