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第10話(最終話):命を繋ぐ数式
ツリーハウス学舎の広間。
中央にそびえ立つのは、学舎の中枢となる**“大碧杭”**。
その周りには、碧素の網目模様が煌めき、学び舎全体を支えているかのように見えた。
「これが、俺たちの“証”になるのか」
ゲンがゆっくりと、大碧杭を見上げながら呟いた。
手のひらで、フラクタルリングを滑らせる。
「やっぱり“自分の命”を込めたコードは、今までとは違うな」
隣でタカハシが静かに頷く。
普段はクールで理論的な彼が、今日は少し感慨深げに視線を落とした。
「結局、最後に“意味”があったのは、“誰かのために”だったんだな」
二人は並んで、大碧杭の前に立った。
「今日、私たちの“命のコード”がこの杭に刻まれる。
フラクタル学の本質は“命の流れ”を読むこと。そして、あなたたちのコードはその命の一部として永遠に残ります」
スエハラ先生の言葉が、広間に響く。
生徒たちも、固唾を呑んでその様子を見守っている。
「さあ、ゲン、タカハシ。最終コードを杭に打ち込んで」
ゲンは一度深呼吸し、フラクタルリングにコードを入力する。
《LIFE = TRUE》《ECHO = “未来”》《SHIELD = “仲間”》《TRIGGER = “絆”》《PULSE = “鼓動”》
光が杭に走り、ひと筋の青白い光が周囲を包んだ。
「これが“俺の願い”だ」
タカハシも次に進み、手を広げてフラクタルリングを構える。
《BARRIER = “守るべきもの”》《EMOTION = “共鳴”》《LIFE_USE = 0.1》《SYNC = “全ての命”》
彼のコードが杭に触れると、碧素がさらに強く反応し、まるで**“命の絆”**が全てを繋げるような感覚が広がった。
「俺たちの“コード”が繋がるとき、未来が開けるんだな」
コードが杭に刻まれると、学舎全体が一瞬で静まり返り、碧素の流れが穏やかに調整された。
「これで、また新しい命の連鎖が始まる」
ゲンがゆっくりと振り返り、タカハシと視線を合わせる。
「次は、俺たちの番だ」
学び舎の門が開く。その先には、未知の世界が広がっている。
タカハシが少し肩をすくめ、いつもの真面目な顔で言った。
「フラクタルの世界は、まだ広い。それでも、俺たちならきっと――」
「やれるだろうな」と、ゲンが微笑む。
「未来のフラクタルは、俺たちの手の中にある。みんなの“想い”がコードとして繋がっている限り」
彼らは振り返らず、前を見据えて歩き出した。
次の舞台が待っている。その先に、もっと多くの命と出会い、また新しい“刻の碧律”を刻むために。