テラーノベル
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一日目は、竜馬は一睡も出来なかった、なぜならカルロスに与えられたベッドが、ダニの巣窟になっていたからだ、その夜、不覚にも竜馬は、白のタンクトップと、半ズボンで寝てしまった
2時間もしないうちに、全身ダニに噛まれ、背中と足や首がたちまちダニの噛み跡だらけになって、真っ赤になった
「カルロス!!ベッドのシーツにダニがいるよ!シーツを変えてよ!」
竜馬は朝一番にリビングで寝ているカルロスに抗議した、リビングのテーブルには、酒の空き瓶がズラリと並び、酒臭く、空気はよどんでいた、きっとカルロスは夜通し酒を飲み、ベッドには行かず、リビングで寝起きしているのだろう
カルロスには朝起きて仕事に行くという概念はなく、ホールストリートに何軒もある、親から引き継いだ、トレーラーハウスの月貸し賃料で利益をもたらしているため、一日の大部分の時間を、酒を飲んで、CBSテレビで金髪美女の水着姿を眺めて、過ごしていた
一度トレーラーハウスの住人が、カルロスに下水管が詰まっているから修繕してくれと頼みに来ても「まかせておけ」と約束はするが、実行している所は、見たことが無かった
竜馬は早い時期に、カルロスには何も期待しないことに決着をつけ、何でも出来ることは自分でやるようになっていた、まず、カビだらけのベットマットは、倉庫に持って行き、自分で木材を集めてきて、即席のベッドを組み立てて、その上にシーツを洗って敷いた、ダニ問題は解決したが、硬い床に寝ているようなものなので、体のあちこちが痛んだ
しかし、次から次へと問題は起き、その度に竜馬は解決してくれるようにカルロスに言うが、当の本人は竜馬の抗議を「神経質な東洋人の戯言」とみなして、のらりくらりとかわし、聞き入れることはなかった
「国が違えば生活も違うもんさ、慣れてもらわなきゃ困る!」
これがカルロスの口癖だった「ほら飯だ」そう言ってカルロスからキッチンテーブルに置かれた皿には、竜馬の顔よりも大きなハーフサイズのピザが乗っていた
「いただきます・・・」
竜馬が手を合わせてピザを食べようとすると、カルロスに止められた
「部屋に持って行って食えよ!キッチンが汚れるだろ!」
ブツブツ言うカルロスをキッチンに置き去りにして、竜馬はピザを持って自室に引きこもった、野菜は玉ねぎがほんの気持ち程度で、油がべっとりと浮いたピザを口に頬張る・・・塩味がきつく、ほぼ油としか感じなかった
「不味い・・・」
とても人間の食べ物という気はしなかった、小麦粉が胃に溜まった感覚だけがした、竜馬は白米が恋しくてたまらなかった、しかし、まだこの頃の竜馬は、少なくとも良い子にして、ホストファミリーのカルロスと仲良くしようと言う気持ちが残っていた為、なるべく自分が我慢して事が収まるなら、そうしようと健気に務めた
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そして数日後・・・
「カルロス、夜ご飯は?」
8時になっても食事に呼んでもらえず、お腹をすかせて二階から降りて来た竜馬に、カルロスが言った
「朝食ったじゃないか」
「朝はたしかに食べたけど、夜は?」
「あのピザは朝夕兼用のメシだったんだよ!朝のうちに全部食っちまったお前が悪い!!」
「そんなこと聞いてないよ!!あれは朝ごはんだと思ったから全部食べちゃったよ、おなかが空いたよ!」
「だったら明日の朝まで我慢することだな!」
カルロスはさらりとかわした
「まったくもう!!」
竜馬はあきれた、カルロスとしゃべっていると、いつも二つの問題が同時に進行しているような気分にさせられる、きっとこちらの言う事の半分も聞いていないに違いない
竜馬は酔っ払ってソファーに寝転び、テレビのチャンネルをカチャカチャリモコンで変えるカルロスを一瞥して、もう何も言う事はないと部屋に戻った
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次の日、竜馬は自分のボストンバッグの中から一足のハイカットのスニーカーを取り出し、その中に輪ゴムで丸めている、紙幣の束を取り出した
もしもの時や、緊急時に使いなさいと、一郎から1000ドル(※日本円でその頃のおよそ10万円)現金で渡されていたものだ、竜馬はこの家にやってきた頃に、いち早く、自分が学校へ行っている間に、カルロスに自分のものを、特に現金を盗まれやしないかと疑っていた
もし盗まれていても、きっとカルロスの事だ、のらりくらりととぼけるだろう、盗まれてからでは遅いので、盗まれないように現金をはじめ、上手く大切なものを隠せるように、竜馬は知恵を働かせないといけなかった
一郎から貰った紙幣のうち、その中から20ドルをポケットに入れて、カルロスの家を飛び出した
納屋に置き去りにされていたマウンテンバイクに乗り、(※当時はチェーンが外れていたが竜馬が修理した)そして、ここから自転車で20分ほどの、イリノイ州の中の小さな街、ホールストリートに向かった
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その街は、竜馬の通うキャンパスと、家の真ん中にあった太陽は傾きかけ・・・平行の地平線に半分沈んでいた
赤い夕陽の中、マウンテンバイクに乗った竜馬の影が黒い点になって草原に黒豆のように映っていた・・・ホールストリートの真ん中に、50年代の赤レンガの建物の前にマウンテンバイクを止めた「セントマイルズリサイクルショップ」と書かれた色あせた看板がかかっている
竜馬は、隙間風がビュービュー入る、そのコンビニぐらいの広さの店に入って行った、入り口近くにある、旧式のレジの横に、白髪まじりの男性の頭が前後に船を漕いでいる、居眠りをしているように見える
埃のかぶった種々雑多のガラクタや、陶器、電化製品、靴、皿、家具が置かれた台の合間を縫って、竜馬は奥へ進んで行く
古着の棚の傍を横切ると、かすかにカビと古い靴の匂いがした、そして・・・
竜馬の目当てのモノがある棚にたどり着いた、その棚には「多国籍食品」とプレートが張られていた、学校で仲良くなったクラスメイトに聞いたとおりだった
なぜリサイクルショップに、日本食品が置いてあるのか謎だが、竜馬は久しぶりに出会えた、日本語で書かれた食品を見て喜んだ
コメント
1件
うわあ、カルロス、ひどすぎる……! ダニだらけのベッドで一睡もできず、翌朝には「朝飯兼用」と言われて食事をスキップされるなんて、読んでてこっちがお腹すいてしまいました。それでも悪意を真正面からぶつけず、自分でベッドを作り替えたり、現金を隠して備えたりする竜馬のしたたかさと健気さに胸がぎゅっとなります。そしてリサイクルショップで日本食品を見つけたときの安堵——異国の地で「日本語」に触れただけでこんなに救われるんだなあとしみじみ。この先、竜馬がどう暮らしを立てていくのか、恋愛要素がどう絡んでくるのか、続きがすごく気になります!