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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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ゴルフウェアの展示の件は翌週末まで検討を重ねた。
同じ部署の社員にも意見を聞きつつ伊地知部長と相談した結果、レインウェアの展示と場所を入れ替える方向で進めることになった。
「うん、これでいいと思う。香椎さん、お疲れ様」
「みなさんに助けていただいたおかげです」
部長のデスクのそばでパソコン画面を覗き込み、ホッとしながら頭を下げた。何度も会議を重ねたので、これで今回の問題は解決できると思う。
吉井店長には先に部長のほうから電話で話をしてくれるそうだ。
「よかったら今夜、ご飯に付き合ってくれない?」
「はい」
にっこりと微笑む部長の顔を見て、きっと私を励ますつもりなのだろうと想像がついた。
部長は以前から、部下へのフォローを忘れない人だから。
定時になり、デスクの上を片付けて部長と共に会社を出た。
訪れた場所は、会社の最寄り駅からほど近くにあるオシャレな和食ダイニングのお店だ。
全席個室になっている空間は和モダンで雰囲気がよく、お刺身や旬野菜の天ぷらなどの料理が絶品で、伊地知部長が気に入っていて私も昔からよく連れてきてもらっている。
「乾杯しましょ」
「お疲れ様です」
細くて背の高いピルスナーグラスに注がれたビールが届き、軽くグラスを合わせた。
グラスを持つ部長の細くて長い指が美しいなと見惚れてしまう。
「遠慮なく食べてね」
「ありがとうございます」
続けてすぐにお刺身の三種盛りが運ばれてきて、部長が「このイカがおいしいのよ」と勧めてくれた。
「反省は忘れちゃいけないけど、落ち込むのは今日で最後にしよう」
「すみません」
「まぁ、そこも香椎さんらしいんだけどね。なんにでも一生懸命で真面目だもの」
仕事をする上で一生懸命なのは当たり前だから、自分では特に褒められることではないと思っている。
真面目と言ってくれた部分だって、深く落ち込みすぎるのは欠点のような気がしてならない。
「実は私、あのお客様と知り合いなんです。大学を卒業する直前にいろいろあって……正直に言うと二度と会いたくなかった人だから気持ちが沈んでいました」
「そうだったの」
「それに彼女は対応してくれた神谷社長に興味を示していた気がします。恋愛では奔放な人なので、自分勝手に社長に近づいて振り回すかもと考えたらすごく怖くて……」
そのあたりは社長からなにも聞いていなかったようで、部長はあご元に手をやりながら静かに耳を傾けてくれた。
「社長のことが心配?」
「……はい」
「あら、素直ね。かわいげのない私とは大違い」
肩までの髪を耳にかけながらフフフと自虐的に笑う部長に対し、私はうなずけなくて小首をかしげた。
「部長は私みたいに不器用じゃないし、いつもスマートで完璧じゃないですか」
「そうでもないよ。プライベートでは全然ダメ。特に恋愛に関しては」
思い返してみると、入社以来部下としてずっと一緒にいるのに部長のプライベートについてはあまり知らない。
独身でひとり暮らしをしていて仕事ひとすじ、あとは……酒豪で和食が好き。そのあたりは知っていても、恋愛事情については聞いたことがない。今は恋人はいないみたいだけれど。
「こんな私でも五年前には恋人がいたのよ」
部長はずいぶんと控えめな言い方をしたが、大人っぽくて素敵な部長を好きになる男性はたくさんいると思う。だから過去に恋人がいたと聞いてもまったく驚かなかった。
「なんであんな人を好きになったのか自分でも不思議なくらいダメな男だった」
「そうなんですか?」
「付き合ってからは私の家によく遊びに来てたんだけど、そのうちお金を貸してほしいって言うようになってね……。最初は一万円、それが三万円になり、五万円に増えていった」
初めて聞く部長の恋愛話なのに、なんだかこの時点で嫌な予感しかしてこない。私は下唇をギュッと噛みながら真剣に耳を傾けた。
コメント
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寺島あおいです🤍 第29話、拝読しました。仕事の山を越えて、伊地知部長と和食ダイニングで交わされる静かな夜の時間がとても沁みましたね。特に、あんなにスマートで完璧に見える部長が「恋愛に関してはダメ」と自嘲しながら過去を語り始めるシーン、香椎さんと同じように思わず息を飲みました。「なんであんな人を好きになったのか自分でも不思議」という言葉の奥にある、長年抱えてきた傷のようなものを感じて胸が締め付けられました。お二人の距離が、今夜また少し近づいたような気がして、続きが気になります。若葉さん、繊細な人間関係の機微をありがとうございます🍀