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#現代ファンタジー
裏五条
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「ライト!」
初撃を結界でしのぐと、漆黒の獣はそのまま二撃目の前足を振り上げる。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
魔物の攻撃が当たる度、結界に衝撃が走る。
「リサちゃん、ウォータは何て!?」
「あれはもう魔物だって」
アリスが剣を抜いて構える。さっきまで、彼は獣人だったのにアリスは躊躇しないの?
でも、躊躇っていたら私達が……なのかな。
「ウォータ、ねぇ何か無いの?!」
「あれは闇の魔物だ。光の浄化魔法があるだろう?」
「でも、浄化しちゃったら彼はどうなるの?」
「生まれ変わるだけだ、精霊に」
それは、どういうことになるの?
私が彼を死なせるということ? だって、彼はさっきまで人だったんだよ? 精霊じゃない。人だったんだよ?
「リサちゃん、ボク達が引き付けるから、その間に――」
「リサ様の浄化魔法で彼はもとにもどるのですよね?」
まって、まって。わからない。どうなってしまうの?
ふるふると急いで私は頭を振り、彼らに待ってもらう。
ウォータは容赦なく言葉を続ける。
「魔物になった瞬間、あの狐獣人の生は終わっている」
そんな――――。
「アイツは願っていたぞ。生まれ変わりたいと」
それは、でも――。きっと、あの石の下に眠る人達と同じ場所にという意味で――。
「ならば、問題ないだろう」
え……? 何故問題ないと、言えるのだろうか。
「生き物はすべて死後、一度は精霊を経て生まれ変わる。精霊達も住んでいる場所が少し違うだけで、この世界の住人だ。そこから生まれ変わるか精霊にそのままなるかは時の運だがな――」
それって、輪廻転生? この世界の精霊って、魂?!
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
悲痛な叫びととともに何度も何度も、結界に前足を叩きつける漆黒の獣の目には涙が滲んでいる。
「このまま、魔物の姿でいても、精霊の世界にも人の世界にも生まれ変わることはない。浄化してやるのがいいと思うが――」
「私、私は――」
すっと、右手を持ち上げられアリスの手と繋がった。
「ボクも一緒に願うよ。リサちゃん一人に背負わせないよ」
「アリスちゃん……」
「私が、木の魔法で足止めします」
「ルードさん……」
私の迷いを、二人は感じ取ってしまったのかもしれない。
このまま、魔物で居続けると、彼は家族にずっと会えない。それならば――。
「次に振り上げたら結界をときます。ルードさん、お願いします」
「わかりました」
「うちの事は名前で呼んでくれてええでー」
エントの声がする。どうやらルードも指輪が馴染んだようだ。
「ルードさん、エントで呼んでもいいそうです」
「――はい!」
ぎゅっと、アリスの手を握った時、漆黒の獣が前足を振り上げた。
私は宣言通りに結界をとく。
「エント!」
ルードの叫び声とともに、大きな枝が現れて獣を捕らえた。
アリスと目を合わせて、ぎゅっと心を固める。彼を家族のところへ連れていってあげたい。
あの獣を浄化して!
「ウィル・オー・ウィスプ!」
二つの光が漆黒の獣に向かって飛び、その体を眩しい輝きで包み込んだ。
コメント
1件
「躊躇する」、すごく胸にきた……。リサの「私が彼を死なせるの?」って迷い、すごくわかる。だってさっきまで人だった相手を魔物として消すって、簡単に割り切れないよね。でもアリスが「一緒に願うよ」「一人に背負わせないよ」って手を握ってくれた場面、泣きそうになった。輪廻の世界観も切なくて、彼が家族のもとに帰れるようにって願いながら光を放ったラスト、静かな美しさがあった🥀 言葉の温度が心に残るお話をありがとう🌙